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ぼいて75mm

●唐突だが、イタレリとドラゴンの1:35、75mm対戦車砲PaK97/38の比較検討。

週末模型親父さんの「イタレリ作せり」コンのおかわりネタに選択したため。しかし完成品が数年に1作ペース(それでも以前より回復基調)の私が数ヶ月で2作も出来るのか?

●社名だけ併記すると、ドラゴン製キットのほうが新しいような気がしてしまうが、ドラゴンのPaK97/38は2000年リリース、イタレリのものは2007年リリース(たぶん)で、イタレリのほうがだいぶ新しい。

にもかかわらず、モールドの切れ等々で、「こちらのほうが新しい!」と思える部分はなく、イタレリの凋落ぶりを示しているようでちょっと寂しい。

古きよき時代のイタレリからそのまま技術進化すると、ブロンコのようなメーカーになるんじゃないかと思ったがなあ……。

●それはそれとして。

実物は、wikipediaにもそこそこ詳しく出ているが、世界で初めて液気圧式駐退復座機を搭載したフランス製野砲、75mmM1897を、鹵獲したドイツでごにょごにょした対戦車砲。5cm対戦車砲PaK38の開脚式砲架に載せ、多孔式マズルブレーキを装着している。

新鋭の75mmPaK40が揃う前のピンチヒッターだが、PaK40登場後も二線級部隊に回されて使われたほか、ルーマニア、フィンランドなどにも供与された。そんな経緯から、フィンランドにはそこそこの数が残っていて、展示されている砲も複数あるようだ。

なお、元になった75mmM1897は、時折誤ってシュナイダー製とされることがあり、昔のTOMのキット名称もそうなっていた(そのため、私も以前は「シュナイダーの75mm野砲」などと言っていた)が、実際にはシュナイダーとは無関係。後に出てきたまったく別設計のM1912やM1914などがシュナイダー製で、それと混同されているだけである由。

97f1017318●ドラゴン、イタレリのキットの仕様の差として目に付くのは、主車輪の形式が違うこと。写真は左からドラゴン、イタレリ、イタレリの人力移動用補助車輪。補助車輪のみ、ドラゴンの主車輪と同一タイプの車輪が入っている。

ちなみに、人力移動用補助車輪は、陣地内での移動等の際に、閉じた脚の先に装着するもの。ドラゴンのキットは私の持っている初版には補助車輪が入っていないが、その後出たPremuim Editionには入っているようだ。

主車輪の2タイプは、どちらも砲架の流用元である50mmPaK38で使われているもので、生産時期の差(あるいは下請工場の差)ではないかと思われるが、当方、資料不足でよくわからない。PaK97/38でも両方使用例が確認できる。

もともとドラゴンのキットを持っていて、そちらをストレートに作ろうと思っていた私が改めてイタレリを買ったそもそものきっかけがこの車輪で、フィンランドが使ったPaK97/38が、写真で確認できる限りすべてイタレリがパーツ化した穴開きタイプだったため。

もっとも、フィンランド軍のPaK38でドラゴンと同タイプの車輪のものもあるので、フィンランドのPaK97/38でもそちらのタイプが絶対になかった、とは言い切れない。

パーツの再現度としてはどっこいどっこいで、トレッド部の2本の溝は、ドラゴン、イタレリともに単純な段差表現で誤魔化している。ドラゴンのパーツは、ゴムリム部にダメージ表現あり。ただし側面が若干ヒケていた。イタレリのパーツは、ゴムリム根元の、ホイールディスク部の縁表現がない。

なお、ドラゴンの車輪とイタレリの車輪ではゴムリムの厚みも違っており、ドラゴンは約2.5mm、イタレリは約3mm。ただし、現存品の写真を比べると、両タイプで実際にゴムリムの厚みが違うようにも見える(パッと見の印象なのでなお検討の要あり)。ただし、イタレリは主車輪も補助車輪も同じ厚み。

97barrel01●単なる仕様の差ではない、決定的な両キットの差は砲身。ご覧のように長さが大きく違う。

実物はどうなのかだが、wikipediaで見る限りでは、元のM1897野砲の砲身長が2700mm、PaK97/38の砲身長が2722mmと書いてある。

もともと同一の砲身だし、PaK97/38の数字がマズルブレーキ込みとは考えにくいから(さすがにマズルブレーキ長が2.2cmということはあるまい)、少なくともどちらかは間違いなのだと思うが、とりあえず、1:35での誤差は0.5mm程度しかないので、この際深くは追求しないことにする。

計算結果は、1:35で77~78mmというところだが、イタレリの砲身長(A'+B+'C')は77.5mmで、ほぼ合致する。

ドラゴンはマズルブレーキ付け根で74mm、マズルブレーキ先端までで81mm。いずれにしても上記数字とは合わない。

砲身全体の長さと共に大きく違うのが、砲身の段差ごとの長さの比率で、イタレリはおおよそ3等分に近いのに対し、ドラゴンは中間部分(B)が極端に短く、根元(A)が長い。

97barrel02ほぼ横から取った実物写真と見比べると、イタレリのプロポーションのほうが近い。ただし、マズルブレーキは、イタレリのものはやや大きめのようだ。

ちなみに、両キット以前に出たTOM modelbau/RPMのM1897野砲のキットはかなりプリミティブな出来だが、砲身長およびに段差間のバランスは、ほぼイタレリのキットに等しい。

97f1017320_2 ●上記砲身の長さと関係しているが、揺架はドラゴンのものが短く、各部のプロポーションも若干違う。

モールドに関してはどっちもどっちな感じ。

97leg_2 ●脚に関しては、わずかにイタレリが長いものの、それほど目立った差はない。

最も顕著な差は、架台に接続する軸の角度が違っていることだが、これが最終的にスタイルにどれだけ影響するかは、若干組み進めてみないとよく判らない。もしかしたら、架台に対する車軸位置が両者で違っていて、それと関係して脚の角度が違うなんてこともあり得るかもしれない(思いつきでテキトーなことを言っています)。

中途に立ち上がっているツメは、人力移動用補助車輪の収納用ホルダー。両社でツメの高さが違うのは、前述の車輪の厚みの違いが影響しているものらしい。

ただし、穴無し車輪(実際には小さな穴が5つあるが)のほうは穴開き車輪より実際に薄い可能性があり、このホルダーは薄い穴無し車輪にしか対応していない可能性がある(現存砲のディテール写真でもそれほど高く見えないので)。なお、両社とも立ててモールドしてあるが、実際はこのツメは折り畳める。

参考までに、実物写真での補助車輪装着状態はこちら。また、脚を閉じて補助車輪をホルダーに留めた状態がこちら。後者の写真は、主車輪が穴開き、補助車輪が穴無しのイタレリと同じ組み合わせで、この写真でも、穴無しのゴムリムのほうが薄いように見える。

なお、イタレリの脚は、内側に数箇所の押し出しピン痕が窪んでいて、埋める必要がある。

97shield_2●防盾は、パッと見、似て見えるが、並べて比較すると明らかに形状に差がある。

縦幅に差があるだけでなく、大きな違いは、上辺が、真横から見た際にイタレリは前面からほぼ直角であるのに対し、ドラゴンは上方に切れ上がっていること。

また、照準窓の大きさ、砲身が通る開口部形状にも違いがある。

まず全体に関して。寸法的には、市川方面某氏がハメーンリンナの砲兵博物館でメジャーを当てて測ってきてくれていないかな、などと無茶な期待を抱きつつも、とにかく現状では判断材料がなく何とも言えない。ただし、先の実物写真などからプロポーションを見る限り、ドラゴンのほうが近い感じがする。少なくとも、上辺に関しては、前面に直角でなく切れ上がっているほうが正しいようだ。

照準窓に関しては、イタレリは明らかに大き過ぎ。しかしドラゴンでもまだ大きい感じ。ドラゴンの場合、内側の辺はちょうど側部のカーブが始まったあたりにあるが、実物はもっと外側にある。

砲身用のスリットは、特に上部の形状が違うが、ドラゴンのものが尖った形になっているのは、50mm対戦車砲PaK38用のパーツを改修せずに流用したためではと思う。PaK97/38では砲身が太いので、この形状だとスリットの頂点まで仰角を掛けられない。

●そんなこんなで、実際に製作する場合には、イタレリをベースに、細かいパーツはその都度比較して、使えそうなものをドラゴンから流用するプチ贅沢をしようなどと構想(妄想)中。

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コメント

毎度参考になります。
この大砲は閉鎖機が素敵ですね。
イタレリのモールド色は懐かしいというか、たしかPak40もこの色でしたね。

投稿: みやまえ | 2014年12月 9日 (火) 00時21分

>みやまえさん

そういえば、イタレリは昔からこの濃いグレーのプラを時々使ってますね。昔買った38(t)もこれだったような。

……っていうか、パンツァーグラウのつもりなのか。

M1897の閉鎖機に関しては、みやまえさんは絶対にお好きだろうと思いました(笑)。

螺旋式でもなければ、タテヨコの鎖栓式でもない、言ってみれば、一発だけのリボルバーみたいな構造ですよね。

いやいや、こんな凝ったことをするなら、単にそのまま横にスライドさせればいいんじゃないの?

ってことで、廃れてしまったんだと思いますが(いや、そもそもこの砲のほかに、この方式が使われているものはあるんだろうか)。

投稿: かば◎ | 2014年12月 9日 (火) 04時04分

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