« ホビーボス 1:35, 39Mチャバ(レビューその2) | トップページ | ザリガニ釣り »

ホビーボス 1:35, 39Mチャバ(レビューその3)

●昔、「トリビアの泉」でやっていた話題なのだが、マジャル語(ハンガリー語)では、「塩が足りない」ことを「シオタラン」と言うのだそうだ。

というわけで、トルディほどではないものの、やはりなんだかちょっと「シオタラン」(一味足りない)気がしないでもないHOBBYBOSSの新製品、「Hungarian 39M CSABA Armored Car」のレビュー。

3回目は塗装とマーキング、およびデカールで取り上げられている車両の仕様に関しての話。作り始めているわけでもないのに、何を長々書いてるんだって感じ。しつこくて済みません。

なお、チャバの開発史、ハンガリーAFVの塗装とマーキング等に関しては、ウェブサイト“The Honvéd - Hungarian Armed Forces”に詳しい。特に、

は、以下を書く上でも大いに参考にさせてもらった。

●ごくごく大雑把な流れで言うと、戦前~大戦初期のハンガリー軍車輌(AFV、ソフトスキン含む)の基本塗装はグリーンをベースに、オーカー(サンドイエロー)、ブラウンを塗った三色迷彩。中盤以降はグリーン単色(多少の例外あり、後述)になる。

三色迷彩は、これまた塗り分けがくっきりとしたものと、境目が吹き付けのままでボケているものとがある。前者のほうが、比較的初期のものというイメージがあるが(私には)、実際には時期の差というよりはメーカーによる違いという部分が大きいようだ。

本題の39Mチャバに関しては、基本、当初はすべて「塗り分けはっきりタイプの三色迷彩」だったようだ(ただし、数多くはないが、ボカシ迷彩に見えるものもある。これは後述の単色塗装導入前に再塗装されたものではないかと思う)。

その後、1942年タイプの国籍マーク(黒四角に白十字)に切り替わるのに合わせて、車体も単色に塗り替えられている。前述のように、大戦後半のハンガリー軍AFVの塗装は(ドイツから供給されたものは除き)グリーンの単色が一般的なのだが、チャバの場合は、(グリーン単色と思われるものもあるが)かなり明るい色の単色塗装があり、これはサンドイエローで塗られているものと考えられている。

また、ちょっと珍しい例として、サンドイエロー単色塗装の上にブラウン/グリーン(あるいはその片方)を使って迷彩を施した(つまりほぼドイツ軍式迷彩)のチャバの写真も一例確認できた。モスクワのゴーリキー・パークでの鹵獲兵器展覧会の写真で、他にもニムロードやパナールなどが写っている。1942年型国籍マーク部分を綺麗に避けて迷彩色が塗られているので、現地部隊で後から色を重ねたのではないかと思う。

なお、トゥラーン中戦車の場合は3色迷彩で1942年型国籍マークのものがあるのだが、チャバでは3色迷彩で1942年型国籍マークのものは見当たらない(少なくとも私が見た写真の中には)。

迷彩色3色(グリーン、オーカー、ブラウン)の色調なのだが、上記サイトの解説によれば、当時の資料中にも色の名前でしか載っておらず、正確に色調を特定できる工業規格番号のようなものは不明らしい。ちなみにキットは塗色をMr.HOBBY(Mr.カラーと水性ホビーカラー)、ファレホ(バジェホ)、モデルマスター、タミヤ、ハンブロールで指定している。

グリーン(Dark Green)はMr.カラーではC70ダークグリーン(WWIIドイツ戦車)が指定されているが、その他のカラーでは該当色無しになっている。えー。近似色はあると思うけどなあ。

オーカー(Sandy Yellow/Dark Yellow)はMr.カラー:C39ダークイエロー(WWIIドイツ戦車ほか)、ファレホ:824 Ger.Cam.Orange Ochre、タミヤ:XF59デザートイエロー、ハンブロール:93 Desert Yellow Matt。Model Masterで該当色無し。

ブラウン(Wood Brawn)はMr.カラー:C43ウッドブラウン、ファレホ:983 Flat Earth、タミヤ該当なし、ハンブロール:186 Brown Matt、Model Master:1711 brown。しかし、ウェブ上のカラーチャートで見る限り、Mr.カラー:C43ウッドブラウンはいいとしても、ファレホのフラットアースはいくらなんでも明るすぎないか?

後年のドイツ軍の3色迷彩の規定はダークイエローをベース色にグリーン、ブラウンを重ねるが、ハンガリー軍の3色迷彩はグリーンがベースで、特にチャバの場合、3色の面積はあまり均等でなく、グリーンと他の2色が2:1:1から、せいぜい1.5:1:1くらいであることが多いようだ。

パターンはランダムで、例えばOA vz.30装甲車や一時期のヘッツァーのように「別車輌でも配色・パターンがすべて共通」といった面倒くさい状況にはなっていない。なお、上記サイトには、チャバのくっきりした塗り分けは刷毛による手塗りでそうなっているのではなく、型紙を使用していると書かれているが、それにしては、同一のブロック形状が他の場所に現れている例が見当たらない気がする。

というわけで、キットの塗装説明図は【I】から【IV】まですべて同一パターンで描かれているが、これは作図上の面倒を省いてコピペしただけで、実際にはパターンはバラバラ。また、オーカー、ブラウンのパッチは1つ1つがもっと小さめで丸っこい感じの場合が多いようだ。

F1011452b ●キットの指定塗装はすべて3色迷彩時期のもので、付属のデカールは右のような感じ。何しろ、いつ作るか判らないキットなので、保護紙をかけたままの不鮮明な写真で失礼。

メインとなるAシートと、忘れているのに気付いて後から足したのか、国章(と前に書いたが、正確には国家盾章が真ん中に入った装甲部隊徽章)のみの小さなBシートの2枚。

車両登録番号は5種類含まれているが、塗装説明図ではそのうち4種類しか取り上げられていない。……なぜ?

しかも、各塗装説明に、いつ、どこの何部隊なのかの説明がまったくなかったり、デカールシートに含まれているのにどこに使うのか指示されていないマークがあったり、あるいは用意されているデカールだけでは指定の車輌の実車通りのマーキングを再現できなかったり、特にデカール関連では「シオタラン」感たっぷり。しっかりしてくれHOBBYBOSS。

●というわけで、キットの塗装説明図に即して、デカールに取り上げられた特定車輌の塗装とマーキング、仕様に関しての検証。なお、デカールに取り上げられている登録番号の車輌は、すべてネット上で実車写真が確認できる。

上で紹介したサイトのチャバのページに、各車輌番号ごとに整理した写真も出ているので参照して頂きたい(なお、下の記述では上のサイトに出ていない写真も参照している)。

【塗装例 I 】 車両登録番号:Pc127

第1偵察大隊(1. felderítő zászlóalj )所属。1940年秋~1941年春。「ハンガリー十字」と呼ばれる末広がりの十字に国家色をあしらった国籍マークは、1940年9月の北トランシルバニア占領に先立って試験的に導入されたもの。対ソ戦開始前にはお馴染みのバルケンクロイツ似のマークが正式に制定されることになる。

国籍マークは、デカールでは3つのサイズが用意されていて、エンジンデッキが大、車体前部・砲塔左右・車体右が中、車体左が(工具を避ける形で)小、という具合になっている。少なくとも私が知っているPc127の写真は前方からの1枚だけだが、同じ時期・同じ部隊の別写真では、車体右側の国籍マークも、砲塔のマークよりわずかに小さいケース(ただしデカールの国籍マーク小よりは大きい)、逆に車体左側の国籍マークも砲塔と同じ大きさに見えるケース(そもそもキットは工具の取り付け位置がちょっと高めのようだ)がある。

塗装図ではなぜか省かれているが、車体前部の国籍マーク右側の細長い三角の装甲部分に、第1偵察大隊の部隊マークである「稲妻矢印」が描かれている。同じマークは、車体後面(ナンバープレートが描かれている面)の右端にもある。前部の部隊マークは前向き、後部のマークは垂直で下向き。

この部隊マークはデカールにも入っているのだが(23、24)、なぜか塗装図では無視されている。また、実際のマークはプレーンな白で、デカールのように黒縁は付いていない。さらに、デカールの23と24は鏡写しだが、実際には車体前部・後部ともに23の形。

また、説明書では図示されていないが、装甲部隊徽章(デカール番号27)も、しっかり記入されている可能性は高い。記入位置は決まっており、車体中央部の縦ジグザグリベット列の前側上隅。【塗装例 IV 】右側面の指示を参照のこと。なお【塗装例 IV 】では右側面しか指示されていないが、実際には左右とも同じ場所に記入されている。

タイヤはトレッドパターンの細かいほう(キットのタイプ II )を履いている(少なくとも残っている写真では)。

【塗装例 II 】 車両登録番号:Pc125

キットの塗装指示では、砲塔前面に半丸同心円のマーク(デカール番号6)を貼り付けるように指示されているが、これは第1騎兵旅団装甲大隊(1. lovasdandar páncélos zászlóalj )の部隊マーク(実際には馬蹄を示しているらしい)。しかし、実際にはPc125は、上の【塗装例 I 】と同じ第1偵察大隊所属車で、しかも第1偵察大隊マーキングのまま大破した写真が残っている。というわけで、塗装指示は大間違いである可能性が高そう。

部隊マークを活かす場合、車両登録番号はPc140、Pc144、Pc148、Pc154、Pc176が同部隊所属であるのは写真で確認できる。部隊マークの記入位置は、塗装図では砲塔前面だけだが、車体後面右上にも記入するのが基本。

また、国籍マークのスタイルは塗装図と同じ細いタイプでよいのだが、側面の国籍マークは、砲塔両側にあって車体にはなかったり、砲塔になくて車体にあったり、砲塔にも車体にもなかったり、いろいろバリエーションがある。時期によって違うのか、中隊/小隊の別などで違うのかはよく判らない。車体側面に記入の場合、キットのように左側面が小さなマークでよいのかという問題もある(おそらくこの部隊のものと思われる車両の写真で、右側面と同じ大きさの国籍マークを記入したものがある。その場合、当然、工具は国籍マークにかぶる形になる)。ただし車体前部のマークは共通のようだ。

写真で確認できる範囲で、前期車番の車輌の仕様を記すと、

Pc140:後方から写した写真が2種あり、片方は部隊マークが記入されていないが片方にはある。部隊マークが記入されていない時期があったことが判る。斜め前方からの写真では砲塔前面に部隊マークがあり、車体前面、車体側面(右側が写っている)に国籍マーク。装甲部隊徽章の有無は不鮮明でよく判らず。タイヤはパターンII(細かいほう)。

Pc144:砲塔側面、車体側面ともに国籍マーク無し。車体前部あり。装甲部隊徽章よく判らず。後方からの写真無し。タイヤはパターンII(細かいほう)。

Pc148:斜め後方から写した写真があるがあまり鮮明ではない。とりあえず砲塔側面に国籍マークはないようだが、車体側面にはもしかしたらあるかもしれない。後面所定位置にナンバーと部隊マーク。タイヤはパターンII(細かいほう)。

Pc154:斜め後方からの不鮮明な写真が1枚。しかも樹木の枝でカムフラージュされており、車番と部隊マークが確認できるのみ。タイヤはパターンII(細かいほう)。

Pc176:斜め前からの写真が1枚。車体側面は国籍マークがなく、装甲部隊徽章のみ。砲塔側面に国籍マークがあるかどうかは光線の関係で白く飛んでいてよく判らないが、どうもないような気がする。タイヤはパターンI(粗いほう)。

車両登録番号を活かす場合、所属は前記のように第1偵察大隊となる。Pc.125号車の写真は1941年の新国籍マーク導入後のもので、国籍マークはキットの塗装説明図とほぼ同じ細いタイプ(ただし、キットのデカール9より白+緑部分がわずかに広めかも)。ただし、記入位置は車体前部に加え、かなり大きめのものが砲塔左右。車体左右に記入はなく、エンジンデッキ上にもなさそう。というわけで、キット付属のデカールの国籍マークでは対応できない。

なお、【塗装例 I 】で述べたのと同じ場所に白い稲妻矢印の部隊マークが入る。

Pc125号車は、写真で確認できる限りでは、キットに含まれていない第3のタイプのタイヤを履いている(前々回の記事参照)。

【塗装例 III 】 車両登録番号:Pc175

私が知っているPc175号車の現存写真は2枚。スタンダードな形状の1941年型国籍マーク付き(つまりは、おおよそ1941年夏から1942年一杯くらいということになる)。実車写真で確認できるPc175号車は、訓練部隊所属。上記サイトの写真キャプションによれば、“Ludivika Academy Armoured Training Squadron”だが、最初の単語は“Ludovica”のスペルミス。ルドヴィカ・アカデミアはオーストリア=ハンガリー帝国時代からの歴史を持つ、ブダペシュトにある軍学校。

さて、国籍マークに関してはおおよそ正しそうなのだが(左側面がやや小さ過ぎかもしれないが)、問題は、この訓練部隊所属車輌は、実戦部隊配属の車輌には見られない特徴として、砲塔にやや大きめに(部隊内における)車番を記入しているところにある。記入位置は砲塔側面前半、丸いバイザーフラップの下。Pc175号車の車番はL45.。デカールは付属していないので、実車写真通りのマーキングを再現したい場合には、自分で手書くなり何なりする必要がある。面倒臭っ(;;)。タイヤはパターンI(粗いほう)。

同一部隊の所属車としては、他に、Pc146のL42号車、Pc175号車の写真に後続車として写っているL44(車両登録番号不明)がある。

▼【塗装例 IV 】 車両登録番号:Pc119

丸い国籍マークは、第2偵察大隊( 2. Felderítő zászlóalj )独特のもの。一般的な1941年型の八角形国籍マークのバリエーションという感じがするが、実は使われ始めたのはこちらの方が早く、第1大隊のハンガリー十字(末広がり十字)とほぼ同時期に導入されたものであるそうな。とはいえ、1941年型とよく似ているためか、(第1大隊のハンガリー十字と違い)対ソ戦が始まってからも1941年一杯は使われ続けたらしい。以上、前出のサイトの受け売り。

Pc119も正しくこの部隊の所属車で、「2.F.-」のマーキングも写真で確認できる。

ようやく、何の修正もなくストレートに行けるのか!?

……と言いたいところなのだが、惜しい。この部隊は車体後面、ナンバーの右側にも大きく国籍マークを記入しているのだ(記入できる面積ほぼいっぱいの大きなもの)。さらに、このPc119号車は、キットに含まれないタイプのトレッドパターンのタイヤを使用している。

▼【塗装例 * 】 車両登録番号:Pc124

塗装図で解説されていないが、デカールに含まれている車両登録番号が一つ残っている。このPc124号車は第1偵察大隊所属で、対ソ戦開始前の、「ハンガリー十字」国籍マーク入りの時期の写真が残されている。というわけで、注意点は【塗装例 I 】とまったく同じ。タイヤはパターンII(細かいほう)を履いている。また、残されている写真では戦闘室上面左後ろ隅に小さな旗が立っている。ちょうどその位置に小さな丸いパッチがあるが、ここに立てられているのだろうか。

●というわけで、用意されているデカールが見事に全部、(正確を期すのであれば)そのままでは使えないという、「やってくれるぜHOBBYBOSS」状態になっている。

……広東省の方角に向かって、皆で「シオタラン!」と叫ぼう。

|

« ホビーボス 1:35, 39Mチャバ(レビューその2) | トップページ | ザリガニ釣り »

チャバ」カテゴリの記事

製作記・レビュー」カテゴリの記事

コメント

ご無沙汰しております。がんだ・ま でございます。
シオタラン の話、一昨日、たまたまYou Tubeで見ておりました。で、これもたまたまなのですが、明日、広東にいきます。なので、近くで思い切り叫んできます。

投稿: がんだ・ま | 2016年5月 3日 (火) 20時33分

>がんだ・まさん

うわっ。ものすっごくお久しぶりです!
お元気ですか?

いやもう、日本人(の一部のモデラー)とハンガリー人を代表してHOBBYBOSSにビシッと「シオタラン!」と言ってやってください。

投稿: かば◎ | 2016年5月 3日 (火) 21時40分

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.f.cocolog-nifty.com/t/trackback/1208697/65261407

この記事へのトラックバック一覧です: ホビーボス 1:35, 39Mチャバ(レビューその3):

« ホビーボス 1:35, 39Mチャバ(レビューその2) | トップページ | ザリガニ釣り »