ホビーボス 1:35, 39Mチャバ(レビューその2)
●HOBBYBOSSの新製品、「Hungarian 39M CSABA Armored Car」、レビューの続き。
前回記事作成時に、エッチングパーツに「2014」と年次が入っているのに気付いた。エッチングは一昨年に完成していて、それからキット発売までに約2年かかってるのか?
あるいは何かキット設計上のポカがあって、発売までにすったもんだしたのか?(そういえば、さすがに2年前とはいかないものの、秋葉原のYSでキットの見本を見たのはだいぶ前だったような気がする)
●それはそれとして。まずは車体。全体形は、それほどじっくり見比べたわけではないが、実車写真から感じるイメージとそう遠くない。
全面に打たれたリベットは、大きさ、形状など実車では画一ではないが、キットもとりあえず大きさに関しては気を使って区別しているようだ。いくつか気になった点を以下に。
・金型からの抜きに関しては角度的にそうきつくないように思うのだが、車体上部後端のリベット列(横方向の4本)に“めくれ”が生じてしまっていた(すべての製品でそうなっているのか、私の手に入れたキットがたまたまそうだったのかは判らないが)。一度削って植え直す必要があるかもしれない。
・前述のように、リベットの大きさに関しては一応気を使ってメリハリを付けているようなのだが、形状は基本、すべて丸頭リベットになっている。しかし、実車ではエンジンその他内部機構の交換などの都合で一部のパネルはボルトもしくはネジで止められているのではないだろうか? どこがどのような形状なのか、なかなか鮮明なクローズアップがなくて確かめられないのだが、少なくとも車体前端上面の横列はマイナスネジが使われているようだ。また車体後部は、後面上側(上写真のAの面)はマイナスネジで、後部上面(Bの面)は尖頭ボルトが使われているのではないかと思う。
・車体後面には、上下の装甲板継ぎ目あたり、やや右寄りに、エンジンスタート用のハンドルを突っ込むのではないかと思われる小穴とそのカバーがあるようなのだが、キットでは無視されている。
・車体前端装甲は、ほんのわずかだが、実車より横長な感じがしないでもない(あくまで個人的な印象)。上部左右のナナメのリベット列は、実車では左右端がもうちょっと内側にある。
・操縦席左右の三角形の装甲板には、エッチング・パーツの丸いパッチが付く。これは実車では単純なパッチではなく、内側にヒンジがあって開閉する。フェンダー上に前照灯など付いていないので、ここにライトがあるのではないかと思う。いや知らんけど。問題はその位置で、キットはエッチングを貼りつける位置が筋彫りで示されているが、実車と比べ、位置が後ろ過ぎる。下辺に6つあるリベットのうち、キットのモールドは後ろから三番目のリベットよりやや後ろに円の中心があるが、実車では後ろから三番目と四番目のリベットの間に来る。
●車体ハッチ。前後操縦席上のキューポラ付きハッチは、半開状態で固定可能。その場合、前部ハッチは前縁右側に固定用アームが覗く。後部ハッチは側部右側(車体の前後方向を基準として)に固定用アームがあるようだ。
車体下部の乗降用ハッチは、表側の取っ手は別部品、裏側はモールド。裏側モールドも取っ手は横方向になっているが、開状態では縦になるものらしいので、情景など作る人は御注意。
下辺のリベットがその他と比べて大きいのは実車も同じ。しかし、実車はこれよりももっとメリハリがあるような印象。
各辺のリベットの数は(車体も含めて)おおよそ正しいようだが、一部に間違いもある。右写真で黄色で示した辺のリベットはキットでは8つになっているが、実車は7つ。一方、前端縦の列はリベット間隔が不揃いなのは実車通り。「たまに間違えている」だけで一応、ちゃんと表現しようという意欲はあったらしい。
一方、砲塔前面は、キットは下辺に等間隔に11個の大リベットが並んでいるが、これは誤り。実車は10個で、向かって右側から3個、ちょっと間隔をあけて7個という具合になっている(主砲直下のひとつがない)。
なお、砲塔・車体のリベット列については、ぱっと目に付いたところだけは比較したが、すべての列について比較検討したわけではなく、もしかしたら他にも間違えている箇所はあるかも。しかしまあ、砲塔はAFVの顔なので、ここはちょっとこだわりたい気がする(個人的に)。
主武装のゾロトゥルン20mmについては、なんと砲身だけでなく全体をパーツ化してあり、スリーブの中に差し込む凝った構成。小国御用達で携行兵器としてもあちこちで使われているので、ゾロトゥルンだけ複数欲しい感じ。いや、フィギュア作らないけど。
しかしその一方で、なぜか隣の機銃(ゲバウアー 34/37M 8mm機関銃?)は、表に出ているスリーブがパーツ化されているのみで、銃身どころか(これはどうせスリーブに収まっているので要らないが)機関部もない。せっかくゾロトゥルンの砲尾があっても意味無し! もっとも、そもそも砲塔内部はつんつるてんで他に何もないが。
●後面と上面の2カ所にある砲塔ハッチ。
砲塔後面の観音開きのハッチは、ペリスコープ部の表側が、なぜかシャッターを下ろして塞がれたような表現になっている。実車がこんなふうにできるのかどうか不明だが、少なくとも実車写真でこのような状態は見たことがない。
実際には、上に貼った写真の、砲塔の側面と同形状になっているはず。なお、このペリスコープを囲む丸いパッチ部分は、ドイツ風に言えば「クラッペ」で外側にはね上げて開閉することが可能。
キットも、このハッチの内側は比較的(なぜか)凝っていて、内側のペリスコープ本体、その上に付く開閉アームなども別パーツ化されている。
これに対して砲塔上面ハッチは、内側はまるっきりつんつるてん。これは「ハッチを開けて乗員のフィギュアを乗せたい派」の人には困ったものだろうと思う。
39Mチャバで上面ハッチ内側が綺麗に写っている写真はなかなかなく、せいぜいこの程度のものしか見つけられなかったが、内部構造図や、バリエーション車輌である無線指揮車40Mの写真などから推測すると、ハッチ中央部に縦方向に2つのコの字の取っ手、ヒンジと反対側の中央に何らかのロック機構という感じらしい。ハッチ表側のリベットも、この内側ディテールに対応している。ただし、キットの表側リベット(特に取っ手のリベットの4つ)は離れすぎで、もうちょっと内側に寄っている感じではないかと思う。
なお、開閉ヒンジ(蝶番)はハッチ内側についているような表現になっているが(既存の図面でもそのように描かれているが)、実車写真を見ても内側にアームのようなものは見られず、単純にぱったんと前側に開いている。ハッチの開閉軸部分は表側にあるのではないかと思う(前段落でリンクを張った内部図でもそのように描かれている)。
●車外装備品。同じHOBBYBOSSのトルディは、工具箱以外、車外装備の工具類は一切無視でだいぶ寂しい感じだったが、このキットではジャッキ、つるはし、シャベル、バールがパーツ化されている。
なお、付属のエッチングパーツも、半分以上は工具(つるはし、バール、シャベル)の留め具。ただし、キットのパーツは単純にエッチングをΩ型に曲げるだけだが、実際はバックル付きのベルトではないかと思う。
ジャッキはフェンダー上に止める台座パーツを別にして、本体のみで5パーツ。トルディのジャッキと同じならもう一個欲しいなあ!……なんて思ったのだが、トルディのジャッキはこれよりももっと細身な外見のようだ。もちろんトルディのほうが重いので、単純に縦横比で「細身に見える」だけで、向こうのほうがゴツイのかもしれないが。もっとも、チャバのジャッキ自体、本当にこのような形をしているのかよく判らない。
(5/3追記。Nasi kandarさんから、同形のジャッキが確認できる写真がある旨コメントを頂いた。ありがとうございます)
(塗装とマーキングに関しては次回)
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コメント
こんばんは。
いつも拝見してばかりなので書き込みを・・・。
チャバもトルディ同様やっぱり一筋縄ではいかないようですね。
まだ購入しておりませんが、レビュー大変参考になります。
記事の中で触れられているチャバのジャッキですが、例の「Huns on Wheels」にて
警察部隊所属の同車を横から捉えた写真にキットと同じジャッキが写っているので形としては間違いはないと思われます。
他にも同書で二葉ほどジャッキ装備が確認できる写真では、どちらも警察部隊のチャバの物とは向きが上下逆に取り付けられているのも興味深いですが、そもそもジャッキが見えるチャバの写真も撮られた向きの関係からか少ないですね。
投稿: Nasi kandar | 2016年5月 2日 (月) 23時26分
>Nasi kandarさん
おおおお!
有難うございます。
警察用のRR511、RR512も、軍用シリーズと同時期、1940年に生産されているようなので、別形式のジャッキを使っているということはなさそうです。
これでジャッキ形状に関しては一安心です。
キット内容的には、(このあとUPしたデカール問題はありますが)トルディよりはよさそうな感じです。
まあ、あの扱いづらい履帯がないだけでも、はるかにマシです。
投稿: かば◎ | 2016年5月 3日 (火) 01時28分