ナスのゾンビ
●冬の間は山道を歩いていても虫の写真をほとんど撮れないのでいささかツマランと思っていたのだが、その代わり、逗子海岸での貝殻拾いに少々はまってしまった。
「近所の海」ではあるものの、下手をすると半年以上行かなかったり、という具合だったのが、最近は割と頻繁に散歩に出ていて、特に、ちょっと天気が荒れた後などは「何か珍しいものが拾えるかも」というスケベ心で出かけたりする(もっとも、そんな時は逆に荒い波に洗い流されて波打ち際がすっかり綺麗になっていたりする)。
先月末、夕方散歩に行った時には、大人の握りこぶしサイズ前後の大きなハマグリの殻が大量に落ちていた。とにかく、風だの波だの潮だののコンディションで、落ちている貝殻はだいぶ違っていそうだ、ということだけは判った。下はその、先月末の夕方の散歩で撮ったもの。
●というわけで、ここ最近の拾い物少々。
どういうわけか、拾うとちょっと嬉しいホタテガイの仲間(イタヤガイ科)。左上の4つはイタヤガイ。もっと大きいものもたくさん落ちているが、殻が薄手のためか、大きなものは大抵割れている。左下と真ん中右の計5つはキンチャクガイ。大きくうねって数が少ない放射肋が特色。放射肋が少なくて細かい系はどうも同定しづらいのだが、右下4つはアズマニシキ? 右上のひとつは放射肋が整っているのでたぶんヒオウギ(緋色ではなく黒いけれど)。その左下の小さくてやはり黒いのはナデシコガイ?
比較的よく落ちているチリボタン(たぶん)。カキのように岩に貼り付いて生活しているので不定形だが、イヤタガイ科と近縁だそうで(イタヤガイ上科ウミギクガイ科)、よく見ると蝶番の左右に小さく耳がある(削れてしまっているのもあるが)。色は茶色っぽいものからオレンジ、赤までいろいろで、割と鮮やか。
岩に貼り付き系の貝にはいろいろあって、表面が削れていると見分けにくかったりするが、チリボタンは蝶番部の内側の形に特徴がある(これがチリボタンだ、という私の同定が正しければの話だが)。
トゲのあるものとないものとがあるのだが、単に削れてしまったのか、それともサザエのように生活環境によって生えたり生えなかったりするのかよくわからない。
なお、このチリボタンを最初、ナミマガシワという貝だと思ってしまったのだが、そのナミマガシワの本物は右。こうしてパッと写真で並べると「似たようなもんじゃないの」と言われそうだが、実際にはこちらはだいぶ薄手で半透明、雲母のように薄い層が積み重なった感じ。
これも貼り付き系の貝だが、蝶番部等は確認できないので、どういうイキモノなのかちょっと想像しづらい(が、一応二枚貝だそうだ)。
さらに貼り付き系各種(別に貼り付き系を好んで拾っているわけではない)。左上6つがアワブネガイ。左下の4つがシマメノウフネガイ。一応巻貝で、ひっくり返すとスリッパ状になっている(左上)。近縁の貝だが、シマメノウフネガイはアメリカ西岸から船にくっついてやってきて、近年急激に勢力を広げた外来種である由(国立環境研究所DB)。ただし、最下段の2つとその上の2つでは巻き(というほど巻いていないが)の具合がちょっと違っている。単に個体差のレベルなのか、近縁別種なのかよくわからない。
右上2つの穴の開いているのはスカシガイ。隣はウノアシ。ウノアシの下は同じカサガイの仲間で、殻裏に濃色の部分がないのでマツバガイではなくヨメガカサだと思う。
その右の真っ白で平たいのは、最初「大きな巻貝のフタ?」と思ったりしたのだが、これも左のスリッパ系巻貝の一種(カリバカサガイ科)で、ヒラフネガイ。殻だけになった大きな巻貝の内側に貼り付いて生活しているらしい。変なの!
右下のアポロチョコ系は、上3つがスズメガイで、下4つのとんがりがオーバーハングしているのがキクスズメ(たぶん)。
拾ってきた貝殻の同定で割とお世話になっているのが、「材木座海産貝類」というサイトなのだが、そこには、「ナガニシはこの辺りでは本当に見つからない貝で、破片や破損個体も見つけることは困難」と書かれている。が、逗子の浜では、とりあえずかけらなら、時々落ちているのを見かける。
形が格好いいので、もしも完全形で拾うことが出来たらちょっと嬉しいだろうなあ、と思う。
●ちょっと珍しかったり綺麗だったりしたもの。
- 1枚目:イトカケガイ科のオダマキ。
- 2枚目:ハナガイ。
- 3枚目:ツルツルのものが多いタマガイの仲間には珍しく細かい筋入りのネコガイ。同じ仲間にはネズミガイというのもいるそうな。
- 4枚目:裾にフリルがついているキヌガサガイ。
●ところでここ最近、砂浜を散歩していると、時々、なんだか気色悪い妙な物体を見かける。硬いような柔らかいような、変な質感の見かけで(気持ち悪いので触っていない)、形と色は、「大きなナスのゾンビ」という感じ。
しばらくは「謎の物体」のままだったのだが、ビーチコーミング関係のサイトを回っていて正体判明。タツナミガイという巻貝だった。
とはいっても、これが貝殻というわけではなく、アメフラシと近縁の、殻がほぼ退化してしまった種類。アメフラシはもっと柔らかく、打ち上げられるとなんだかスライムっぽくなっているが、こちらはもともともうちょっと体が硬く、海の底でもゴロンとしているらしい。とはいえ、海の中ではもうちょっと表面がゴツゴツしていて、こんなふうにナスっぽいのは陸に上がって半分干物になってしまっているせいらしい。
ほとんど退化してはいるものの体内に小さな殻が残っていて、富嶽三十六景の「神奈川沖浪裏」みたいな形をしているらしい(さすがに解剖する気にはなれないので、そのうち殻だけ打ち上げられるのを待ちたい)。
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