はぐれ海軍標石
●仕事が途切れてぽっかり穴が開いてしまったのをいいことに(よくないけれど)、近所の史跡「名越切通」について激しく調べる。
名越切通は、旧都鎌倉を囲む山に設けられた出入り口の代表的なもの、いわゆる「鎌倉七口」のひとつで、鎌倉と逗子の間の山越えの道。オバケが出ると有名な小坪トンネル(名越隧道群)のほぼ直上にある(そもそもそのトンネルを通る県道311号鎌倉葉山線が名越切通路に代わる新道なので至近を通っているのは当たり前なのだが)。
ふだん散歩で歩いて通っているでも、いろいろ読むとそれなりに有り難味が出てきたりなんぞして楽しい。なかでも逗子市教育委員会の数年前の発掘調査書は詳しい。
「鎌倉七口のなかでも最も中世の切通しの雰囲気をよく残している」といわれる名越切通だが、「雰囲気」はそうでも、実際の路の高さは新たに掘られたり埋まったりして近世までにだいぶ上下し、さらには道筋の位置まで変わっている可能性があることなども、この調査書でわかる。
なお、上写真は逗子市の報告書で言うところの「第三切通」、鎌倉側から石段が組まれたきつい傾斜を上がりきったところで、写真右手は大切り岸方面への分岐路。左右に、切通の防衛に関係しているといわれてきた平場がある。
切通路本道は、真ん中に巨大な岩が転がっていて、これもまた「簡単に通らせないようにするためのものだ」と説明しているサイトなどが多いのだが、私は単に崩落してきただけのものではないかと疑っている。
●折り良く、名越切通の中途にある「まんだら堂やぐら群」が2ヶ月ちょっとぶりで臨時公開中(3月中の金土日祝。以前は休日のみだったが、金曜日が増えたらしい)。3月中に鎌倉行楽を企画している人はどうぞ。
土日に早速行こうかと思ったが、天気がぐずついていたのでヤメ。もともと水の溜まりやすい山道で、天気が悪いとたちまちぐちゃぐちゃになるため。
●以前にも取り上げていると思うのだが、名越切通を越えて鎌倉大町(名越地区)に降りると、坂を下りてすぐの小公園に河津桜があり、毎春見事に咲く。
今はまだ三分咲き程度(3月3日時点)。メジロが花をつついていた。
●名越坂の途中、鎌倉ビールの醸造所の近くに製麺所があり、小売もしてくれて、ラーメンが美味い……という噂はだいぶ前に聞いていて、以前探したことがあるのだけれど、まったくそれらしいところが見つからなかった。
だいぶ鎌倉駅寄り、名越のローソンの近くにも製麺所があるので、たぶんそこの間違いなのだろうということで納得していたのだけれど、つい先日、やはり名越坂途中に製麺所があるのを地図上で見つけた。
改めて地図の場所に行ってみると――これまで全然判らなかったのも当然で、看板も何も出ていない。ようやく、建物の脇奥に麺を入れる平たい木箱があって確認できた。恐る恐るブザーを鳴らして訊ねると、噂通り小売もしているということなので、試しに4食分の生麺と、袋入りのスープ(醤油ととんこつ)を買う。一食分150円ちょっと。
まずは醤油を食べてみた。スープはいかにも昔ながらのラーメンという感じ。生麺が主役なのに評価を書かないのは「ああ、生麺だなあ」という以上に何か言うほど舌が肥えていないため(もちろん麺がでろでろだったりした場合は別)。
●ラーメンといえば。
神保町の事務所、N社のC社長から緊急同報メールが送られてきたのだが、神保町3丁目の小さな中華料理屋、「猿之丞」が3月20日で閉店だそうだ。
近辺は割と中華料理およびラーメンの激戦区なのだが、そんななかで、ここの料理は全然派手さはないにもかかわらず、たまに無性に食いたくなる魅力がある。以前にも書いた気がするが、個人的なオススメは塩ラーメン。
とにかく最近のこってり・ごってりなラーメンとは正反対で、具も基本的なものだけ、スープは金色に透き通っていて、「うわあ、沁みるなあ、癒されるなあ」という味がする。半分ほど食べてから備え付けの豆板醤を入れてちょっとピリ辛にして2度楽しむのもいい。しっかり出汁が効いていて、スープを飲み干すと干し海老が数匹。
チャーハンやゴマだれつけ麺もよい。
20日までにお近くに用事のある方はぜひ。場所は専大前交差点を九段下方向に渡った左側、靖国通りの一本裏の小路。集英社神保町3丁目ビルの脇。食べログの店舗データはこちら。
●鎌倉・逗子を貫く「すいどうみち」と、その水道の元の持ち主である海軍の標石については以前に書いた。
鎌倉の海岸橋交差点から名越隧道まで、トンネル群をくぐって小坪隧道から逗子駅東の田越川を渡る橋までの区間の海軍標石については、すでにすべてチェックし終えたと思っていたのだが、名越隧道の鎌倉側出口近くに、今まで見落としていた海軍標石がもうひとつあることに気付いた。
写真では彫られた文字のコントラストが弱くて申し訳ないが、拡大すればダブル・ダブル・シェブロンと、「海」の文字が判るはず。
それにしてもこの標石は、変な位置にある。
海岸橋方面から長勝寺前まで来た水道路は県道311号鎌倉葉山線と合流し、一緒に名越坂を上っていく。そんなわけで、名越坂には点々と(主にトンネルに向かって左側に)海軍標石が並んでいる。
しかしトンネルの手前で水道は左に逸れ(というよりも水道はほぼ真っ直ぐで県道が右に逸れるのだが)、水道と県道下り線、県道上り線がそれぞれ専用のトンネルに入る。
左写真でいうと左の青い柵の向こうに水道路が分かれて(現在は企業の駐車場として使われている)、先ほどの記事冒頭の写真のトンネルになる。にもかかわらず、この標石は、水道路が分かれたあとの道路のほう、左側の煉瓦ポータルのすぐ手前(道路左側)に立っているのである。ちなみに煉瓦ポータルのほうのトンネルと道路は、水道以前からある。
水道用トンネルを掘るにあたって、路肩から左はきっちり買収した、という印だろうか? いずれにせよ見落としていたのも仕方がない謎な位置で、標石探しに大いに助けて頂いたこのサイトでも、この標石は出ていない。
●また、上記の一般的なコンクリート製海軍標石と違い、みかげ石(花崗岩)製の「海軍用地」と書かれた標石についても以前の記事で取り上げた。標石自体はこちら。
これは坂の途中、(トンネルに向かって)右側の小さな町工場の前にあるのだが、数日前に通りかかったら、まったく同じ標石がもう一本、引き抜かれた状態ですぐ近くに転がっていた。
てっぺんまで泥だらけなので、もしかしたらこれまでは全部土の中に埋まっていたのかも。
●本日の無駄知識。
ピーマンやししとうは、(狭義の)トウガラシやタカノツメと生物学的には同種(Capsicum annuum)なのだそうだ。パプリカも同種。……というか、単に乾燥したトウガラシをタカノツメというのかと思ったら、「日本における代表的なトウガラシの栽培品種」なのだそうだ。知らなかったよ吉田くん!
ついでに掘り下げると、沖縄の島トウガラシはキダチトウガラシ(C. frutescens )という別種なのだそうで、タバスコペパーや、タイのトウガラシであるプリッキーヌーがこの種の中の品種。
さらに「暴君ハバネロ」のハバネロやジョロキアは、これまた別種でC. chinenseという種だそうな。顔ぶれからすると、このキネンセ種がいちばん辛そう。
ところで、wikipediaによれば、ししとうは、「最近は品種改良により、辛い商品が市場に出ることはほとんど無い」のだそうだ。なんてこった! ししとうは、あの「いつアタリが出るか」というハラハラ感があるからこそよいのに!
●順番がめちゃくちゃだが、先月末に材木座の砂浜で拾った貝。フリルだらけのゴスなヤツ(おまけにフジツボだらけ)。
どうも「チリボタン」という貝らしいのだけれど、ネット上の写真にだいぶ揺れがあって、いまいち確証なし。
ちなみに今は机の上に置いてあるのだが、完全に乾いたら、持ち上げた拍子にフジツボの中からサラサラ砂が出てきて膝が砂だらけに。
●雑多な話で長くなったので、模型関連は次回。
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コメント
千葉産のちっさい安いししとう買ったら半分以上あたりでしたよ・・・
投稿: みやまえ | 2014年3月14日 (金) 23時23分
うちのかみさんに言ったら、「1パックに1本はアタリがあるんじゃない?」と言っていたので、実は「辛い商品が市場に出ることはほとんど無い」というのは言いすぎだろう、というオチに近付きつつあったところです。
が、半分はアタリっていうのはアタリ過ぎなんじゃ……(笑)。個人的にはむしろ歓迎ですが。
投稿: かば◎ | 2014年3月15日 (土) 20時42分