スターリングラード・トラクター工場(9)
●週末模型親父さんのところのAFV模型のネットコンペ、「SUMICON 2016」の参加作、cyber-hobbyの「T-34/76 STZ Mod.1942」の製作記。
●車体工作の続き。今回は、ちょっと面倒臭くて手を付けるのをためらっていたサス関係。
以前に書いたように、キットの車体下部は専用のものがセットされており、
- 側面と底面が組接ぎ仕様。
- 通常型シャーシだとサスアーム取り付け穴前方にあるアーム抜け防止金具のモールドがない。
- 関連して、サスペンションアームが丸型断面の初期型のものになっている(これは初期のT-34では必須のものだが、たぶんSTZのキットにしか含まれていない)。
という特徴がある。車体下部それ自体の寸法は(車体上部と違って)破綻しておらず、車体上部にも組接ぎ表現を施したこととも合わせて、今回はキットの車体下部をそのまま使うことにしたのだが、ここで問題。
それは、STZ製のT-34は初期型の丸断面のサスアームを使っていたと思われる一方で、ある時点から(おそらくアゴ削ぎ砲塔導入よりも前から)サスアームの抜け防止金具も付いているという、ハイブリッドの仕様であったと思われること。
前述のように、これ以外のT-34系列のキットに入っているシャーシには抜け防止金具のモールドがあるのだが、これは、車体側とサスアーム側になんとなくそれらしい突起のモールドがあるだけで、それ同士がかみ合う状態にはなっていない(右写真)。
今回は(面倒くさいナー、と思いつつも)せっかく新しく作るので、噛み合う機構も一応は再現してみることにする。
というわけで、まずはサスアームの軸部分に金具をはさむ“ベロ”を作る。これは0.5mmプラバンの端にポンチで円弧の切り欠きを付け、これを適当に刻んで接着した後に整形した。なお、上写真のように、後期型角型アームのパーツでは、このベロは(塊状になっていると同時に)だいぶ外側に寄っているが、実際にはむしろ車体側にある(6/15訂正。よくよく実車ディテール写真を見直したら、位置はちょうど真ん中あたりだった。いやもう作り直さないけど)。また、この機構は第2~第4転輪のアームにしかついていない。
そんなこんなで工作をした経過と結果が右写真。表面の3つのボルトは、標準型キットの突起モールドから削り取って使った。STZ以外の初期型を作る場合には、この抜け防止機構はないはずなので、このモールドが不要なキットは、我が家には数個ある。
実のところ、形状も工作精度も割といい加減なものなのだが、別に「実車の生産工程で工員のイワン・イワノビッチ君(仮名)が大らかに作業してたんだよ!」という言い訳を持ち出すまでもなく、転輪を付けてしまうとほとんど見えない。
両側のサス4本ずつを工作終了した状態と、転輪を付けて見てどれくらい見えるかを検証してみたもの。ご覧のように、割とちゃんと見えるのが第3転輪用アームの基部で、あとは第2が「ちょっと見えるかな?」程度。……なかなか不毛だ。
なお、先日作業途中の写真をUPしたギアハウジング部は両方とも丸みを持った形に削り直し、溶接痕を工作し、一番底の部分に油抜きの穴?を再現。内側にグリス注入用?のボルトを1つ付けた。なお、実車はこのボルトの抜け落ち防止用にチェーンかワイヤを繋げるためなのか、隣にもう一つ小突起があるのだが、詳細不明で工作していない。
●ところでこのキット、丸断面のサスアームがパーツ化されていること自体は有り難いのだが、サスアームの軸が転輪側にも車体側にもきつくてうまくはまらない。
根本的に寸法がおかしくてそのままでは組めない車体上部と違って、やすりで穴を広げるとか、軸を少し削るとか、その程度の調整で済むので細かな問題ではあるのだが、いちいち手間が掛かる。
とりあえず問題点をまとめると、
▼サスアームが車体側の穴にうまくはまらない。これはサスアーム側の問題というより、車体側の穴が(標準型キットのパーツに比べて)狭い。
▼サスアームの転輪側の軸がきつい。これはどうやらサスアーム側が太め。転輪側の穴をヤスれば入るのだが、それだけでなく、転輪軸根元の2段太くなっている部分の外側を削らないと転輪位置が外側に行き過ぎるようだ。上の抜け防止ベロ加工中写真(サスアームが3つ写っているもの)の一番左のアームは修正前なので、削っていない段差が確認できる。
ちなみに、この丸側断面サスアームに標準型転輪を装着して使う場合には、軸根元の段差を削る必要はない。これは、STZ用緩衝ゴム内蔵転輪は、転輪そのものは標準型より薄いものの、ハブ部裏側の突起が大きいため(実物はどうあれ、少なくともキットパーツでは)。
▼形状の違う第一転輪用のサスアームは、アームそれ自体が、第2~第4転輪用より若干外側に付いてしまう。転輪側・車体側両方で若干削り合わせて、転輪位置が他と揃うように調整する必要がある。
また、車体側の位置決め溝が角型アームに合わせたような大きなもので、アームに隠れきれないので埋める必要がある。いやまあ、ほとんど見えないといえば見えないんだけれど。
▼これで転輪位置は揃った、と思ったら、今度は起動輪が転輪と同一中心線上に来なかった。試しに履帯パーツを合わせてみると、ちょっと起動輪が内側寄り過ぎる感じ。起動輪の軸の根元に、0.3mmプラバンをドーナツ型にしたスペーサーを噛ませた。
▼なお、標準シャーシパーツでは(後期型T-34に合わせて)第一転輪サスアーム用ダンパーが2つモールドされていて、初期型T-34を作る場合には1つ削り落とすよう指示されている。STZ1942用シャーシパーツでは最初から1つしかなく、その点はいいのだが、なぜか位置がわずかにずれている。もっとも転輪を装着すると見えない位置にあるので、今回は直さなかった。
とにかく次から次に、「ここも合わないのかよ!」だらけ。おまえはトラップ・ファミリー・シンガーズかって感じ。もちろん組立前にパーツがきっちり整合するか確認するのは模型製作の基本であり、それを怠ると「ちっ、これだからタミヤに慣れたぬるま湯モデラーはよぅ」なんて言われるわけだが(誰に?)、こういちいち姿勢を試されるのも勘弁してほしい。
ちなみに誘導輪の位置がちゃんと揃うかどうかは未確認。
●エンジンルーム後面パネル工作の続き。
M.S modelsに注文していた、masterclub製のパーツ「短頭六角ボルト二面幅0.7mm」が届いたので、さっそく排気管カバーの工作をしよう! ……と思ったのだが、パネル周囲のボルトに比べ、どう見ても小さすぎる。
実を言えば、0.8mmサイズにしようと思ったものの在庫が切れていたので0.7mmにしたのだが、むしろ0.9mm幅でよかったのかも、という感じ。いやいやいやいや。それ以前に「こんなもんでいいかあ」でサイズ決めるなよって話ですが。
あって困る物でもなし、ついでに0.9mm幅も頼んでおくんだったなあ、などと思ったが、そこで、先のサスペンションアームの「抜け防止金具」のモールドのリベットを思い出して比べてみたらちょうどよい感じだった。最初からそれを思いついていれば、お取り寄せしなくても済んだんじゃ……というのは言わない約束で。
単純にボルトの形状だけの問題ではなく、頂部のボルトが1本ではなく2本なのが、ある時点以降のSTZ生産車の特徴。
排気管は理由はよく判らないが左右張り合わせのものと、スライド金型を使った一体成型のものと2種類のパーツが入っていて、説明図では後者を使うように指示されている。一体成型のほうは排気口の彫り込みが浅く、場合によっては前者を使った方がいいんじゃないかとも思ったのだが、ドリルビットの先で(手で)ぐりぐりしたら、それなりに綺麗に彫り込むことができた。
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コメント
maniacs掲示板,回答しときましたけど,手元にはあまりいい写真はありませんでした.
投稿: 青木伸也 | 2016年6月15日 (水) 17時24分
や、どうもありがとうございます。
投稿: かば◎ | 2016年6月15日 (水) 21時28分