スターリングラード・トラクター工場(17)
●週末模型親父さんのところのAFV模型のネットコンペ、「SUMICON 2016」の参加作、cyber-hobbyの「T-34/76 STZ Mod.1942」の製作記。
今回は小ネタ。
●グローサーに関するあれこれ。
これまでにも何度か触れているように、T-34はフェンダー上に数カ所のグローサー(防滑具)搭載箇所がある。一般に、ピロシキ砲塔型(1940年型~1941年戦時簡易型)の場合は、右フェンダーに3カ所、左フェンダーに2カ所ある。
STZ1942のキットには、単純に鋼板を折り曲げて作ったような形状のグローサーのパーツが12枚分付属している。
形状としては右写真と同じものだが、右写真は、クラスナエ・ソルモヴォ製初期型キットに付属していた、マジックトラックではない初期型550mm履帯のパーツ枝にセットされているもの。STZ1942にセットされているのはグローサーだけが別になった新規パーツ枝で、表面に押し出しピン跡がないなど、ちょっと出来が向上している(クラスナエ・ソルモヴォ初期型のキットにも、その新規パーツの方も入っている)。
ただし、このグローサーは基本的に初期型550mm履帯に使われているもので、後期型550mm履帯を履いているSTZ1942では、これを載せている例は見たことがない。
(8月3日追記。ただし、後期550mm履帯の初期タイプに合わせて、片側のみ内側にもう一つ穴を追加した、このタイプのグローサーの写真が、Wydawnictwo MilitariaのT-34 vol.IIIに出ている。つまり、上に「これを載せている例は見たことがない」と書いたが、載せている可能性はあることになる)
一方、後に登場する後期型500mm履帯には、右写真のようなグローサーが使われている。このパーツは、ドラゴンのT-34-85やSUのキットに付属しているもの。
パーツの出来はいささかもっさりしているが、初期550mm履帯用に比べて履板に接する部分が広く、裏にはワッフルパターンに噛みあってガタツキをなくす突起がある。防滑用のツメは数が一本少ないが、補強用のリブがある。
●さて、後期550mm履帯は後期500mm履帯のご先祖様だけあって、グローサーも、後期500mmと似たタイプのものが使われている。
後期500mm用と比較してまず目につく特徴は、履帯への固定用ボルト穴が2連のダルマ穴になっていること。これは、後期550mm履帯のグローサー固定用ボルト穴が、当初は内側寄りにあったのが外側に移された処置に伴うもの。したがって、グローサーも生産当初は内側寄りの穴だけだった可能性がある。
そんなわけで、最初は500mm用のキットパーツに追加で穴を開けりゃいいかあ、などと思っていたのだが、よくよく見ると、どうも後期550mm用は、ツメ内側の補強リブもないようだ。パーツの厚やツメの形状もちょっと気になるし――ということで、上記の2種のパーツを組み合わせて作ることにした。
(1).後期500mm用はツメを切り落とし、(裏の突起を活かして)表側からヤスって若干薄くする。
(2).元の固定用ボルト穴に接するように、内側に新たにボルト穴を開ける。
(3).初期550mm用はツメの部分だけ切り離し、ツメの数を1つ減らす。こちらも若干薄くする。ツメの両端は垂直。
(4).両方を合体させ、継ぎ目を消す。
もちろん、実車では「グローサーなんて全部どっかに行っちゃったぜヒャッホー」みたいな状態のものも多いので、こんなものは潔く省略してしまうのも手なのだが、「このタイプならではの装備品」と思うと、やはりちょっと載せたくなる。
もっとも載せるとなると1,2枚というわけにはいかず、それなりの数は必要となる。「うひー、面倒」(←自業自得)などと思いつつ、結局10枚工作した。一番面倒だったのがボルト穴で、それなりにアタリを付けて開けているはずなのにズレまくり。
10枚のうち、それなりに納得できる状態に仕上がったのは4枚だけだった(右写真の左側)。もっとも、最終的には載せた時に一番上に来るものだけマトモであればよいので、これでOK。
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コメント
かば◎ さん
グローサーのボルト穴 4/10 なら良しとすべきかもしれません。
私はあるトラクターのリアの牽引フックを自作しようとしてフックのヒンジを4個作って3個ダメにしました。なので稼働ヒンジを諦めて形だけのものにしました。
工作しているとばかばかしいと思えるものでも納得ができず、手を入れてしまいますが思いと実際は異なりうまくできない(技量不足)のですが、まったく無駄ではなくいつしか工作の工夫として活用できるようになったりするから不思議です。
投稿: | 2016年7月24日 (日) 23時25分
ありがとうございます。
お名前が空欄ですが、hiranumaさんですよね。
済みません、このブログ、お名前入力のcookieが働いたり働かなかったりなので。
ボルト穴位置、きちんとした治具を作ればもっと綺麗に開けられたのかもしれませんが、「どうせ表側の数枚以外は隠れちゃうんだし」と思って、ついつい横着しました。
無駄にされたという3つのヒンジ、おそらく私が扱っているものよりもずっと微小な構造のものなのではという気がします。
投稿: かば◎ | 2016年7月25日 (月) 22時34分
かば◎ さん
たぶんコメントする際に名前を入れ忘れていたのでしょう、失礼いたしました。
ヒンジは微細ではないのですがタミヤの2mmプラ棒を凹凸状に削って凹側の両サイドも平らにしたもの:0.5mmを0.5mmで挟んだ位のものに1.0mmドリルで穴を開けると縁が割れてしまうのです。プラ棒素材が硬質なためでしょう。エバグリーンのものかランナーを使えばできたかもしれません。稼働にする意味もないので開口するのはやめました。
このキットは素組にしようと思っていたのに始めてしまうと次々と加工するところが、、。 T34でこんなに工作箇所があるなんて思ってもいませんでした。タミヤのT34を買わずに良かったです。
投稿: hiranuma | 2016年7月26日 (火) 10時03分
横から失礼いたします。凸凹ヒンジは、ビールのカンとかをヒンジの幅に切った帯を折り曲げて作ります。折り曲げ部分に軸となる太さのステンレス線をはさみ、挟んだ部分を避けて、横から見て割りピンのような形になるようにラジオペンチとかで挟んでステンレス線が入ってない部分を押しつぶしつつ瞬間接着剤を流し込みます。固まったらステンレス線は引っこ抜きます(ステンレスは何接着なので抜きやすい)。そのご、リューターに円盤ヤスリをつけて凸凹のいらない部分を削ります。噛み合ったら回転軸の金属線を入れていらない尻尾の部分を切り取ればヒンジ出来上がりです。厚みが欲しい場合は上からプラ版とか貼ってごまかします。ドリルいらずで頑丈なヒンジになりますよ。
投稿: みやまえ | 2016年7月26日 (火) 20時23分
みやまえ さん
ご教示ありがとうございます。
言葉の意味するところが文字表現の理解力が低いのかピンと来ません。
ゆっくり咀嚼してみます。
投稿: hiranuma | 2016年7月26日 (火) 23時00分
hiranuma さん
確かに文章だけじゃわからないですね。申し訳ありません。
図解してみました。
やりたいことから外れてたらごめんなさいです。
http://www5a.biglobe.ne.jp/~t_miyama/hindge.jpg
投稿: みやまえ | 2016年7月27日 (水) 23時38分
横レスですけど
2枚貼り合わせて(元は1枚だけども!)
ヒンジを再現するのが目ウロコです。なるほど~
マネできるかどうかは、やってみないと判んないですが。
投稿: めがーぬ | 2016年7月28日 (木) 12時29分
>hiranumaさん、みやまえさん
2mmプラ棒を凹凸に削る……という時点で、すでにどういう形状なのか判らなくなってしまいましたが(^^;)、ヒンジの工作法としては、「穴を開けて軸を通す」式でしょうか。
hiranumaさんの細部工作技術でも歩留まりが上がらないというのが、形状のややこしさを物語っているような気がします。
みやまえさんのは軸を基準にヒンジを形成していく方法ですね。これも図解でようやく「あっ、こういうふうにするのか」と判りました。
軸を基準に蝶番を作るのはアベールのエッチングパーツなどにもよくありますが、あれはなかなかうまく作れる気がしません。
みやまえさんの方式は、軸に巻いてしまってから蝶番の基本形を削り出すわけで、これは確かに、めがーぬさんがおっしゃるように目からウロコでした。さすが可動職人。
投稿: かば◎ | 2016年7月28日 (木) 16時07分
みやまえ さん
絵を描いていただきありがとうございます。
これで分かりました。
な〜るほどです。
使えそうですね。
工作のレパートリーとして保存しておきます。
ヒンジといっても今回の私が作っていたのはヒンジというよりは、
継手のようなヒンジです。
トラクターの牽引フックがキットでは輪把だったので、これでは火砲やトレーラーを
繋いで牽引する際にぎごちなく、当然実写を調べると不鮮明ですが上下にスイングするようになっています。そこの上下可動のヒンジのことです。その先に取り付け具が付いていてピンを上から下へ差し込みその間に牽引する砲などの輪把を嵌めるのです。
輪把なので左右の動作は可動範囲があり、先のヒンジで上下可動するため牽引する際に都合がよいものになっています。よくあるタイプの牽引留め具だと思います。
みやまえさんのように絵を掲示する術を知らないので言葉だけで分かりにくくてすみません。
これが硬質プラ棒のため2mm径あるのですが削って凹と凸を作って凸の両サイドには輪留が付くのです。貫通させるためドリルを使うと凹が割れます。凸も同じかもしれません。上記の用途なので必ずしも実可動の必要はなく形として作ることとしたまでです。
ドアやハッチのヒンジを作るような繊細なものではなく簡単で素朴なものでです。
どうしても可動にしたければ違う方法(プラ材を変える)で作ることは可能なのでばかばかしいお話なのです。
取り付けの穴が2mmで棒状のものだったため2mmプラ棒を選択しただけです。
そのうちに完成写真をどこかで披露できると思いますので見て笑ってください。
かば◎さんのブログなのに余計な記述で申し訳ありません。
投稿: hiranuma | 2016年7月29日 (金) 19時06分
>hiranumaさん
いえいえ。コメント欄というのは、まさにそういう話をするためにある場所だと思っています。どうも有難うございます。
お話で、なんとなくイメージが掴めてきました。
確かに、牽引具の付け根が可動になっているもの、ありますよね。
タミヤのプラ棒(プラバンも)は、仰る通り硬めですね。
もうちょっと柔らかくてもいいのに、と思うこともありますが、それなりに強度の必要な部分にはこれくらいの硬さが合うので、要はプラストラクト/エバーグリーンあたりとの使い分け、という感じでしょうか。
もっともそれ以前に、タミヤのプラ材は「丸棒の断面がちゃんと丸くなく、角材の断面がちゃんと正方形でない」のがちょっと……。
投稿: かば◎ | 2016年7月29日 (金) 19時29分