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バレンタインの日(2)

●タミヤのバレンタインMkII/IVに関する、あるいはバレンタインそのものに関するアレコレ。前回の若干の補足というか続きというか。

●タミヤのバレンタインの転輪、もうちょっと“ふっくら”していてほしいよー問題に関して若干の試行。

20170413_000045 0.3mmプラバンをゴムリム内径で丸く切り抜き、内側をサンドペーパーで緩やかに薄くしてキットのゴムリム部に接着。さらに外径部分もヤスって丸めてみた(あくまで試行ということで、誘導輪の、おそらく使わないであろうタイプを実験台にしている)。ちなみに裏側は面倒くさいのでキットのままで角だけ丸めている。

うーん、履帯に接する面自体にも、もうちょっと丸みが欲しいなかあ……。

もっとも、これを全転輪でやる気になれるかどうかが、まず問題。

●誘導輪基部のリブについて。

下は1942年、ジブラルタル防衛に配備されたバレンタインで、誘導輪基部はリブ付き。写真はインペリアル・ウォー・ミュージアム(Imperial War Museum/IWM)より。車体番号「T27632」は、NEW VANGUARD 233「VALENTINE INFANTRY TANK 1938-45」に従えば、メトロポリタン・キャンメル社製で1941年5~11月間に引き渡されたMk.IIの1輌。

前回書いたように、リブ無しは比較的初期の形質と考えられるのだが、どうやらリブの有無でMk.IIとMk.IVは分けられなさそうだ。

車輌番号と対応できる例が他に探し当てられなかったので、ヴィッカース社製、メトロポリタン・キャンメル社製、バーミンガム・レイルウェイ・キャリッジ&ワゴン社(BRCWC)製での導入時期の差などはよく判らない。

Iwm34

●もうひとつややこしい問題。Mk.I/II/IVの防盾には2種類の形があるそうだ。Britmodeller.comのこのトピックに詳しい。

簡単に言うと、同軸機銃の部分が防盾カバー部より窪んでいるか(キットのパーツの形状)、出っ張っているか(上写真、または下のカナディアン・ウォー・ミュージアムの実車写真参照)の違いで、窪んでいる方がより初期の仕様であるらしい。また、窪んでいる方のタイプの場合、2ポンド砲は付け根部分に明瞭な段がなくスムーズに繋がっているタイプ、出っ張っている方では明瞭な段差があるタイプが一般的であるらしい。

ただし、比較的有名な、ソ連に向けてのバレンタイン送り出しセレモニーの際の写真で、窪みタイプの防盾で段付き砲身のMk.IIも確認できる(リンクページの最初の写真、BRCWC製のMk.II、BRCWCのスメジック(Smethwick)の工場における撮影、1941年9月28日)。したがって、マーキングとの整合性はさておき、キットの状態が仕様として間違いであるとは言えない。

20170413_142442 私はより一般的なタイプとしたかったので、防盾にプラ材を貼り付けて削り中。「プラ材」というとそれなりのものを使っていそうに聞こえるが、何のことはない、単にキットのランナータグ。

なお、どうもキットの防盾は前後方向にと寸詰まり傾向にあるようで、砲身基部の高さに合わせると、機銃部バルジの高さはちょっと足りない感じがする。

●ついでに。インペリアル・ウォー・ミュージアムの写真で「あれ?」と思ったのが以下の写真。

Iwmh30178

キャプションには次のようにある。

Troops attack a 'German' tank (in reality a Valentine) with 'sticky bombs' during training at No. 3 GHQ Home Guard School at Onibury near Craven Arms in Shropshire, 20 May 1943.

要するに、バレンタインがドイツ戦車に扮して国内で対戦車訓練中の写真なのだが、よく見ると、スプロケットが複列になっていて、非常に珍しい履帯を履いている。

wikipediaのバレンタインの項を見ると、カナダ製のMk.VIIAで新型履帯が使われたとあるが、この写真の車輌番号、「T15963」は、NEW VANGUARD 233によればMk.Iのもの。またMk.VIIAに使われた新型履帯というのは、これもNEW VANGUARD 233の記述によれば「ice-studs on tracks」とのことなので、カナディアン・ウォー・ミュージアムに展示されている車輌が履いている、1リンク置きに接地リブにトゲの生えているヤツのことだろうと思われる(下写真はwikimedia commonsより)。

Canadian_war_museum_vimy_pl_ottawa_

というわけで、上のMk.Iが履いているのは、テストされたものの採用されずに終わった新型履帯、という感じのものか?

ちなみに車体前部が鋳造になったカナダ生産型はMiniartからもキットが出ていないようなので(Mk.Iとほとんど同じMk.VIは出ている)、ちょっと惹かれなくもない(ほとんどがソ連に行っている、という点でも)。もっとも、砲塔前後面も一体鋳造というのが面倒かな……。

●追記。wikimedia commonsに、もう一枚、上記の「変な履帯」を履いた車輌の写真があった(これももともとはIWMの写真らしい)。むう。1輌だけじゃなかったのか。後からそれなりの数が交換装備されたものか? グランパあたりに「この履帯は……」って出てるかな?

Valentine_mk_i

「T16357」は(NEW VANGUARD 233によれば)メトロポリタン・キャンメル社製の生産第一ロット。T16221に始まる125輌のうちMk.Iが44輌、Mk.IIが81輌だったらしいから、番号順になっていればMk.IIということになる。ただし、エンジンルーム後部ハッチは左側だけだったりと、初期生産車の特徴を残している。(以下、2018/08/16訂正)BRCWC製、1939年6月29日に始まる生産第一ロット(Mk.I:67輌、Mk.II:133輌)。同ロットは「T16356」から始まるので、番号通りに生産されているなら同社製Mk.Iの生産第二号車ということになる。

起動輪との噛み合い方、外側形状はクルセーダーの履帯にそっくりだが、ガイドホーンが複列なので当然別物。

ちなみに、上で紹介したBritmodeller.comのトピックでもこの写真は紹介されていて、そこに載っている写真はnarrow tracks云々というキャプション付き。すでにこのタイプを取り上げている資料本もあるようだ。

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コメント

つらつらと眺めていたら、考証主義的に作りこむならAFVクラブのをベースにしたほうが近道なような気がして、AFVクラブのバレンタインMk.Ⅳを買ってしまいました。
このレンドリース仕様のキットに入っている中期型の転輪や誘導輪。タミヤとかに比べると実物にいちばん似てるように思います。

まあ..AFVクラブのはいつか買おうとは思ってたので、それでMk.Ⅳを作って、タミヤのは車体前部が鋳造のカナダ製Mk.ⅦAにでも改造しようかしら..

で、比較。以下数字にて失礼します。
転輪大(T:外径17.0・リム径14.8/A:17.3・14.7)
転輪小(T:外径13.5・リム径11.4/A:13.8・11.3)
転輪厚(T:ゴム
3.8・リム4.0/A:4.1・4.0)
※Tはタミヤ、AはAFVクラブ

計測は100円ショップのノギスなので数値の信頼性はその程度ですが、なんとなくこの0.3(一片0.15ミリ)の差がふっくら感のあるなしの違いなのでしょう。

タミヤの転輪の修正方法ですが、0.16ミリのプラペーパーを貼って削り込みむのは、途中でプラペーパーがヤスリに負けそうなと、転輪の個数を考えると再現性のある工法かつ1個5分程度の加工に納めたかったので、何も貼らずにそのままナイフで削り込み。リムとゴムの継ぎ目にナイフを当てて。リムも見えがかりが厚ぼったいので、テーパーつけて溝を作るように加工。その状態でランナーについてたらスルーするできるくらいにはなりました。

防盾も比べてみました。鼻先までの長さは木型の違いなのか、実車でもまちまち(クビンカの車両とかは鼻先長めで、ボービントンとかオタワのはそうでもない)なので、上部の(駐退機用?)ボルトで比べてみました。

防盾張出高(T:12.3/A:14.0)

もっとも防盾基部の解釈が両者すこし違うので、どっちが正しいとは断言できません。
正面から見た鼻先の断面が楕円形なのに丸くしか再現してない情報圧縮ぶりは「またタミヤか!」って感じではありますが。

クビンカのMk.Ⅳを観察して気がついたのですが、砲塔周りにスプラッシュガード、車体前面と操縦手クラッペ周りに増加装甲があるんですね。やっつけ仕事的な溶接とか現地改造?

投稿: hn | 2017年4月16日 (日) 18時15分

>hnさん

転輪サイズに関しては、タミヤは、Miniartほどではないにしろ、やや小さめということですね。
さて、ゴムリムの形状も含め、私はどうしよう……。

クビンカのMk.IVに関しては前回の資料リストのところでもちょっと書きましたが、あの仕様はなかなか面白いですね。

投稿: かば◎ | 2017年4月17日 (月) 22時55分

>クビンカのMk.IVに関しては前回の資料リストの...

あぁ.. 読み落としてました。私の読解力のなさがバレバレです(汗)

増加装甲タイプ。探してみると、いくつか写真が見つかるのでそれなりに作られたタイプのようですね。クビンカの車両のT34みたいなライトとか全鋼製のフェンダーが当時のものかレストアによるものなのか知りたいところです。

いずれにせよ、気になることとか気のついたことを書き留めておくことは大事だなと感じ、自分もメモ代わりのブログを作ることにしました(ミカンセーキ:http://hnnh3.exblog.jp/
タミヤとAFVクラブの転輪の比較と修正案の写真、載せておきましたのでよかったら見てみてください。

投稿: hn | 2017年4月19日 (水) 23時03分

>hnさん

>>あぁ.. 読み落としてました。

web上の写真資料へのリンクは、最初に記事をアップしてから1日ほどして付け加えたので、hnさんがお読みになった時にはまだなかったかも……(^^;

hnさんのブログへのリンク、なぜか直後の「)」までurlの一部と認識されてしまっていたので、ちょっとコメントを編集させていただきました。

それにしても、そちらのブログでも書かせていただいていますが、調べるほどまたいろいろ新しい謎が出てきますね。

投稿: かば◎ | 2017年4月22日 (土) 17時14分

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