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RODEN 1:72 8.8cm Flak搭載 VOMAG 7 OR 660

F1015746●土曜日に秋葉原に行った折に買った、RODENのミニスケール新キットのレビュー。

とにかく車種の個性が強すぎて、これまでも「VOMAGの88積んだやつ」とか「88積んだVOMAGのデカいの」とかしか呼んで来なかったので、制式名称がよく判らないのだが、とりあえずキット名称では

Selbsttahrlafette auf Fahrgestell VOMAG 7 or 660 mit 8.8cm Flak

ということになっている。Selbsttahrlafette auf Fahrgestellは自走車台とか自走砲車台とか、まあそんなような意味だったと思うので、和訳すると、

8.8cm対空砲搭載 VOMAG 7 OR 660 自走砲

ということになるかと思う。「VOMAG 7 OR 660」はメーカー名と車台形式名で、VOMAGは「Vogtländische Maschinenfabrik AG(フォークトラント機械製作所株式会社)」の略であるそうな。ハノマーク(ハノーファー機械工業株式会社:Hannoversche Maschinenbau AG)とかと同系の略称。次の7は、どうやら7トンクラスのペイロードを持つということらしい。その後はよーわからん。

1940年に発注、1941年に製作され、全車が第42対空連隊の第1大隊に配属されて大戦終盤まで使われたらしい。ドイツ軍ソフトスキンのお助け/お役立ちサイト、「Kfz. der Wehrmacht」には、生産台数は21~24輌とある。

ちなみに「フォーマク」と読んだら青木氏に笑われた。確かに「ハノマーク」「デマーク」と読むなら「フォマーク」と読むのが自然だ。

なお、あちこち見ると、「VOMAG 88Flak ヴァッフェントレーガー(Waffenträger)」なんて書き方をしているところもある。

この車輌を知ったのは、昔々のヴァッフェン・レビューでの数回の連載が最初で(今となっては掘り出すのも面倒)、そのインパクトの強さにそれ以来気になっていた。以前は、エアプレス(シュミット)の1:35バキュームフォーム・キットを持っていたこともある(いや、今も探せばどこかに残骸があるはず)。

●相変わらず箱絵は無闇に格好いい。

中身もこれくらいビシッとしてりゃあなあ、というのが正直な感想で……いやもう、それで言い尽くしてしまっているような気もするのだけれど、折角なのでもう少し。

F1015745 箱を開けると、中身はご覧のような感じ。

確かに箱は72にしては大きく、タミヤの1:35 II号戦車程度あるのだが、ドンガラが大きいだけでなく、精密さが表に出るソフトスキン、しかもむき出しの自走砲という三位一体なので、実際には箱を開けるまで、そこそこギッシリとパーツが詰まっているのではと想像していた。ちょっと拍子抜け。

プラパーツの枝は(ろくでもない写真ばかりで申し訳ないが)、

F1015744 F1015743 F1015731

  • シャーシ関係(Bパーツ):写真1枚目右
  • 上部車体(Cパーツ):写真1枚目左
  • 足回り(Gパーツ)と備品(Eバーツ):写真2枚目/枝が連結、各2枚
  • 88mm砲(Aパーツ):写真3枚目

という構成。

ディテールは、車体関係主要パーツではおおよそシャープだが、ダルな部分も多い。また、細かな押し出しピン痕が各所にあり、ところによってはそれがパーツ表面にあるので、目立つところは直したい。部品の合わせも、場所によっては削り合わせが必要になる。仮組みは必須といえそう。

プラの質は柔らかめで、私の買ったキットの場合、シャーシフレーム、車体後部上面板などが若干反っていた。ただし、指でグニグニと反対側に曲げ癖を付けるようにしたら直った。

後述するが、説明書での組立図示が曖昧な部分がある。

総じて、「好きなら止めないけれど、手放しで『いいキットだ!』とは言えない」レベル。

ところでRODENは今問題のウクライナの企業なのだが、企業HPを見ても、ウクライナのどこにあるのかよく判らない。しかしこうして新製品が滞りなく出るところをみると、(クリミアからキエフに移転した)Miniartほどの苦労はしなくて済んでいるようだ。

▼上部車体

F1015738F1015739 この車輌の特徴で魅力でもあるのが、フロントグリルに入ったメーカーロゴだが、それはこんな感じ。

ここまで拡大すると、ちょっとエッジのダルさが見えてしまうが、実際の大きさからすれば、メリハリも効いていて充分な出来ではないかと思う。

ボンネットサイドのルーバーもなかなかシャープで好感が持てる。

側面の乗降ドア、後部サイドの弾薬庫ドアはボディとはツライチではなく段差表現。実車は、遠目にはツライチのように見えるが、実際には僅かに段があるようだ。後面ドアはなぜか筋彫りのツライチ表現。実車はどうだかよくわからないが、側面と別の仕上げになっていることはないのでは……。いずれにせよ、そう目立つものでもない。

F1015734 なお、前方キャビンの乗降ドアは、内側のモールドのせいで下部に軽くヒケが出ていた。

もうちょっと問題は、後部ボディの各面パーツの継ぎ方。パーツは側・後面パーツに上面パーツかかぶさる形式になっていて、そのため側・後面に継ぎ目が出る。実車はここに目立った継ぎ目はないので消したいが、問題は継ぎ目が側面・後面の弾薬庫扉に近接していること。これは消しづらい。また、実車では扉の上辺は、もっと面の上端に接近している。キットで言えば、上面板の厚み分くらい間が開きすぎな感じ。

高射砲の載る中央デッキは、なんとなく梨地になっているだけで、滑り止めパターンやパネルラインのようなものはなし。もっともこのへんは資料も(少なくとも私のもとには)ない。

F1015732 デッキ左右は、ドイツの対空自走砲お得意の外側に開いて操作スペースを拡大するスノコ。

ここ最近の趨勢からすれば、エッチングパーツがセットされていても何の不思議もないところで、実際、私もちょっと箱の中を探してしまったのだが、実はエッチングは無し。代わりに硬質のナイロンメッシュが入っている。ただしメッシュの目はちょっと粗過ぎで、もう少し細かいメッシュもしくはエッチングメッシュに変えたい気がする。

(順番が行ったり来たりだが)キャビンは、各種レバーのほか、クラッチ、ブレーキペダルが別部品。少なくともペダルに関しては、なんだか頑なに床に申し訳程度のモールドを付けるだけのことが多いタミヤ35よりマシ(笑)。1つだけ形が違うからか、アクセルベダルは床にモールド。

フロントウィンドウは、透明シートに輪郭が印刷されたパーツが入っていて、それを切り出して枠に貼るシステム……というのはいいとして、そのウィンドウ枠自体が、片面はペッタンコ、もう片面はエッジがダルダル。ワイパーもワイパー用モーターのモールドもない。

▼シャーシ

F1015724 72といってもモノが怪物級なだけに、シャーシ長は15cmを超える。……と思ったら、最後部の1枠分は切り詰めるよう、説明書に指示があった。

こんな特殊な車輌にバリエーションキットの計画が?

測距管制機器搭載の随伴車なら、88搭載車とまったく同じ車体だから、わざわざ長いシャーシが必要になるわけがない。さらにあれこれ調べてみたら、こんな車輌があるのが判った。自走砲と同じ VOMAG 7 OR 660 の Omnibus。Kfz. der Wehrmachtによれば、50両以上(つまり自走砲の倍以上)生産されているらしい。

今までの傾向で見ても、RODENは妙に“オムニバス好き”なところがあるので、たぶんこれだと思う。

閑話休題。

シャーシはエンジンも付き、エンジンはそれなりに細部部品も付く(それにしてもエンジンが大きく、第一次大戦機程度はある)。もっともボンネットを開け放って整備中、みたいなことにでもしない限り見せ場はない。

シャーシ周りは上部車体に比べ細かい部品が多いということもあるが、部品のシャープネスも合いもいまいち。例えばタイヤは内外2分割だが、設計のミスか、そのままでは中心にスキマが開いてしまう。部品内側中央部のでっぱりが干渉しているようなので削り込み、また外周のはめ合わせも内側のベロを低くして、ようやく合った。

デフケース部品4G-9Gも、そのまま付けると中心がずれる。

また、シャーシフレームの横材24Bは、説明書では取り付け穴の場所に付けるよう図示されているが、この取り付け穴はリーフスプリングのもの。実際には、24Bは、STEP 12, 13の絵にあるように、フレームの出っ張りに合わせて付けるようになっている。

シャーシを組み始めたばかりでこの有様なので、この後もあれこれトラップがありそう。要注意。

フェンダーのプレスのリブは、前方でカスレ気味、後方はリブどころかフィンになりかけくらい立ち上がっている。

なんだか全体的に、“推敲していない文章”みたいな感じ。設計して、金型を彫って、まるでチェックしなかったということはないだろうが、おざなりに済ませたのではと思わせる。

▼88mmFlak

残された写真を見ても、搭載されたハチハチの砲身は2ピース型なのだが、Kfz. der Wehrmachtには、この車輌の英名を「VOMAG 7 OR 660 with 8.8cm Flak 18 (Sf.)」と書いている。

18型じゃなくて36型なのでは、と思ったのだが、キットの説明書の解説を見ると、「36型の砲身を付けた18型を搭載」と書いてあった。なるほど!

というのはいいとしてキットに戻ると、先に載せた写真にあるように、88mm砲1門を小ぶりなランナー1枠で済ませているのはちょっと寂しい。んー。でも砲架(架台)もトレーラーもなければ、72ならこんなものなのか。

F1015730 それよりも気になるのは、車体関係の他の枠に比べてモールドのダルさがアップしている感じであること。例えば閉鎖機部分を見ても、表現はだいぶお粗末なうえ、エッジも出ていない。しかもヒケ付き。ううう。

平衡器は大胆な部品設計で、2本まとめて砲架前面と一体パーツ。ランナーの面から垂直に2本突き出ている分割で、おかげで、箱の中で余計な力が掛かって部品がよじれていた。

砲身は、特に先端部がどうも太すぎる気がする。

ランナーの端、砲身の隣は、ちょうど砲身のひと枠と同じだけ開いており、どうも別形式の(例えば18型の)砲身が入るような感じ。将来的に、88mmFlak18、もしくはそれを搭載する何か別の自走砲を発売する計画がありそう。

デカールと塗装

実車が配属された第42対空連隊(あるいはその第1大隊)のマーク、白・黄・赤の3色と(中隊で色違いか?)、車輌番号のナンバープレート2種。番号は「WL-19574」と、「WL-19492」。実車がそうなので当然だが、極めてシンプル。

塗装指定は3種で、戦争中盤までのパンツァーグラウのもの2種と、終戦間際の「光と影」迷彩のもの。

ちなみに、下記サイトにも、終戦時に破壊・放棄されたと思しきこの車輌の写真があるのだが、それに写っている車輌のサイドは、単純にゲルプ地にブラウン、グリュンの小さいブチを散らしてあるようにしか見えない。

●資料写真に関しては、例えば以下。

Photo Collection – 8.8 cm Flak(Sfl) auf VOMAG LKW

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コメント

>ヴァッフェン・アルゼナルでの数回の連載

そのウチ一冊は私も持ってます。たしか随分前に池袋の西山洋書で買ったような。で、トロイカの8.8cmFlakを分冊でまとめたもののvol.2にこのVOMAGの1/35図がババーンと折込で載っています。当然写真から推定しておこしたものでしょうが、このローデンのキットも案外その辺を下敷きにしているのかもしれませんね。

投稿: hide | 2014年7月29日 (火) 20時38分

↑自分でもこうコメントしておいてアレなんですけど、正確にはヴァッフェン・レヴュー?連載っていう位だから多分そうですよね(私のはそうです)。

投稿: hide | 2014年7月30日 (水) 09時07分

>hideさん

ああっ。そうです。
ヴァッフェン・アルゼナルはPODZUN-PALLAS-VERLAGですね。本文、直しておきます。

とはいっても、元の資料を発掘できず、確認できないでいるのですが。

投稿: かば◎ | 2014年7月30日 (水) 10時16分

おもしろい車輌ですね!好みです(笑)。
実戦参加してるんでしょうか…?

投稿: TFマンリーコ | 2014年8月17日 (日) 23時13分

>TFマンリーコさん

してます。
そんなに数多く作られた車輌ではなく(上記のように20輌そこそこ)、また、あくまでも拠点対空防衛用の車輌なので、前線で敵と面と向かってドンパチということはないのですが、国内から外地まで、結構あっちこっち移動して使われているようです。

投稿: かば◎ | 2014年8月18日 (月) 00時55分

バウマンのHPには↓のように説明されていますね

>使用目的が都市の防空に変更され20両が製作されました。
>1944年には油田を防衛するためにハンガリー方面に送られ
>その地でソ連軍により全車が破壊されました。

投稿: めがーぬ | 2014年8月18日 (月) 01時42分

>使用目的が都市の防空に変更され20両が製作されました。
>1944年には油田を防衛するためにハンガリー方面に送られ
>その地でソ連軍により全車が破壊されました。

これは何だか話をはしょっている気がします。

1944年にルーマニアに送られ(これがおそらく油田防衛のため)、そこでソ連軍の侵攻に遭って部隊は半壊、残存車輌は1945年にハンガリーへ行ってそこで全滅、ということらしいです。

投稿: かば◎ | 2014年8月18日 (月) 13時52分

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