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チャイニーズ・ドラゴン

●……などと書くと、まず第一に「アチョー」の方、あるいはモデラーなら模型メーカーを思い浮かべるのが普通なのだろうが、ここで話題にしたいのは、「drag-gun(大砲を引っ張る)」転じてDragonになった、ビッカース社製のトラクターのほう。概略はwikipediaを。

このビッカース・ドラゴン、本国イギリスでは牽引車を装輪式に統一する方針が出たので早々にお払い箱になったが(そのくせ、後にキャリアで6ポンド砲を引っ張っていたりするわけだが)、海外では、ベルギーで軽ドラゴンがT-13自走砲に化けたり、タイではポンポン砲搭載の中ドラゴンを輸入したりと、大戦中も地味ながらあちこちで使われている。

ネット上で大戦中の中国軍車輌を検索している中にも、時々、このドラゴンが出てくる。

中国軍が装備した車輌・砲の虎の巻、滕昕雲編著、軍事文粹刊の「抗時期 機械化/装甲部隊歴畫史」とか「抗時期陸軍武器裝備」には載っていないので不思議に思っていたのだが、どうやらこれは、広東軍閥が南京政府とは別に輸入したものであるらしい。

写真はたとえばコレ(元ページ)。

軽ドラゴン(Light Dragon)の一種で、ベルギーのT-13B1およびB2自走砲のベース車体になったのと同じタイプ。足周りはビッカース水陸両用戦車とほぼ同形なのだが、履帯はI号戦車のものの原型となったワイドピッチ・タイプを履いている。

そうか、ビッカース水陸両用戦車が発売されたから、このタイプの軽ドラゴンやT-13自走砲のスクラッチビルドは、ちょっとハードルが低くなったのか……。履帯はI号戦車のものが使えるとして、起動輪はI号戦車の歯の部分だけ移植ってできるのかな……。(←妄想するだけならタダ)

ちなみにサス形状は微妙に違うので、本当にハードルは「ちょっと」低くなっただけ。

●ところで、これが引いている砲がまた見慣れない変な砲である。何だか、1番目の写真で見ると、後ろが暴走族の竹ヤリみたいになっているし。

やはりビッカース社製の75mm高射砲だそうな。高射砲らしく、十字型の砲架(脚)を持って要るのだが、前方2本は野砲/対戦車砲の開脚砲架のように畳み、後方は途中で折り畳んだ上で上方に引き上げて固定するらしい。なかなか珍しい方式。

軽ドラゴンとセットで広東軍が輸入装備したものらしく、これも「抗時期陸軍武器裝備 ―歩兵砲/防空砲兵篇―」に載っていない。……中国軍装備、奥深し。というより、魑魅魍魎の世界?

●1月4日。娘らが秋葉原に行くと言うので付き合う。以前にも触れたように、極度の公共交通機関音痴。方向音痴のため、ガイドに動員された格好。

キャラクターグッズの店をあっちこっち行き、ドネルケバブを食べる。イエローサブマリンで、マスタークラブのキャッスルナットと、しばらく前から探していた、むーさんの「J-Tank」第18号が再入荷していたので買う。

キャッスルナットは0.7mmで、尾藤満氏がI号戦車の起動輪に使っていたもの(Panzer Memorandum参照)。YSでも「I号戦車の起動輪に」とタグを付けて売られていた。もっとも、尾藤氏も書いているように、0.7mmは強調気味な感じ。0.6mmでよかったかも。

たまたまニュースで、神田明神限定のガシャポン(海洋堂製)を取り上げていたので、初詣ついでにそれをやりに行こう、などと思っていたのだが、ホビーロビー他、秋葉原各所に点々と置いてあった。有り難味なし! 大黒様が出た。

●「J-Tank」は扉に「日本戦車愛好家ノ外閲覧ヲ禁ズ」と書かれていて、さて、そうなると私が読んでいいのかどうか、ちょっと微妙なところ(嫌いではないが特に好きではない)。

ただしこの18号は、鹵獲戦車・車輌が多数展示された、昭和14年1月戦車大博覧会の記事が載っているので欲しかったもの。

記事はむーさん著で、基本は、博覧会の経緯、内容の紹介。写真の質は鮮明で大判のものは少なく、昔の出版物からのコピーはあまり鮮明でなく車輌ごとの枚数も少ない。それでも、I号戦車やSd.Kfz.221がそれぞれ複数写っていたり、なかなか珍しい車輌もあって興味深い。

実はこれにも、鹵獲品のビッカース軽ドラゴンの写真が1枚掲載されている。

中国軍ほか、日本軍とは逆側からの興味で見ると、なかなか興味深い点、謎な点もある。

▼まず、鹵獲車輌に関して言えば、「どこ戦線でどのような経緯で鹵獲したか」が明確ではない。そのため、ソ連製車輌に関しては、中国戦線での鹵獲品か、ノモンハンでの鹵獲品かが、実際にははっきりしない。ただし、3輌のT-26については中国軍からの鹵獲品、「ソ連製装甲自動車」として展示されたFAI装甲車(記事ではBA-20としている)は中国が受け取った形跡は他資料に見られず、ノモンハンでの鹵獲品の可能性が高いのではないかと思う。

▼中独合作で輸入したと考えられるが、他資料に出ていない車種がある。10ページに出ているクルップ・プロッツェがそうだが、時期的にはタミヤが出しているL2H143ではなく、その前のタイプであるL2H43(1933年から1936年にかけて生産)である可能性も高そう。

▼隣の「ヂーゼル車」は特徴的なフェンダー形状から見てベンツLo2000~Lo3000。「抗時期 機械化/装甲部隊歴畫史」にもLo2750が出ているが、「写真から判断してLo2750」レベルなので、どの車種を何輌といった詳細は判らない。どうやらラジエーターに星章を付けているようなので、鹵獲後、日本陸軍がしばらく使っていたものらしい。

▼3輌のT-26は、すべて砲塔側面に青天白日マークが書き込まれているが、これはオリジナルな塗装なのだろうか。今までのところ、中国軍が装備している状態での写真では、すべて戦闘室側面後部、車台前後面に書かれていて、砲塔に書かれた例は、他に見たことがない。不思議。プロッツェに書かれた青天白日も怪しい気がする。

▼一方で、カーデンロイド豆戦車Mk.VI(p.6)の前面に書かれた「B 77」はおそらくオリジナルのマーキング。カーデンロイド豆戦車で最初に編成された教導第一師戦車隊時代から、どうやら後々部隊が再編されてもこの車種にはずっと使われていたマーキングのようで、アルファベットは3つの分隊を示し(A、B、C)、数字は車番。もっとも、18輌しかないはずのカーデンロイドMk.VIなのに、この番号は3桁のものも確認でき、どういう基準になっているのかよくわからない。

▼展示車輌配置図(p4)中、鹵獲品のほうで「英ストラウスラー装甲自動車」とされている2輌は、記事にもあるようにドイツ製のSd.Kfz.221。一方で参考品のなかの「英ストラウスラー装甲自動車」は正しくストラウスラー(p8に写真あり)。ハンガリー人技術者、ニコラス・ストラウスラー(シュトラウスレル・ミクローシュ)の設計したもので、ハンガリー軍チャバ装甲車の兄貴分。これを装備したオランダ東インド軍と戦うのは数年先の話なので、これはその通り参考品として入手したものなのだろう。

▼11ページ右下の見慣れない装甲車は、抗時期 機械化/装甲部隊歴畫史 1929-45 中國戰區之部」のp.11上に出ているのと、おそらく同一車種。既存のトラックをベースに装甲車体を被せたもののようだが、詳細は不明。

●ここまで来たらついでに中国ネタをもう1つ。

中国軍が装備した戦車のなかでも極度にレア物と思われるのが、ルノーZB軽戦車である。そもそもあれこれの資料でも触れられていることは少なく、最初にweb上で写真を見た時には、「これって中国軍じゃなくて、仏印軍なんじゃないの?」とも疑ってしまったほど。

基本的には、中国軍が使用しているZBとされる写真はこれ1枚しかないようで、どこのサイトでもこれを使い回している。よくみると、車台前面右下に、うっすらと青天白日が見える。左側は「30」はいいとして、頭の文字or図形は何なのだろう。「田」ではないだろうし。

一見すると、フランス本国でも使われたAMR35によく似ているのだが、転輪が4つしかないAMR35に比べ、こちらは5つある(ルノーR35やAMC35と同様の配置)。しかし、サス形状はAMC35(ACG1)に非常によく似ているものの、履帯幅はAMC35より狭く、AMR35と同一のように見える(起動輪、誘導輪も)。つまり、AMR35とAMC35のちょうど中間くらいの感じ(ちなみにソミュールにあるAMC35は履帯と誘導輪がまったく別の車種のものなので注意)。

そもそも輸入状況も使用状況もなんだかよく判らないのだが、某中国のサイトに記述があって、その機械翻訳から読み取ったところによると、30年代半ば以降、雲南軍が独自に輸入したもので、後に中央軍に引き継がれ、第200師に配属されてビルマ方面で使われた由。記述のある元サイトはここだが、本命のページの上にやたらに広告窓がかぶさるので、開く人は覚悟すること。

また、wikpedia英語版のAMR35の項では、「1936年3月、中央政府が12輌、その数カ月後に雲南政府が4輌発注、後者は1938年10月に届いたが、前者は1940年になるまで届かなかった」というようなことが書いてある(私の読解が正しいのかどうかも若干問題だが)。これに従えば、中央政府輸入分も一応は届いていることになる。

●当ブログへのコメントおよびBBSで、L1E1(TWong)さんから教えて頂いたネタ。

CAMsのビッカースの足回りパーツに入っている空冷ブローニング機銃は、オランダ東インド軍装備車輌のもので、後期型発売の布石であるらしい。BBSで後期型パーツも紹介していただいた。ひゃっほー。

手持ちのパーツもよく見直すと、砲塔天井・ハッチパーツの枝に、薄く継ぎ目がある。おっと。金型差し替えをするなら枝の隅っこのような気になって見落としていた。

●mixiでハラT青木氏から教えてもらったネタ。

アカデミーからT-34-85が発売されるそうで、しかもそれが112工場製で、大戦末期に登場したタイプ。Zaloga氏言うところの、「Composite turret」型(実際には、砲塔前半と後半がちぐはぐに“見える”だけで、ツギハギにしているわけではない)。

Hobbyeasyにパーツ写真も上がっていて、発売間近。個別パーツではスパイダーウェブ転輪が写っていて不安になるが(112工場製車輌では、純正の状態では見られない)、素組例写真では正しくディッシュ転輪になっている。

前部角型フェンダーのヒンジとか、起動輪の形状とか、んんん?と思うところもないわけではないが、少なくとも昔のマケットよりはずっとよいだろうし、最近ドラゴンがドイツ軍鹵獲仕様で出した「112工場製の85」はトンデモな製品だったので、これはちょっと面白い。

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コメント

How can we contact you?
We wish to send you a free sample on the up coming KNIL kit (in Feb/Mar) to compensate the poor quality suspension you found.

投稿: Twong | 2015年1月26日 (月) 18時03分

Thank you Mr.TWong!

You can send me e-mail via my BBS(「河馬之巣」掲示板 -- KABA's BBS).

Please access my BBS and click e-mail icon next to my handle name in my new post.

Or please write your e-mail adress here, in second box below the name box.
(Your mail adress isn't exhibited on the web page.)

And I will send you my adress.

投稿: かば◎ | 2015年1月27日 (火) 14時25分

noted

投稿: Twong | 2015年1月28日 (水) 11時57分

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