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I号戦車の準備の続き

F1010026SUMICONネタのI号戦車、製作前準備の続き。

作る予定の、スペイン内乱におけるブレダ20mm砲搭載改装型は、これまでにそのものズバリのキットも、1:35で2種発売されている。

片方はチェコのHiPM製(下)、もう片方はウクライナのMB(マスターボックス)製(上)。どちらも、それぞれの会社から出た通常型のA型のバリエーションとして発売されたもので、HiPMのほうは、箱に1999年と書いてあった。MBのほうはいつ発売されたものだったか、よく覚えていない。

もともとこの変態的改造車輌には惹かれていて、そのためにこの両キットも買ったのだが、今となってみると、ベース部分でトライスターのキットと比べだいぶ見劣りする。今回はあくまでも参考品程度。

●HiPMのI号A型は、明らかにイタレリのI号B型をコピーして、A型、B型の相違部分だけ新造してあるという、いささか倫理的に問題のあるキット。

F1010019 F1010021よく見ると、車体前部はイタレリの増加装甲付きのままコピーされていて、部品取り付け指示の凸モールドもそのまま(また、そのためにクラッチ/ブレーキ点検用パネルは、生産第3シリーズ末から使われた幅広のものとなっている)。

起動輪はイタレリのパーツのヒケ部分にパテか瞬着を盛って、しかしきちんと削ったりせずにそのままコピーしている(しかも片方だけ)のがトホホ感たっぷり。

F1010023砲塔は、通常型と改装型の両方が入っていて、要するにコンパチキットになっている。クラッペの開口部はなくなっているが、これもおそらく原型はイタレリなので、少なくともドラゴンのI号B型よりは外形寸法上はマトモ。ただし特に改装型の砲塔はかさ上げ部分と元の砲塔との継ぎ目に若干の段差が出てしまっており、また表面も「鋳造砲塔?」と言いたくなるような細かな凹凸付き。

上面前方にお公家さんマユゲのような2ヶ所の凸モールドがあるが、これはハッチのダンパーのつもりだろうか。しかし少なくともダンパーなら、実車はもっと前寄りにあり、径はもっと小さく、もっと背が高い。

F1010017●MASTER BOX(MB)は現在も活動中のメーカーだが、これが同社でも初期のキットだったと思う。HiPMとは違い、こちらは完全独自設計。ちょっと硬質な感じのモールド(だからといって、シャープな出来かというと微妙)。右写真のような部品構成。こちらは砲塔は改装型の1種類のみ。若干、砲塔が前後方向に間延びしているような印象があるのだが、トライスターの砲塔と重ねてみても1mm違うかどうか、くらいの差しかなかった。

改装型の砲基部に関しては、HiPMは内装式の防盾と防盾カバーが一体成型だったが、こちらは別パーツで砲の仰俯が可能……ということ以前に、砲の装着位置がまったく違う。

F1010014HiPMのキットでは、砲がほぼ砲塔の中心ライン上にあるのに対して、MBのキットでは大きく右側にオフセットされている。それは、箱に印刷されたカラー4面図にもはっきり示されている。

MBの説明書には、

大砲を射撃と受持ちの便利さのために少し右に移した。こういう風に戦車を改良した例がいくつかあると考えられている。しかし、“Breda”つきのPz.1Aの写真が一枚しか残っていない。

と、なんだかもっともらしいことが(いささかヘタクソな日本語で)書いてあるのだが、残された写真から判断すると、砲はほとんど中心線上にある。実際のところブレダ搭載の改造I号A型の写真は現在はそこそこの枚数が見つかっているのだが、おそらく、MBのキットは(説明書にある通り)、写真資料が出回る以前、たった1枚の写真を元にキット化したのだろうと思われる。

●資料。

▼T. L. Jentz, H. L. Doyle, "Panzer Tracts No.1-1 Panzerkampfwagen I Kleintractor to Ausf.B"

とにかく今の世の中、ドイツ戦車・車輌に関しては、「虎窟(トラクツ)を読まずんば虎子を得ず」みたいな風潮だが、そうでなくとも、I号A型は戦車開発・生産の練習台的な存在なので、同じA型の中での仕様変化が大きく、トラクツの解説は役立つ。

ただし、トラクツ自体は写真・図版は入っていてもメインは文章なので、いまいちよく判らない部分もある。

トラクツを元にした“目で判る資料”といえば、尾藤満氏による、アーマーモデリングの2008年から2009年にかけての連載だが、私は雑誌資料の(というよりアーマーモデリングの)管理がよくないので、どれだけ掘り出せるか不明。というより、ちゃんとその号を持っているかどうかも不明。ダメダメな感じ。

同じく尾藤満氏の「アハトゥンク・パンツァー第7集」も図解で仕様・装備品を確認できるが、アーマーモデリングのほうがもっと詳細だったはず(AM誌の連載は、生産シリーズごとに、その時点の仕様を整理している点も得難い)。

▼Breda 20mm砲搭載I号戦車A型アルバム

そういう資料があるわけではなく、要するにせっせとネット上でかき集めたもの。wikipediaによれば、ブレダ搭載改修型は4輌製作されたらしい(出典不明)。そんな生産台数の割りに写真は多く、写真の質はどうあれ、およそ20種くらいの写真を集めることができた。30輌生産されたはずなのに、戦時中の(生産型の)写真は3、4枚しかないVanatorul de Care R-35よりよほど恵まれている。

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