ぼいて75mm(5)
●いつのまにやら、製作記も本命だったはずのマウルティアを追い抜いてしまった。
というわけで、イタレリベースで進めている75mm対戦車砲PaK97/38の下部砲架・脚部の工作あれこれ。
脚は初回に比較写真を載せたが、イタレリとドラゴンとで一見大差ないように見えるものの、細部ディテールの位置に細かいズレがある。イタレリのほうが実物に近い感じなのでそちらを使用したが、内側に結構大胆に押し出しピンの痕があり、その修正の手間が掛かる。
●駐鋤周辺。ほぼ左右対称に作られている脚だが、実際には、牽引具が付く左脚は駐鋤付け根が補強されていて、一段太くなっている。プラペーパーを巻いて表現した。
また、脚の内側にモールドされている連結具は、それぞれ脚から直角に出ていて、そのまま閉じると「へ」の字に角度が付いてしまう。基部も脚にガッチリとブロック状にくっついてモールドされているので、一度エッチングソーで切り離し、基部を工作し直した。ここも、右と左とで形状に差があり、左のほうが丈夫に出来ている。
駐鋤は、左側は牽引具が付くのであれこれディテールが加わっている。牽引具はイタレリのパーツを使ったが、形がイマイチで、そのまま付けると変に斜め上に角度が付く。多少いじって少なくとも角度は修正したが、形状まではきちんと直せなかった。
牽引具を駐鋤に止めているキャッスルナットは(ここだけ解像度が高いのもちょっと変だが)マスタークラブの0.7mm。先日、I号戦車の起動輪用に買ったもの。まあ、I号戦車を、今後、山ほど作ったりはしないだろうし。実際には上辺にもボルト/ナットがあるのだが、牽引具の形状を直しきれなかった影響もあって、付ける余地がなかった。
連結具上に付くクランプのパーツ、および折り畳み式の取っ手はドラゴンのパーツ。両者とも、イタレリのパーツもそう大差はないのだが、ほんのちょっと、ドラゴンのものがいい感じだった。
前側にある台形の突起は、取っ手を畳んだ時に留め金が噛み合うところ。厚みから考えて金属板が似つかわしいところだが、綺麗に切り出すのが面倒だったのでプラバンで。
外側には手すりが2ヶ所付くのだが、キットの指定(というか、取り付け穴)は、両方とも真横にある(イタレリもドラゴンも)。
しかし、キットではロッド(クリーニングロッド?)も真横に付くようになっていて、説明図ではさらりと図示してあるのだが、そのままではもろに干渉してしまうはず。
実際には、中央部の手すりは斜め上向きについており、ロッドは外側の若干下に付くのが正しい。また、キットではロッドが右に1本、左に2本付くようになっているが、これは50mmPaK38の場合で、PaK97/38では両側1本ずつが正しいようだ。また、ロッドの止め具の形状も、PaK38とPaK97/38とでは違いがあるようだ。PaK97/38では、後ろ側は単純なカップ状の受け、前側がクランプになっている。なお、キットは前側の留め具位置が若干後ろ過ぎているようだったので修正した。
作例では、手すりの位置を修正するとともに、パーツ自体、若干細めのドラゴンのものを使用。ロッドはコントレールの丸棒から。
脚上面には、人力移動用補助車輪のホルダーが付く。可倒式のツメ部分は、ドラゴンの脚のモールドを削り取って来て加工。倒れた状態にした。後ろ側の固定のツメには三角の補強板が付く。また、前後のツメの内側には、出っ張った押し出しピン跡のような丸い突起がある。これは車輪のゴム部分が当たるところで、この突起を付けることで、ホイールリムの立ち上がり部分が脚に直接当たって塗料が剥げたりしないようにしているらしい。
ツメの位置自体にちょっとズレがあるせいでもあるのだが、作例のこの丸突起の位置は正しくなく、実際には、前側の可倒式のツメにほとんど隠れてしまうくらい、もっとツメ寄りにある。
右側脚の内側には、トラベルクランプが付く。イタレリのパーツを使用。前面2ヶ所の白いツメが、揺架後端の穴にはまって固定するらしい。パーツでは単純なリベットのようなモールドだったので、プラ材で修正。また、後面に小さな十字ハンドル、上面に小リベットを追加。
●脚前端部と下部砲架。ロッドのクランプは、プラパイプとプラ材とプラペーパーで何となくそれらしくごにょごにょと。
下部砲架は、ウルサイことを言い出すとだいぶあちこち形状が違うのだが、上部砲架や防盾にそこそこ隠れるので、手を入れるのは最小限とした。サスの後端部分を削ってドラゴンのパーツに交換。また、射撃時にサスにロックをかけている状態にモールドされているロック機構に若干のディテールを彫り込んだり盛ったり。
さらに、脚は開状態で固定し、脚と、サスロック機構との間のチェーンを、縒って潰した銅線で追加した。ただし、実際の射撃時には、このチェーンのどちらかの端はこの場所ではなく、ロック機構をロックする穴に挿し替えている可能性がある。
●車輪は、ドイツの対戦車砲のソリッドゴムタイヤではお馴染み、2本の溝で分割されたトレッド・パターン。キットのパーツは中央が盛り上がったモールドでお茶を濁している。
帯状のプラバンを貼って表現するか、溝を彫り込むかしばし悩んだが、結局彫り込むことにして、写真のような簡易工具を作った。
当初、彫る刃はハセガワ・トライツールのエッチングソーを使おうかと思ったが、ちょっと薄過ぎる感じだったので、ペンナイフの刃の背中側に変更。土台にニットー76のIII号戦車の車体を使っているのは特に意味はなく、平らで、車輪の軸部がクリアできる穴が開いていればOK。単にたまたま部品取りで余ったパーツがすぐそこにあったため。
あとは、プラ材で適当な間隔を開けて瞬着で刃をがっちり接着、車輪をセットしてグルグル回すと所定位置に溝が彫れる。
●脚周りはこれで終了。あとは難関の防盾。
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コメント
タイヤ溝堀ジグ、大変参考になりました!
いつかこの大砲とかPak38とか作るときはぜひ真似させてくださいね!
つーか、何年前だったか溝掘りで挫折した記憶が蘇りました・・・
投稿: みやまえ | 2015年2月 2日 (月) 00時40分
>みやまえさん
溝彫りの方法に関しては当初、「帯を貼る」方向で考えていたのですが、結果的には、こちらのほうがずっと楽でした。
車輪はあまり強く刃に押し当てず、軽く少しずつ彫っていくとよいようです。
投稿: かば◎ | 2015年2月 2日 (月) 11時22分
イタレリとドラゴンで結構、差があるんですね。またPaK38とPaK97/38の下半分も全く同じというわけではないんですね。いろいろ勉強になりました。
投稿: nyamalfetta | 2015年2月 3日 (火) 15時59分
>nyamalfettaさん
そうですね。
初回に大きな部品だけ比較しましたが、もう、一番基本になる砲身のプロポーションから大きく違います。
ドラゴンは設計陣によってキットの出来に大きく差があるメーカーだと思いますが、PaK97/38に関して言うと、実物が多数残っているにも関わらず、たぶん、採寸も何にもせず、ただそれらしく作っときゃいいや、みたいな感じでキット化されている印象です。
まあ、イタレリもちゃんと取材しているのかというと、ちょっとアヤシイ感じもしますけれど。
投稿: かば◎ | 2015年2月 5日 (木) 18時02分