R-1の下調べなど(2)
●週末模型親父さんのところのAFV模型ウェブコンペ、「SUMICON2016」の出品作に選んだR-1軽戦車の製作準備その2。てなことを言いつつまだ本当にコレにするか迷う気持ちもあるのだが、そろそろちゃんと決めないといかんね。
さて、私の手元には、R-1のキットは3つある。1つはATTACKの1:72。残りはフェアリー企画の1:35の新版と旧版。フェアリーの旧版はパッと出てこないので、ATTACKとフェアリー新版の簡単なレビューを以下に。
●ATTACKの72は、私が知る限りR-1の唯一のインジェクションキット。ミニスケールAFVキットらしい小さいキャラメル箱入りだが、なにしろ小さな車輌なうえ、足回りは一体でパーツも少なく、中身はスカスカ。
右写真では、すでに箱組の車体、前後貼り合わせの砲塔は組んでしまって、その分のランナーは捨ててしまっているのでさらに中身が少ないが、感じは判って頂けるかと。それにしても細部部品の少ないことよ。
足回りはロコ形式の一体成型で、起動輪・誘導輪の外側だけが別パーツ。履帯の表面ディテールがほとんどないとか、履帯が厚いベルト状だなあとか、別部品の起動輪・誘導輪外側がボッテリしているとか、外側起動輪の歯が一部しかないとか(履帯に穴がないのだから当然だが)、内側起動輪にはそもそも歯が全然ないじゃないかとかいろいろあるが、それよりも最大の問題は、
「本来履帯の中央にあるはずの転輪が、起動輪・誘導輪の内側同様の奥まった位置にある」
ということではないだろうか。根本的な解決を図るには、履帯からいったん転輪部分を切り離して位置を調整する(さらには、いっそ履帯そのものもどこからか適当なものを調達して取り換える)のがよいと思うが、35でも作る計画なので、ちょっとそこまでする気になるかどうか。
全体のスタイル、およびデカールは右のような感じ。この角度から見ると、転輪が奥まっているのがさらに気になる。全体のスタイルは……うーん。こんなもんなのかなあ。ちょっと砲塔が小さい気もするが、写真によってはこの程度にも見える。タンコマステルの図面(1:35)を72に換算して比べると、砲塔径がやや小さめ(0.5mm程度)、一方で車幅は広め。
デカールのマーキング例は、砲塔に王家の紋章が入った1941年時のものと、各所にラウンデルが入った1942年時のものの2種。ラウンデルは車体前部と右側面に大きなもの、左側面に小さなものを貼るように指示されている。実際そのような塗装図を別の場所でも見た気がするが、本当に右左でそこまでアンバランスな大きさのラウンデルを描いていたのかどうか。
実際に、左側面に小さなラウンデルが描かれている写真、右側面と前部に大きなラウンデルが描かれている写真は存在するのだが、同じ時に、同一車輌を右と左から写した写真ではない。右は装甲板を目いっぱい使って描いていて、左は小ぢんまり描いているというのはちょっと不自然のように思う。
●2つめはフェアリー企画の1:35レジンキット。海外のレジンキットでも古いものは説明書がお粗末なものは多いが、同社のそれはまた格別。
フェアリー企画はレジンのガレージキットというものがようやく認知されてきたくらいの時代から活動している日本のガレージメーカーの老舗で、(少な くとも私が知る限りでは)AFVと艦船のキットを手掛けていた。現在に至るまで「フェアリー企画からしか出ていない(出ていなかった)」というマイナー車種をい くつもキット化していた一方、技術的進歩がほとんど見られない(多少は進化していたのかもしれないが、海外メーカーがどんどん進歩していったのに比べると だいぶ見劣りがした)、通販を頼んでも平気で数カ月来ないといった悪評もで結構名高かった。
確かFさんという方が個人でやっているメーカーで、通販を頼もうと電話をすると、Fさんの御母堂と思しき方が電話に出るのだが、どうも注文の品名がちゃんと通っているのかどうか不安になるような感じだった覚えがある。
もっとも、当時としても驚くほど価格が低く、また車種によっては当時捌売りされていなかったカステン製の非可動履帯がセットされており(当然ながら 車輌そのものと履帯のクォリティがかなりアンバランス)、口さがない人は「あれは履帯を買うと、オマケでレジンの塊が付いてくるんだよ」なんて言ってい たっけ。
今でもサニー辺りでは製品を見かけるので活動しているらしいのだが、最近は、AFVはミニスケールだけで1:35はもうほとんど出していないのではないかと思う(出していたら済みません)。
前置きが長くなったが、フェアリー企画のR-1には、前述のように新旧の2種がある。旧キットのほうは履帯と、確か転輪類もホワイトメタルだったように記憶しているが、鉛規制か何かでそのままの形では出せなったために、ほとんどをレジンパーツに変えた新版を出したと当時聞いたような気がする。
しかし、実際に新版を入手した時に比較して驚いたのだが、単純に旧版のパーツの素材を置き換えたのではなく、車体・砲塔などの基本パーツ自体、原型からやり直した全然別のキットになっていた。
車体はごろんと一発抜き。中空だが床板は入っておらず、また、床板をはめ込む際に便利なように段差を作ってあったりもしない。車体後端裏側には注型時の湯口があったらしく、荒っぽくゴリゴリとヤスリで削り飛ばしてある。私がやった覚えはないので、購入時からこうだったのではないかと思う。
タンコマステルに出ている図面と重ねてみると、(ちょっと意外なことに)基本寸法はほぼピッタリ合う(ハッチの縦横寸法などは違っているので、同一図面を元にしているのではなさそう)。
とはいえ、綺麗に平面が出ていないとか、原型工作時に荒っぽくヤスリ掛けした跡がそのままとか、細かいモールドが「細切りのプラバンを貼っただけ」的なものが多かったりとか、原型段階からの作りが何とも荒っぽい。むしろそれでいて気泡はほとんど見られないのが不思議。
履帯は6枚つづりのものと2枚つづりのものがざらっと入っている。ディテール的にはかなりプアで、ガイドホーンもケシゴムを刻んで並べたような感じ。よく見ると高さも不揃い。起動輪の歯がかみ合う穴も開いていない。もっとも、旧版のメタル製の履帯はもっととろけたようなモールドだったような気がする(うろ覚えなので間違っていたら済みません)。
前述のように履帯には穴が開いていないので(手っ取り早い方法としては)起動輪の履帯と噛み合う部分の歯を切り飛ばす必要があるが、ガイドホーンが分厚いのでそれだけでははまらず、そちらも削り合わせないといけない。転輪はリム部近くにリベット列がモールドされていて、確かに既存の図面にもたいていこれが書き込まれているのだが、実車は、このリベット列は写真では見えるか見えないかくらいのかすかなもののようだ。
新版は鉛規制に伴って金属部品を減らしたもの(らしい)と最初に書いたが、金属部品がまったくなくなったわけではなく、2丁の機銃はメタルキャスト。そのほか、操縦手用照準、フックがエッチング。エンジンルーム吸気口(?)の樹脂メッシュと、べっこう飴のような前照灯部品。
というわけで、ちょっと21世紀にこの出来はツライものがある。もっとも、R-1の1:35キットは、私の知る限りではまだこれしかないはず。
●SUMICON2016では1:35のR-1を作るつもりだが、フェアリー企画のパーツはあまり使わずに作ることになりそう。
| 固定リンク
「製作記・レビュー」カテゴリの記事
- ずしのむし(2023.11.02)
- ポーランド・メタボ士官(2023.08.26)
- つれづれSU-100(5)(2023.06.24)
- つれづれSU-100(4)(2023.04.01)
「ミニスケールAFV」カテゴリの記事
- オースチン装甲車Mk.III MASTER BOX 1:72(2020.12.30)
- 巡航戦車Mk.I(A9)CS THE WORLD AT WAR 1:72(2020.12.06)
- III号指揮戦車D1型 FIRST TO FIGHT 1:72(2020.11.02)
- III号戦車D型 FIRST TO FIGHT 1:72(2020.09.13)
- III号指揮戦車E型 FIRST TO FIGHT 1:72(2019.12.03)
「AH-IV/R-1」カテゴリの記事
- 「SUMICON 2016」お題変更(2016.05.22)
- R-1の下調べなど(2)(2016.04.26)
- R-1の下調べなど(2016.04.21)
コメント
1/35レジンでは、IR Hobbyってトコから「AH-IV・エチオピア輸出仕様」ってのが出てましたね。10年以上前ですが。
んで、それが出て程なくして、CZ-Kolinecからルーマニア仕様の R-1が出たような。今では両者とも検索にも引っ掛からないですが…。
IR Hobbyのは中身を見たことがありますが、フェアリーよりはずっとカッチリしていました。注形も良かったし。
ただ、エチオピア仕様って砲塔とかあちこち違うんですよね。
転輪は、何と!タミヤ1/48の 38(t)の転輪が、サイズ的にドンピシャリ!…だと良いですね(願望)。
投稿: セータ☆ | 2016年4月26日 (火) 22時29分
>セータ☆さん
おー。他にもレジンキットが出ていた(らしい)のですね。
まあ、他から出ていたとすれば、ほぼ確実にフェアリー企画よりは出来がいいだろうと……。
>>エチオピア仕様って砲塔とかあちこち違う
ルーマニア仕様、スウェーデン仕様、エチオピア仕様、それぞれ搭載エンジンが違うのでエンジンデッキの高さが違います。
スウェーデン仕様とエチオピア仕様とでは転輪は一緒ではないかと思いますが、ルーマニア仕様はこれまた違います。
ルーマニア仕様は一段盛り上がってハブキャップがありますが(要するに38(t)と同じような感じ)、スウェーデン仕様は真ん中が窪んでいます。
>>転輪は、何と!タミヤ1/48の 38(t)の転輪が、サイズ的にドンピシャリ!…だと良いですね(願望)。
そのネタ、5月になって製作スタートしたら書こうと思ってたのに(笑)。
実はその願望、だいぶ以前から私も抱いていました。38(t)発売より前にマーダーIIIですでに比較検討しているんですが、結論から言ってダメでした。
48の38(t)系転輪の方が、直径で約2mmも大きいです。
中心部分だけでも使えないかと思ったんですが、今度はボルト数が全然違いました。
ただ、48のマーダーからはいくつか流用予定です。
投稿: かば◎ | 2016年4月26日 (火) 23時44分