隼号、発進(11)
●忙しさにかまけて更新できずにいるうちに、週末模型親父さんのところのネット上模型コンペ、「SUMICON2014」の締切日(10月31日)が来てしまった。
隼号――ソクウ(ARMO JADAR-MODEL 1:35, Sokół 1000/CWS M111)は一応は完成していて、締切前日に撮った写真では、このような感じ。とりあえず、題名を裏切らず“発進”できてよかった……。
●というわけで、少々巻き戻って、前回(9月29日付)以来の製作記を。
まずは基本塗装後のサイドカー。椅子とカバー付き予備タイヤは、タミヤウェザリングマスターで若干のメリハリを付けてから取り付け(付けた後では塗りづらくなるため)。この後、スプリングは黒く塗り分けた。
このキットでは、サイドカーの車輪にブレーキドラム(ブレーキディスク?)と中途半端な形状のリンクアームは付くのだが、本体のブレーキペダルから後輪に伸びるロッドから連結している機構は省略されている。
リンク機構の基部だけはサイドカーのフレームにモールドがあるのだが、これは若干向きがおかしい。
とりあえず、その基部は一度切断して向きを変え、フレームの中を貫通しているらしい、サイドカーブレーキ用のロッドの一部は取り付けたが、結局、本体側ロッドとの連結部、車輪側のアームその他は略した。
形状がいまいちよく掴めなかったためと、実車とキットでの微妙な位置関係のズレなどもあるが、本音を言えば、サイドカーを本体に付けた後でスキマをごちょごちょ工作するややこしさを思ってめげた。
●ある程度オートバイの形になって以後の工作の山場になるのが、コード&パイプ類。
適当な太さの伸ばしランナーをしごいて柔らかくし、エンジンに取り付け。後々の塗装の手間を省くため、そのままの色で誤魔化しが効くものをと、グレーのランナーと黒のランナーを使った(ちなみにグレーのランナーはすぐ手元にあったRODENのVOMAG88のもの、黒のランナーは、「何か黒のプラのキットがあったっけ?」としばらく探し回った結果見つけた、エレールのヨーロッパミヤマクワガタから。なんでこんなキット買ったんだオレ……)。
エンジン前部に繋がっている、若干太めのグレーのものは、タンク前方下部に繋がる(たぶん)オイル用チューブ。黒い細いものは電気コードで、2本はエンジンのプラグに繋がるのだが、真ん中の1本はどこに繋がっているのか不明。結局、燃料タンク下部のスキマに滑り込ませて「行き先不明」にさせてもらった。
実際にはこの他にもコードはあるのだが、「どことどこが繋がっている」を追求しだすとややこしいので省略。
なお、キットの説明図のコード図示は非常に怪しく(そもそも燃料タンクに繋がるものしか書いていないが)、このあたりは実車写真とにらめっこで工作した。
燃料タンク下面には、タンク左右で燃料が偏らないようにするため(?)のU字チューブが付く。燃料タンク部品にピンバイスで穴を開けて、U字に曲げたランナーを差し込めるようにしたのだが……。
実際には、このU字の間を本体フレームが通るので、タンクを本体に取り付けてから、改めて、エンジンとタンクの狭い隙間にピンセットでこのU字部品を入れて、その足をタンクの穴に差し込まなければいけない。取り落としたり、片方の足が入ったのにもう片方が入らなかったり、そちらが入ったと思ったらもう片方が抜けたり、本格的に“ワジワジする”作業。
●エンジンへのパイプ、コード類の取り付けが済んだところで、排気管を取り付ける。
この排気管パーツ、そのまま付けようとすると、エンジンとの間にだいぶ大きなスキマが空く。位置にも微妙なズレがある。
そんなわけで、またまたケトルの湯気に当てて形状(方向)修正。そうすると、付け根2本の間が狭まってくるので、フットステップとフレームの間に滑り込ませて位置を確認するのが、次第に知恵の輪状態になってくる。その後の付け根の延長工作と合わせて、入らないとか外せないとか、何度かあれこれやっている間に、右フットステップがポロリと取れてしまった。当然ながら取れたままにして、排気管取り付け後に再接着。
ボケているうえにコントラストが弱いので確認しづらいが、排気管付け根の延長工作は写真のような感じ。微妙にくさび型に、プラバンで延長して削ってある。
●燃料タンクの取り付け後、燃料タンク下部のフィルターと思しき小部品(それともただのバルブ?)から気化器へ、燃料パイプも作って付ける。
レストアされた実車ではつなぎ方が適当なものもあるのだが、おそらくこれが標準なのではと思われる、金属パイプで途中に一周、くるりとループが入る形状にした。0.3mm真鍮線で工作。
また、右側面では、排気管の取り付け後、ブレーキペダルから後輪へのロッドも取り付けた。
この部分、キットではなぜかブレーキペダルからではなく、バッテリー下あたりのフレームに「くの字」形のリンクアームを付け、そこから後輪へロッドを連結させるという、実車にはない謎ディテールになっている。
後輪ブレーキディスクに付く「つの字」型のアームは、キットのエッチングパーツでは形状もちょっとおかしい上に小さすぎる。エッチングパーツの“余白”部分を使い(もっと具体的には、CWSのロゴマーク部分の余白の円弧を活用)、キット部品より大きい「つの字」を製作。付け根部分だけ、キット部品を切り取って移植した。
なお、このブレーキロッドは、途中でクランク状に曲がっている。当初、これはフレームを避けるために後半で外側に出ていると思っていて、右写真でもそんな風に付いているのだが、実際には、どうも排気管を避けているようで、前半が外側、後半が内側になっている。あとから実車写真をみていて気付いて、あわてて付け直す羽目になった(しかも外れて欲しくない場合はポリロポロリとよく外れるくせに、こんな時に限ってしっかり瞬着が効いていて、外すのに苦労した)。
なお、キットには、後輪歯車に接続するような格好で、ごく小さな歯車とその基部がエッチングパーツで用意されている。これはレストア実車ではあったりなかったりするパーツなのだが、基部形状の再現がいまいちで、追加工作が面倒くさくなったので付けていない。しかしよく考えると、どうたらこれはスピードメーターの歯車のようだ。メーターの表示部は付けておいて歯車を付けていないのはいただけないが、さすがにサイドカーも付けてしまってから追加は難しい。
●その後、シフトレバーを取り付け。どうもキットのまま、漫然とパーツを取り付けると、シフトレバーがエンジンに対して外側にありすぎ、変速機との間のロッドが前方に向けて斜めに張り出すような格好になってしまう。
キットのあれこれの位置関係がずれているのかしらん、しかしこれはどうしようもないな、などと思いながら接着したのだが、ついさっき、再び実車写真を見ていたら、アームの上部がタンク側面に沿って外側に曲がっていて、アームの支点と下部は、ずっとエンジン側に引っ込んでいるのだった。もっと写真をよく見ておくんだった。
そんなシフトレバー取り付けを済ませ、前述のブレーキロッドの向きを直した状態がこの写真。なんだか新たに付けたエッチングが未塗装のほうが、色味が綺麗だ。
ところで(実際にはもう少し後になってから気付いたのだが)、一つ前のブロックの写真と、このブロックの写真のあいだで、前照灯の尾端に付いていたキーのパーツが外れてどこかに行ってしまっている。付ける時には、オイオイ、こんな小さなパーツ勘弁してくれよ、と思ったが、それだけにせっかく付けたパーツがなくなってしまったのはショック。停車してキーは抜いてあるという設定にして、再生はせず。
●その後、前輪ブレーキやスロットルなど、フロントフォーク周りのコード類を工作。
ちなみに、ハンドル前方左右に小さな三角形の突起があり、スロットルのコードはここから出ているのだが、左右からコードが出ているにも関わらず、気化器に繋がっているコードは1本で、しかも、左右どちらがそれなのかよく判らない。ええと、結局私は左右どっちのコードを繋いだんだっけな。例によって、もう片方は燃料タンクのスキマへ……。
なお、前述の「ハンドルにあるコード引き込み部の三角の突起」は、キットのモールドでは実車に対してだいぶ外側寄りにずれているのだが、面倒なので直さなかった。
以後、サイドカーを接着してしまうと、オートバイ本体の右側面が見づらくなってしまうため、ここで真側面からの写真を撮っておいた。
若干の細部工作について、続きをもう一回書く予定。
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コメント
完成おめでとうございます!
色艶といい細かさと言い素晴らしい仕上がりですね!
メカ的な考証も興味深く、とても勉強になりました!
続きを楽しみにします!
投稿: みやまえ | 2014年11月 3日 (月) 22時28分
完成おめでとうございます。
いやしかし、大方の予想(恐らく)に反し、よもや完成するとはっ!
私なぞ「間に合わなかった時に、ここにどうコメントするか」をつらつら考えていたのに、梯子を外された気分ですよ!
私の記憶によれば、かば◎さんがこのキットを買ったのは2004年の5月頃なので、実に10年掛かりですね。
Web上にも完成品画像がほとんど無いキットなので、今後、貴重な完成作例になりますね。
投稿: セータ☆ | 2014年11月 4日 (火) 01時00分
ヨーロッパミヤマクワガタハァハァ。(そこかぁ
投稿: donji | 2014年11月 4日 (火) 06時37分
>みやまえさん
有難うございます。
あっちこっちつまみ食いしているので、なかなか完成まで漕ぎ着けることがなく、これも、2年前の72のマチルダ以来?
いやまあ、一時、10年近く完成品がなかったと思うので、それに比べればマシなのかもしれませんが。
>セータ☆さん
むはははは。
いやまあ、コンペの掲示板でも「やればできる人やったんや!」と言われましたが(めがーぬさんに)、
逆に、普段は「やらんで、できん人」だというのをつくづく自覚した次第です。
実際、このキットはweb上で検索しても、メーカーの作例以外に完成品が出てきません(途中で諦めたのかもしれない、ポーランド人モデラーの製作途中写真はある)。
その点、「貴重な作例」なのは確かだと思うんですが……結局は「まあ、誰も作らんわな」というか何というか。
それにしても……なんで私がこのキットを買った時期まで判るんですか(笑)。
私自身では、その時期は旧河馬之巣を放置して、当かばぶも開設前だったので、記録がなくて確かめられません。
>donjiさん
いやー。これがねー。
似てないんですよ。
確かに本物も日本のミヤマクワガタとは多少スタイルが違うんですが、
キットは、なんつーか、根本的に「ちょっとクワガタの体型じゃないんじゃない?」っていうか、
「ディズニーがアニメでクワガタを描いたらこんな感じ?」みたいな。
投稿: かば◎ | 2014年11月 4日 (火) 14時42分
完成おめでとうございます。
製作開始時にコメントさせて頂いた「通りすがりのスミコンファン」こと、me20と申します。静岡のランナーズという模型サークルに所属しております。スミコン掲示板は流れが速いので、こちらにお邪魔させて頂きました。
自分のブログで確認しましたら、私がこのSokół 1000を購入したのは、2005年の6月でした。パーツはサイドカーとタイヤ以外は小動物の骨にしか見えず、ふにゃふにゃなPART製のPEはスポークとチェーン以外小さすぎて全く何だか判らず、げんなりしたのを覚えてます。ガレージキットの場合、それはメーカー側の愛情が溢れまくっている証であるわけですが。
かば◎さんの製作記を毎回拝見して、それが想像以上の難物であったことが判りました。絶対に、私には作れません。メーカーの愛情に正面から答え、恐らく現在世界で一番正確に再現されているであろう1/35ソクウの完成品を得られたかば◎さんに心からの拍手を送らせて頂きたいと思います。
…えー、拍手だけではナンですので、私のソクウのキットを差上げます。もう一台作りたくなったら、いつでもお申し付け下さい。
投稿: me20 | 2014年11月 4日 (火) 17時18分
>>このキットを買った時期まで
いや、購入時に何処かの掲示板とかに書かれてたんじゃないかなぁ。2004年の5月に他の人と遣り取りしたメールに「かば◎さんの買ったARMOの何たらバイクに…」みたいな記述があったんです(^^;)。内容は「ミニCDが付いてくるみたいだけど、アダプターが無いからウチじゃ再生出来ないなぁ」みたいな話で。
投稿: セータ☆ | 2014年11月 4日 (火) 20時54分
>me20さん
どうもありがとうございます。
なんと。「通りすがりのスミコンファン」さんは、me20さんだったのですね。
これまでにもいくつかの掲示板でお会いしていますよね。……どこだろう。週末模型親父さんのところ? セータ☆さんのところ? 尾藤さんのpanzer memorandumでもお名前を拝見しているような。
以前は欠かさず静岡ホビーショーの合同展にも行っていたので、そうと知らずお話ししたこともあったかもしれません。
me20さんのブログも、コメントを書いたことはないと思うのですが、時々拝見しています。
私が作れたものが、me20さんに作れないなんてことはありえないと思うのですが、
「そんなに面倒なのはヤダ!」ということなら……まあ、ある程度納得できるかも。
>>もう一台作りたくなったら、
い、いや、それは勘弁してつかあさい(笑)。
今回の製作で多々反省はあるのですが、逆に、「なんとかなったけど、これを2度やれと言われたらイヤかも」という部分もちらほらとあるので……。
い、いや、いいキットでしたよ? ホントに。げほげほ。
>セータ☆さん
うひー。そんなところに証拠が残っていたとは。
人間、悪いことはできないもんですなあ。いや。別に悪いことしたわけじゃないけれど。
もっとも、いつ買ったか覚えていないキットばかりのなかで、珍しくそれを特定できたのはちょっと嬉しいかも。特定できたからって何もないですけれど。
投稿: かば◎ | 2014年11月 5日 (水) 02時06分
>やればできる人やったんや!
無礼極まりない発言、申し訳ありません・・・
(とりあえず笑いをとろうとする大阪人気質)
かば◎さんの工作力が高いのは知っていましたが
今回は、製作ペースの速さに感心しましたワ。
投稿: めがーぬ | 2014年11月 5日 (水) 12時57分
>めがーぬさん
いやいや、無礼なんてとんでもない。
有り難くお褒めの言葉として頂戴しております。
そもそも本当に滅多に完成しない(させられない)し。
投稿: かば◎ | 2014年11月 5日 (水) 17時53分
遅ればせながら、完成おめでとうございます!!
細部工作が素敵すぎます。
メカむきだしのバイクモデルならではですね。
実物を拝見したいものです。
投稿: マクタロウ | 2014年11月 8日 (土) 22時58分
ありがとうございます>マクタロウさん
なにしろ「全編細部工作」みたいな感じでしたので、
老眼が付いて行かずに大変でした。
うー。静岡になー。持っていければなー。
投稿: かば◎ | 2014年11月 9日 (日) 13時40分