ソミュア!(砲塔関連で補遺その3)
●ソミュアS35についての「あーでもないこーでもない」の4回目。
実を言うと、迷彩パターンについての考察を若干書いて終わりにしようと思ったのだけれど、キューポラ周りをいじりっているうち、砲塔の形やらディテールやらがやはり気になりだしてしまった。
●とりあえず、いじっているキューポラに関してはこんな感じ。我ながら、なんでこんなところから手を入れ始めるかなあ、という気もしないでもない。手を入れたポイントは、
- 砲塔上面、キューポラに対応して窪んでいる部分に0.5mm板を貼って、逆に出っ張らせる。
- その分、キューポラ本体の底を削って薄く。
- キューポラの縁取りを加工。
- 上面に、「少林寺穴」を追加。綺麗に六文銭に並んでいるわけではなく、手前側に向けすぼまっている感じ。なお、B1bisの現存車輌の写真では頂部に小穴が開いているものもあるが、開いていないものもあり、どちらが一般的なのか判断もできなかったので開けていない。
- シャッターのある面に2ヶ所のネジ。これはB1bisの現存車輌のうち、ボーヴィントンの車輌にはないようだ。ソミュアにもそんな仕様のものがあるかもしれない。
- 3カ所の吊り下げフックの追加。
写真右側のフラップのヒンジの隙間はまだ消していない。
●P.Danjou, "FOCUS No.2 SOMUA S35"(EDITION DU BARBOTIN)にほぼ砲塔真上からの写真があった(残念ながら全景ではない)。やはり、タミヤのソミュアの砲塔は、右前部が張り出しすぎているようだ。
砲塔上面右辺は、ほぼ前後軸と並行くらいの感じ。信号旗ハッチのバルジと右辺とも、もうちょっと近い感じ(これは信号機ハッチのバルジが小さめな可能性もある)。
すでに側面スリットブロックもはめ込んでがっちり接着してしまっているので、あまり本格的な削り直しはできないのだが、若干、角を引っ込めた。……けれど、あまり変わっていませんな。
●先日、みやまえさんに教えていただいた砲塔上面の「信号旗ハッチの向きにバリエーションがある」件についての補足。
先述のように、タミヤのキットはヒンジが前方向にあり、ソミュールの実車もそうなっているのだが、M10664号車では斜めに付いている。
ボーヴィントン、元アバディーン、クビンカの実車でも確認したいところだが、今のところ、砲塔上面の写真は見当たらない。
さて、ソミュアの現存実車は以上の4輌(のはず)だが、砲塔に限ればまだあることを思い出した。ソミュールが保有するシャールB1bisのうち、砲塔にRhôneと書かれているほうは、元のAPX-4砲塔が失われたか、あるいは元からなかったのか、とにかくレストア時にソミュアS35のAPX 1 CE砲塔を載せているのである。
これについて私は気付かず、いつだったか、柳瀬ばお氏から、「あれ、形が違うよね、ソミュアのだよね」と言われてビックリしたような記憶がある。
……と、いかにもいいところに気が付いた、みたいに書いているが、実のところ、この仮称ローヌ号の上面写真も見つけられなかった。長い前置き意味無し!
ところが、「Surviving French WW2 Tanks (PDF)」を見ると、もうひとつ、ASPHM Associationというところがレストア中のB1が、ソミュアの砲塔を載せていると書かれている(そもそもB1bisではなく、B1が現存しているというのがまた驚き)。実際、掲載された写真でソミュアの砲塔であることは確認できるのだが、わずかに写った上面では、ヒンジ位置はどう判断していいか微妙なところ。というわけでweb上に他に写真がないか探してみたのだが……。
ASPHM Associationという組織自体がサイトを持っていて、ある程度の写真をアップしていた。ここがB1のページ。……というところまでたどり着いたのはいいのだが、いつの間にか、砲塔はソミュアのもの(APX 1 CE)ではなく、APX-4に変わっていた。どこからかB1bisの砲塔を持ってきたのか、あるいはB1自体もAPX-1からAPX-4に交換した例もあるから、もともとこの車輌のものだった可能性も否定できない(まあ、その場合一時的ではあれCEを載せる理由もなさそうだが)。
というわけでこれまた不発に終わったのだけれど、ここで新たな疑問。このB1のAPX-4砲塔の信号旗ハッチ、どうやらヒンジ位置が後方にありそうなのだ(ハッチ自体は取れているが)。ちなみにタミヤのB1bisのAPX-4砲塔のパーツは、ソミュア同様、ヒンジは前方にある。フランス、ムーメロンの現存車輌では前方にあるから、誤りではない。しかし改めて資料をひっくり返すと、ボーヴィントンの車輌は後方(後面ハッチの辺方向)にある。当時の写真でも、例えばNo.339/AISNEなどで確認できる。
なんだかますますこんがらかってきた。
●いずれD2用にAPX-1砲塔を作る時のための備忘録。
B1bisのAPX-4砲塔と、ソミュアS35のAPX 1 CE砲塔とでは、主砲と機銃の防盾は基本同じもののようだが、APX-1砲塔では機銃防盾の形状が違う(砲塔上面の傾斜が違うようなので、違っていてアタリマエなのかもしれないが)。
APX-1砲塔の機銃防盾のほうが上半の傾斜はもっと素直な感じで、照準孔が大きい。また、上辺が単純な円弧ではなく切り欠きがある。
主砲防盾はそもそも主砲がSA34かSA35かで違うのは当然なのだが、APX-1砲塔にSA35を載せている場合の防盾はどうなのかはよく判らない。単純に新型砲塔用の砲を防盾ごとくっつけている可能性もありそう。
(以下、4/29追記)
上で機銃防盾につき、APX-1用とAPX-4用/APX 1CE用とでは上部の形状が違うと書いているが、下部の形状もまるっきり違っていた(要するに全体的に違う)。APX-4用/APX 1CE用では下端も平らになっているが、APX-1用ではカマボコ形。
また、APX-1とAPX-4/APX 1CEとでは、キューポラ形状にも違いがある(キューポラくらいはそのまま使えるかと思った!)。APX-4用/APX 1CE用では上方に跳ね上げる形になっている側部のフラップだが、APX-1では、R35やH35用のAPX R砲塔の半球形キューポラに似た、田んぼマークのようなスライドシャッターが付いている。前後幅ももうちょっと詰まっている感じ。
砲塔全体形に関しても、前半上面の傾斜がきつい? ちょっと痩せた感じ?……などとボンヤリ思っていたわけだが、どうも上面の角度の切り替えはもっと前方にあり(つまり後半の水平部が広い)、キューポラがもう少し前にあるような気がしてきた。信号旗用小ハッチもAPX-4用/APX 1CE用のように「おおよそ3時半の方向」ではなく、「5時の方向」くらいにあるようだ。
タミヤのB1bisのパーツから作るのがよさそう、というのは変わらないにしても、その作業は結構しんどいものになりそうだ。うーん。MBのルノーD2、まともに作ろうとする時が来るかな……。
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コメント
タミヤのB1とS35では機銃防盾の形が微妙に違いますね。キットの問題か実車でもそうなのか未確認ですが。
投稿: hide | 2015年4月27日 (月) 11時01分
>hideさん
B1bis、ソミュアの現存車輌を見比べる限りでは、若干の個体差はあるものの、基本、機銃防盾は同じものではないかと思います。
タミヤのパーツで見ると、確かにB1bis用とソミュア用でちょっと違っているのですが、これはキット化の際の表現・解釈の差ではないかと。
ちなみに、防盾下辺は、平面形で見るとB1bis用は機銃と直角、ソミュア用はナナメになっていますが、これはソミュア用のパーツが正しく、B1bisも実車ではナナメになっています。
投稿: かば◎ | 2015年4月27日 (月) 13時32分
>表現・解釈の差ではないか
う~ん、しかし実測値としては極僅かな値でも面の接続部が凸なのか凹なのかってのは実車を計測してたらハッキリしそうなものですけどね~。実車が同じなら個人的には統一せざるを得ませぬ。
投稿: hide | 2015年4月27日 (月) 14時34分
>hideさん
>>面の接続部が凸なのか凹なのか
これに関しては、実は微妙なんですよねー。
タミヤのキットは、B1bisも、S35も、両方とも「2つの曲面が、一線で接続している」表現になっています。
しかも実車でも、B1bisはB1bisの、S35はS35の「キットのような感じに見えなくもない」感じ。
ただし、実際には一線できっちり切り替わっているというよりは、もっと曖昧なS字カーブで、「どこまでを上の面/下の面と捉えるかによって見え方が違ってきてしまう」レベルのものなのではと。
投稿: かば◎ | 2015年4月27日 (月) 16時23分
ああ!
ソミュアの砲塔奥深すぎです!
次作るときはもっとこちらの情報を反映させたいです。
ところで、この車両
http://www.chars-francais.net/2015/images/stories/galery/1935_somua_s35/s35%20n77%2001.jpg
はキューポラのリングが別部品のように見えて興味深いです。
投稿: みやまえ | 2015年4月27日 (月) 22時04分
>みやまえさん
そうなんです。
ただでさえ形状が掴みにくくて厄介な砲塔なのに、細部ディテールまで謎含みとは、もう……なんだかもう。
写真の車輌のリングはなんでしょうね。
キューポラ外縁のフチ?
それともキューポラと砲塔の間のギア部?
投稿: かば◎ | 2015年4月28日 (火) 02時47分
(管理人:URL消しました。詳細は下記)
APX-1CEの図面、ココに載ってました。
>上面の角度の切り替えはもっと前方にあり(つまり後半の水平部が広い)、
>キューポラがもう少し前にあるような気がしてきた
この図面でも、ソミュアのキューポラのほうがD2よりも前後に長く
位置も後方にあるようですね。
うーん上面前部の角度が違うのは、そのせいか。
投稿: めがーぬ | 2015年4月29日 (水) 10時51分
>めがーぬさん
おお。なんだかこの図面はそれっぽい……。ありがとうございます。
しかし!
めがーぬさんに貼っていただいたこの図面のURL、開いたらアンチウィルスソフトのアラームが鳴りましたよ!
ということで、どうも何かアヤシイので、めがーぬさんのコメントの直リンは消して、以下に「http://」を抜いて書いておきます。ページを開く人は自己責任でお願いします。
harrysite.net/hsrefs/index.php/armoured-vehicles/1936-SOMUA-S-35
前回URLを載せていただいたAPX-1と比べると、CEのいわゆる「1人半用砲塔」が後部で拡大されていることもよくわかる図ですね。
しかしそれでも、「装填助手(元無線手)」が砲塔内で作業するのはつらそう……。
キューポラの位置に関しては……。
少なくとも、信号旗小ハッチの位置が違うのは確かなようで、「-4」や「CE」だと、小ハッチは後面ハッチのある辺の右側にあるのですが、「-1」だと左側にあります。
どうも「-1」の信号旗ハッチは「-4」や「CE」よりもちょっと小さいような気もするのですが、それにしても、、「-4」のキューポラ位置だと、ここに信号旗ハッチがうまく収まらないんですよね。もうちょっとキューポラが前にあってくれないと。
うーん。それにしてもややこしすぎます。
投稿: かば◎ | 2015年4月29日 (水) 12時07分