洞窟寺院
●かみさんから、「大船の観音様の向こうに、洞窟があるらしい」という、何やらえらくざっくりした話を聞く。
防空壕の跡でもあるのかと思ったのだが、ネットで調べてみるとそうではなく、お寺にある洞窟で、しかも結構有名な存在であるらしい。
ちょうど仕事が途切れて暇なので(←営業しろよ!)、11日木曜日、その通称「田谷の洞窟」を見物に行く。
なお、湘南方面の方にはまったく見慣れた風景だろうが、冒頭の「大船の観音様」というのは右写真。JR大船駅のすぐ脇の山の上に、巨大な観音のバストアップが鎮座している。子供が小さい頃には、
「実はあの観音様は山の中に下半身が埋まっていて、一年に一度山が開いて、鎌倉の大仏と対決しに行くんだ」
とかいういい加減な話を考えたこともあるが、当然ながらまったく信用されなかった。
なお、比較的ご近所に20年以上暮らしているにも関わらず、私はまだ山に登って間近に見たことがない。
●「大船の観音様の向こう」といっても、その山の裏側とかではなく、大船駅西口からバスに乗る。大船駅は鎌倉市と横浜市の境にあるが、目的地は横浜市側。
目指す洞窟は定泉寺という真言宗の寺の境内にある。ほぼ寺の真ん前に「洞窟前」というバス停があり、しかも「田谷の洞窟」と大書された看板まで立っていて判りやすい。
洞窟の正式名称は田谷山瑜伽洞(ゆがどう)。なんとwikipediaにも出ていた。真言密教の修行場として人工的に掘られたもので、戦国時代に建てられた定泉寺よりむしろ古く、鎌倉時代初期にまで遡るという。
拝観料400円を払い、ろうそくを貰って洞窟に入る。残念ながら洞内は撮影禁止。
そんな、ろうそく一本持って洞窟に入って、途中で消えたらどうすんのよ!?……と思ったが、実際には洞内は点々と照明が下がっていて、ろうそくは気分演出アイテム的な感じ。歩く風圧で3,4回消えたので、本当にこれしか照明がなかったらヤバイところだった(洞内に何カ所か立っていたろうそくで再点火した)。
写真のように入口は小ぢんまりと素っ気ないが、江戸時代まで拡張が重ねられた洞内は想像以上に深い。現存部分で500m以上、すでに崩れた部分も合わせると総延長は1kmを超えるそうな。順路をゆっくり歩いて、出てくるまでに30分ほど掛かった(ちなみに洞内は息がなんとなく白くなる程度に冷やりとして、しかも平日とあって私一人しかいなかった)。
通路は、広いところは十分に立って歩けるが、ところによっては天井が低く、かがんで進む必要がある。所々に小部屋があり、壁面や天井に仏像や霊獣その他のレリーフがある。坂東三十三観音霊場、四国八十八霊場ほか、全国百八十八霊場が勧進されてそのご本尊が並んでおり、この洞窟をめぐると百八十八カ所を巡礼したことになるらしい。なんてお手軽な!……はっ、まさか逗子の巡礼古道の「奉納百八十八番」石碑は、ここで巡礼を済ませてないだろうな!?
そういえば、「横浜市内に現存する磨崖仏は、鼻缺地藏と白山道奥磨崖仏の2つしかない」と聞いたが、この石窟内のレリーフは「磨崖仏」に勘定されないんだろうか? 文字通り崖にないとダメ?
鎌倉近辺のめぼしい寺社は行き尽したような気になっていたのだが、まだこんな見応えのある場所が残っていたとは思わなかった。寺マニアも洞窟マニアも見に行って吉なり。
●帰り、大船駅の東口側に渡ってBOOKOFFに寄り(何も買わず)、そのまま北鎌倉駅まで歩く。
「タケシくんもやっぱり『どうでしょう』のペースつかんでいかないと。
いいですか。四六時中面白いわけじゃないんですよ『どうでしょう』は。
……
あせっちゃダメだよタケシくん。
どうしてもね、あせって面に寄っちゃったりするでしょ?
ダメダメ。そうそう出ないんだから。
釣りと一緒だよ。何回もバラすんだから。
でもね、どっかで『クッ』と掛かるから。」
ちなみに「つるおかはちまんぐう」じゃないですよ、「つるがおかはちまんぐう」ですよ藤村D。
(このサイトによれば、昔のこのあたりの大地主の名前だそうだ)
ちなみに北鎌倉駅下りホーム沿いの道の素掘りの洞門(通称:緑の洞門)を「崩す/崩すな」の問題はまだ決着しておらず、ロックアウトされたままになっている。釈迦堂切通もそうだが、素掘りの外観のまま固めて補強するといったような技術ってないんですかね?
●このところの散歩途中の花や虫など。
近所のウツギ。咲き揃ってしばくすると、例年通りにウツギヒメハナバチが来始めた。小さな体を黄色く花粉まみれにする働き者。といっても、年間、この半月くらいしか働かんしな。コマルハナバチ以上の短期限定季節労働者。なお、今年は去年までよりマルハナバチを見かけることが少ない気がする……。実際に数を減らしていたりしないか、ちょっと心配。
大切岸、モミジイチゴやナワシロイチゴと一緒に藪を作っている、同じくバラ科っぽい小灌木がちまちました花を付けていた。調べてみると、コゴメウツギというらしい。(上の)本家ウツギはアジサイ科、こちらは枝葉の印象通りバラ科で、「小さな白い花がまとまって咲く」以上の共通点はないようだ。よく見ると花びらが大小交互になったような花の形が面白い。
ホウチャクソウはほぼ終わりだが、山道のあちこちでタツナミソウが咲いている。確かに名前通り、北斎の神奈川沖の波頭のような。ご近所ではこれの白い園芸種もよく見かける。
1枚目はちょっと前に新宿の路地の生垣で見つけた、やたら肩の角が立派なカメムシ。その立派な角と背中の白紋2つでウシカメムシと判断。闘牛の風格。2枚目は大切岸で撮ったツヤツヤメタリックなハムシ。割とたくさんいる。おそらくバラルリツツハムシ。3枚目はハイランドの端のツツジの生垣に何匹も飛来していたジャコウアゲハ。
世話もしていないのに毎年よく咲く玄関先のラベンダーにやってくるミツバチ(おそらくニホンミツバチ)。
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コメント
大船観音の洞窟と聞いて、胎内巡りとか大正昭和の時代に掘られた怪しい観光洞窟かと一瞬思いましたが、ずいぶんと古い時代のものなんですね。
時々、地方のお寺とかに謎めいた洞窟があってドキッとすることがありますが、あれは洞窟信仰とかが先にあって後にお寺ができたパターンなんでしょうね。
神社でも境内から神社以前の遺跡がでてきたりするのも同じような話で。
投稿: hn | 2017年5月13日 (土) 10時53分
>hnさん
いやあ、私も、日本に(しかも比較的近所に)こんな地下寺院があるとは思いませんでした。
一応、鎌倉鎌倉周辺の古刹ということになるのだと思うのですが、行政区分が鎌倉市から外れているので、鎌倉の観光案内的な本やサイトにはほとんど出ていないんですよね。
ちなみに大船観音それ自体に関して言えば、一度は見に行くべきかという思いと、「行ったら負け」みたいな気持ちとの間でずっと揺れ動いています(なんだそりゃ)。
一応胎内に入れるそうですが、「大船観音寺」サイトで見てみたら、普通に単なる「建物の中」的な感じでした。
投稿: かば◎ | 2017年5月13日 (土) 17時40分