ソミュア!(補遺)
●前回記事の若干の補足。
写真ではエレール(上)のほうが小さく写っているが、これはカメラが真上からではなく、手前から撮っているためで、実際はほぼ同一幅。
ただし(昨日は「起動輪と誘導輪、転輪は両社とも同サイズ」と書いたが、転輪はエレールがやや小径で、そのため転輪間隔がちょっと広い。転輪幅もタミヤのほうがわずかに広かった。
ディテールはタミヤのほうがずっと解像度が高いが、実際のところ、このへんは全部装甲カバーの陰に隠れてしまう。「あっそうか、隠れちゃうから、せっせとパーティングラインを消さなくてもいいんだ」とほっとする一方で、「こんなにキッチリ出来ているならカバーを外して見せる誘惑に駆られちゃうね」などと矛盾したことを考えたり。
ちなみにこの足周りはドイツが使ったPz.Kpfw.35(t)(チェコ・シュコダ社製のLT vz.35)と兄弟関係にある(設計者が同じ)。トリビア・ネタ。
●タミヤのキットは、エンジンルーム上のラジエーターグリルが枠ごと別部品になっているが、実車では、この枠部分は車体上部後半と一体。おそらく、側面ハッチ上のオーバーハングのために別部品になったのだと思うが、側面前端部分、車体となだらかに繋がっている部分の継ぎ目は綺麗に消す必要がある。
仮に枠部分はスライド金型で一体にし、グリルだけを別部品にすれば、設計時にパターンが全部同一であることに気付いてもらえたかも(くどい)。いや、しかしスライド型で価格が跳ね上がってもいやだしな……。
●(追記)タミヤのキットは後々のドイツ軍仕様とのパーツ共通化のため、何ヵ所かに部品取り付け穴を裏から加工するよう指定されている。後部アンテナポストもそうで、穴を開けてパーツP6,7を付けるよう指示されているが、実際には、無線機の生産が追いつかず、アンテナも付いていない車輌が多いようだ。
タミヤの塗装例でも、少なくともchar-francois.netの写真で見る限りでは、はっきりアンテナの所在が確認できるのは、塗装例A(M885号車)のみ。
なお、指揮車の場合は前後ともアンテナを備えている場合がある。例えばこの車輌(写真1、写真2)
この写真では前後同じくらいのアンテナが付いているように見えるが、明らかに前側のアンテナのほうが基部が大きく、アンテナ自体も太いものも確認できる。例えばこの車輌。後部のアンテナが標準で搭載される(はずだった)部隊内通信用、前部のアンテナが指揮車専用の部隊間通信用と思われる。
●ON THE MARKのエッチングパーツを改めて確認したところ、前照灯前面のメッシュは、タミヤのカバーパーツに比べ一回り小さく、そのまま使用は不能。ON THE MARKにはカバー本体も付いているのだが、薄さは別として、大きさと形状はタミヤのほうがよいようだ。
その他のパーツも形状に疑問があったり、少なくともタミヤのキットには必然性が薄かったりで、結局のところ、「いつかエレールのキットを成仏させようと思ったら(一部を)使おうか」レベルと判明。がっくし。
なお、エレール・SOMUA用のエッチングはEDUARDからも出ているのだが、こちらもパッと見、タミヤのキットには必然性が薄そうな……。
●資料サイトその1。実車解説と当時の写真……となれば当然ここ。記述はフランス語のみだが、解説は概観程度なので特に問題なし。キモは車輌番号順に整理された膨大な写真で、これだけで仕様変遷の研究材料になる。
ボイテ(ドイツ軍鹵獲仕様)の写真がそこそこ多いのは、
定番のbeutepanzerにはそれほど写真は多くないが3ページ。
●資料サイトその2。現存実車のwalkaround。
ソミュアS35は、本国フランスのソミュール(走行可能)、イギリスのボーヴィントン、アメリカのフォート・リー(アバディーンから移管)、ロシアのクビンカに現存していて、それぞれある程度まとまった枚数の写真がネットに上がっている。
ちなみに「Surviving French WW2 Tanks (PDF)」によれば、アメリカにある現存車は最初の60輌の初期生産型、クビンカの車輌はフィンランド(カレリア)で鹵獲されたドイツ軍PzAbt 211所属車(砲塔番号101)、鹵獲時点でツィムメリット・コーティングが施されていた由(つまり、上記beutepanzerの1ページ目一番下の写真の車輌)。
▼ソミュール(Saumur)
▼ボーヴィントン(Bovington)
militarymodels.co.nz(2枚だけアバディーン)
▼アバディーン(Aberdeen)
▼クビンカ(Kubinka)
●(追記)資料本については、すっかりww2フランスAFVの定番資料となったP.Danjou, “TRACKSTORY”のシリーズ第1冊目がSOMUA S35。また、同シリーズの姉妹編といえるwalkaround写真集、“FOCUS”のNo.2がSOMUA S35。掲載されているのはソミュールの実車。
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コメント
かば◎さん、ソミュアの記事ご苦労様です。
ソミュアってミニスケだとエレール1/72しか
出てないですが多分1/35と基本形は
同じだろうから1/35の解説も参考になりますね。
所でオペルマウルティアに炊事車を載せたタイプ、
ちょっと気になったのでネットで写真を
探してみたのですが探し方が下手なのか
戦中の写真は見つかりませんでした。。
もし写真のあるURLをご存知でしたら教えて
頂けますと幸いです♪。
http://roumanworld.jugem.jp/
投稿: コウ中村 | 2015年4月14日 (火) 22時12分
ソミュアのキットはかなり組みやすいので、あっという間に組み上がりそうなのを怠けてだらだらしていた甲斐がありました。ありがとうございます!ラジエターグリル枠が一体だとか言われてチェックして初めて気が付きました!すごい曲線と削り出しの構成ですねこの戦車は!
あと、ご紹介の写真ページ(ご紹介ありがとうございます!)ですが、「Prinz Eugen所属車」の最初の写真にはたまげました。
操縦手横のバイザーって開くのですね・・・
もしかしてこのタイプのバイザーってぜんぶ開くのですか・・・?もう付けちゃったからしらばっくれよっと・・・・
投稿: みやまえ | 2015年4月14日 (火) 22時27分
>中村さん
マウルティアにフィールドキッチンを乗せた例は、私も実車写真は見たことがありません。
ただ、フィールドキッチンは割としばしばトラックに搭載されて使われたようです。
現場で車輪付きのまま搭載したものも、また、適当なやっつけ仕事的な脚を付けて載せたものもあるようですが、どうも純正品の「車載用脚」もあったような感じで、私の作例はなんとなくそれらしく、純正品の脚っぽく作ってあります(正確な形状が判らなかったので、あくまで「適当に、それらしく」ですが)。
マウルティアではありませんが、各種トラックに各種フィールドキッチンを載せた写真は以下にあります。
http://militarymodels.co.nz/2012/04/23/photo-collection-german-field-kitchens-part-1-on-trucks/
これを見ると、焚き口を前向きにしたり、後ろ向きにしたり、載せ方も結構適当なようです。
投稿: かば◎ | 2015年4月14日 (火) 23時02分
>みやまえさん
私もみやまえさんの書き込みで改めてプリンツ・オイゲンの写真を見て、「ありゃ、本当に開いてるワ」と思いました(^^;)。
砲塔横は固定ですけれど、車体のこれは開くんですねえ。
もっとも、本家フランス軍の写真では、ここを開けている例はほとんどないようです。
フランス軍のソミュアの「無線手」は、基本、装填助手がメインの仕事なので(無線機を積んでいなかったりするので)、こんなところを開く用事がなかったのかもしれません。
投稿: かば◎ | 2015年4月14日 (火) 23時29分
一点忘れてました!
ウオークアラウンドですが、本家タミヤにもページあります!
http://www.tamiya.com/japan/products/35344/index2.htm
ご存知だったら申し訳ないです。
投稿: みやまえ | 2015年4月14日 (火) 23時47分
>砲塔横は固定ですけれど、車体のこれは開くんですねえ。
この部分だけですかね・・・みんな同じ形なんで気味が悪いですね・・・
投稿: みやまえ | 2015年4月14日 (火) 23時49分
>みやまえさん
知りませんでした!
タミヤもなかなか味なことをするもんですねえ。
上の記事にも付け加えておきたいと思います。
バイザーに関しては、少なくとも操縦席左側はまったく同形なので開きそうですね。写真では見たことがない気がしますが(パーツ不足で取り付けていない写真ならある)。
投稿: かば◎ | 2015年4月15日 (水) 00時20分
かば◎さん、コメント返信ありがとうございます。
確かに、普通のトラックに載せていた例は多いようなので
マウルティアに載せていても不思議はありませんね♪。
1/35だとIBGからアインハイツトラック+炊事器(車)の
キットとかも発売されているのですね。
ミニスケだと1/87の完成品(ロコみたいな奴)で
オペルマウルティア+炊事器(車)がドイツのメーカ(?)
から発売されているようなのですが▼
http://miniaturmodelle.net/index.php?route=product/category&path=67_29_53&page=4
日本では入手不能なようだし、1/72か1/76で炊事車の
キットが出たら作ってみたいアイテムではありますね♪。
投稿: コウ中村 | 2015年4月15日 (水) 22時25分
タミヤのソミュア。
初期ロットから今発売のキットは少し変わったみたいで。
新しいロットは後部のパーツ取り付けの開口指示が無くて
既に開口済みになってたりします。
しら~~っと、修正してるんですね(^-^)v
投稿: くにひこ | 2015年4月17日 (金) 10時50分
>中村さん
まさにマウルティア+キッチンの組み合わせで半完成キット(いや、全完成?)があるとは……。お。これは焚き口が前だ。
こういう組み合わせネタは、ミニスケールでこそいろ気軽にいろいろ出来て楽しそうなのですが、76~72ではフォールドキッチンのインジェクションはないんですね。
投稿: かば◎ | 2015年4月17日 (金) 12時19分
>くにひこさん
>>新しいロットは後部のパーツ取り付けの開口指示が無くて
既に開口済みになってたりします。
ええっ。そんな改修がされているんですか?
「ここ、ドリルを寝かさないとダメだし、開けづらいよ!」という声でもあったんでしょうか。
それにしても、車体下部は通常の一方向の金型で抜いていたはずで、横向きの穴を開けるためにわざわざスライド型に改修……?
そのうち模型店で見てみたいと思います。
投稿: かば◎ | 2015年4月17日 (金) 12時27分