« 2013年8月 | トップページ | 2013年10月 »

2013年9月

電気ブラン

●26日、午前中、仕事で浅草(田原町)に行く。

珍しく朝の通勤時間帯に出掛けることになってしまうが、たまたま、自宅近くのバス停から新橋駅までずっと、隣のご主人、T氏と一緒だった。

T氏はJAMSTECにこの人ありと知られた、しんかい2000時代からの深海探査艇のベテラン・オペレーターで、しばらく前に出たしんかい6500のキットの話をしたり、深海探査艇の最新事情の話を聞いたり。

現在、しんかい6500を含む有人深海探査艇のフロントランナーは、チタン合金製の耐圧球を採用している。しかし、しんかい200クラスの鋼鉄球に比べれば、飛躍的な性能向上をもたらしたチタン合金製耐圧球だが、現在のレベルを超える深度を目指すには素材的に限界が来ているのだそうだ。

中国の7000m超の記録を作った新鋭艇もチタン合金製の耐圧球だが、これは深度記録を作るためにあれこれ無理をしている由。というわけで、「それ以上」を目指すにはブレイクスルーが必要で、例えばガラス製、セラミック製の耐圧球も考えられるとのこと。

実際にそうした試みもあって、アメリカの民間企業が現在、ガラスの耐圧球を持つ10000m級の深海探査艇を作っているとのこと。

Triton 36000/3 というのがその探査艇で、36000が目指す深度を示す(36000フィート=10972m)。サイトを見ると、もともと浅い海底用にもガラス球のコクピットを持つ潜水艇を作っているメーカーのようなので、「チタンを超えるにはガラスだ」というよりは、元からガラスにこだわっているだけのような気もしないでもないけれど、実際、ガラスが強度の高い素材であることは確かだそうな。

浅い海用の潜水艇では、ガラス球に常識的なハッチを取り付けているが、36000/3では耐圧能力を向上させるため、球に余計な穴などは設けず、球を半割りにして乗り込み、ぴったり合わせる形式になっているらしい。外部機器の操作用にも、耐圧球を貫くケーブルなどは用いず、光通信でコクピット内と外を連絡するのだそうだ。聞けば、「なるほど、アイデアだなあ」とは思うが、「それで大丈夫なのか」という気もしないでもないような。

他にも深度10000メートルを目指す試みとして、ヴァージン・グループのリチャード・ブランソンも深海探査艇を作っている。これもサイトがあって形状を見ることができるが、まるで巡航ミサイルのよう。ちなみにこちらもどうやらガラスの耐圧球を使用している。飛行機のようなキャノピーがあるが、これは耐圧球ではなく、そのの外側に被せた透明のフェアリング。

チタン合金製よりもさらにガラス製は軽量で、耐圧球そのものが浮力を持つことができるため、シンタクティック・フォーム(浮力材)は少なくて済み、そのぶん、全体のコンパクト化が可能だそうだ。もちろん、これまでのように小さな覗き窓ではなく、ほぼ360度の視界を得られるのは大きなメリット。

もっとも上記2種の10000m級は、大深度に到達するのがメインテーマで、単に潜るだけでなく探査活動にあたる機器としては、やはりガラス球は不安を覚える、とのこと。十分使えるとなれば(本来の意味での)探査艇に採用される日も来るかもしれないが、そんな場合、耐圧球そのものを頻繁に交換する――支援船に予備のガラス球が並んでいる、などという運用法になる可能性も?

なお、日本が世界に先駆けて6500を作った理由は、地震国として、プレートの運動を探るために海溝の深部に潜る必要性を感じていたからだが、日本海溝の最深部は8000mを超える。というわけで、しんかい6500を超える性能の探査艇へのニーズはあるらしい。一応、そのための研究費は出ているのだそうだ。

F1016357●田原町近くの小学校門内の井戸。凝った形状のポンプが面白い。

●午前中のその仕事は早めに終わったので、仲見世方面に歩く。雷門は修復中だった。

昼前のまだ混まない時間に昼食。前日にサイトを見て、ちょっと気になった「コルマ」というカレー屋で、看板メニューの「コルマカレー」。日本人が始めた本格派インドカレーの店のハシリとして、「デリー」という有名な店が都内に何店舗かあるが、この「コルマ」は、そのデリー出身のご主人が独立して始めたらしい。メニューもデリーとだいぶ重なっている(ただし私はデリーにはまだ行ったことがない)。

コルマカレーももともとデリーの名物メニューで、タマネギをしっかり炒めて煮込んだとろとろの濃褐色のルーに鶏肉。食べて一口目はそれほど辛いと思わないのに、後からじわじわ辛くなる。

客がまだ私一人しかいなかったからか、食べ終わった後にご主人が

「カレー、お好きなんですか?」と話しかけてくる。

「マニアというほどじゃないんですが、まあ、毎食カレーでも大丈夫というくらいは好きです」

「カレー部があったら入っちゃうくらいですか?」

なんだかお互い判ったような判らないような会話。

F1016354●ついでに、「今まで飲んだことがなかったなあ」と思い、「電気ブラン・オールド(40度)」のハーフサイズのボトルを買う。

「電気ブラン」は、浅草の有名な老舗「神谷バー」で、創業者が明治に開発したブランデーベースのカクテル。アニメも放送中の、森見登美彦の「有頂天家族」にも、「偽電気ブラン」なる飲み物が登場する。

自宅で週末に少し飲む。思ったほどベタ甘ではないが、まあ、なんというか微妙な味ではある。不味くはないけれど。ちょっと飲み過ぎるとすぐに悪酔いしそうな感じ。しかし、神谷バーでのお勧めの飲み方は、ストレートの場合はビールをチェイサーにするのだそうだ。……いや、それはちょっと。

F1016372●29日日曜日。鬱屈してきたのでちょっと散歩に出る。脱走と言ってもよし。

鎌倉と逗子の間の山にある住宅地、ハイランドの中の西友に寄ったら、「スピットファイア」なる名前のエールを売っていた。

メインのラベルは特に飛行機っぽくはないが、首のラベルにはスピットファイアのシルエットが入り、「The BOTTLE of BRITAIN」と書いてある。ダジャレかよ~。王冠はRAFのラウンデル。

●ほとんどhideさんへの私信。

F1016464散歩の途中、例のイノコヅチの虫こぶがたくさん見られる草むらで、やたら立派なシロモノを見つけたので写真に収めてきたのだが、帰ってよく見ると、小さな穴が2つ3つ。

前回書き込みで、イノコヅチクキマルズイフシ(イノコヅチウロコタマバエ)は「年2~3化」であると教わって、トラップを仕掛けるよう勧められたのだが、もう実際、羽化が始まっていたらしい。とはいっても適当な網はないし、そう頻繁に見にも行けないし……。

適当な水槽か何かあれば、刈り取ってきて水に挿して、水槽の中に入れて観察するというのができそうだが、以前あった水槽も処分してしまった。残念。冬に枯れたら刈ってビニール袋にでも入れて、春先の羽化を待ってみようか。

| | コメント (5) | トラックバック (0)

ご無沙汰

●とりあえず生きてます。

書くのを怠け始めると、なかなか書くきっかけを掴みにくくなってしまうもので、1ヶ月以上間が空いてしまった。

とにかく8月中旬までのクソ暑さは耐え難く、呼吸をしているだけでも精一杯という感じで、それもあって「ブログどころではなく、模型どころではない(ついでに仕事どころでもない)」状態になっていたのだが、1ヶ月過ぎるうちにすっかり涼しくなり、もう晩には肌寒いまでになってしまった。

先週だったか、明け方近くの夜空を見たら、すでにオリオン座がほとんど南中していた。――今日は秋分の日。

●ブログをサボった(サボっている)一因。

神保町の事務所通いの季節労働が、仕事の発注元の都合で遅れに遅れ、本来、7月には本格稼動しているはずが、今年はまるまる2ヶ月遅れ、今月になってようやくスタート。

それでいて終了予定は変わっていないので、始まった途端に修羅場。いや、そもそも昨年までも9月に入る頃には充分修羅場なのに、それが、「半分の時日で仕上げろ」になっているのだから何をかイワンの馬鹿。

ちなみに一昨々年の9月25日、親父の命日には、私の担当である20余ブロックのうち、3ブロックが未完だったのだが、今年は(多少減らしてもらって)17ブロックのうち、まだ1本も終わっていない。

●そんなこんなで、結局涼しくなっても模型製作どころではないのだけれど、先週、ちょっと間を見て秋葉原へ。懐具合が寂しいので模型を買うわけにはいかないけれど、少なくとも模型屋の匂いを嗅ぎに行く。

目ぼしいものといえば、7月にPMMSの新製品情報に出ていた、MENGのFT-17(丸砲塔)が既に発売になっていた。オリジナルの木製誘導輪、戦間期改修型の鋼製誘導輪、武装はピュトー37mm、オチキス8mm、Reibel 7.5mmの3種類から選択。どういうわけか操縦手ハッチは厚くなった改修型のパーツは見当たらなかった(見つけられなかっただけ、ではないと思うけれど……)。

内部パーツも入り、なかなか繊細でよさそう。ただし、木製誘導輪は放射状に組んだ木を、パーツごとに凹凸をつけてあるのが気になる。本来は平滑なはず。

●夏の後半のダイジェスト。

▼神保町通いの夏のなかでも、例年、8月15日はなんだかんだと騒がしいので、近付かないようにしているのだが、今年はうっかり出掛けてしまった。ものものしいバリケードやら機動隊やら、夕方にはデモ隊やらと遭遇した。

はっきり言って個人的には靖国神社は「なにやら胡散臭い場所」という認識で、「日本人なら尊崇して当たり前」的な意見にはまるで賛同しないが、靖国参拝反対だの何だのが言いたいなら首相官邸方面に行ってやりなさい。うるさいから。ちなみにそのしばらくあとは(8月15日じゃなくてもしばしばやってくる)軍歌がなりたて式右翼が来た。

F1015833 ▼8月20日、昼頃事務所に到着したら、普段私が仕事机として半ば占拠しているテーブルのまん中にたこ焼きプレートが設置されており、たこ焼きパーティ会場に変貌していた。昼食が急遽、「事務所で皆でたこ焼きを焼いて食う」になった由。……変な事務所。とはいえもちろん私も食う。美味。

ちなみにこの他にも、「昼に到着したらそうめんパーティ」だったことが、この夏2、3度あった。……変な事務所。

なお、写真のテーブルの向こう側に、ほんの少し、ぽよんとした腹が見えるが、これはC社長の腹であって私ではない(ただし、私の腹がぽよんとしていないということではない)。

▼事務所の庶務担当のS女史が、2人目の出産のため退社することになり、入れ替わりのG女史と一緒に、8月23日、歓送迎会を九段下の「おかってや」で行う。久々に実家以外でそこそこ酒を飲む。

たまたま隣に座った人が、故・尾崎“ベルトリング”正登氏の上司であったことが判明。お互いに全然知らない世界での氏の思い出話を交換する。

――イギリスで、何か、そういう車だか何だかの催しがあるんでしょ? 彼はね、その時になると、何があろうと、数日どころじゃなくて1週間やそこら、まとめて休みをとって、ふーっといなくなっちゃうんだよ。

わははははは。そりゃベルトリングでんがな。

ちなみに、尾崎氏が亡くなる少し前のこと、夜、品川駅のホームで立っていたら、「あれー、久しぶり、珍しいところで会うねえ」と、氏に声を掛けられた。

(なお、尾崎氏とは別に模型サークル等で一緒だったこともなく、基本的には静岡ホビーショーで立ち話をするくらいの関係で、しかも第二次大戦初期のちびこい戦車や車輌中心の私と、現用の大型補助車輌で有名な尾崎氏とでは趣味の範囲も大きく食い違うのだが、氏の気さくな性格もあって、顔も覚えていただいていたのだった。)

その時、神保町の事務所が発行している地図関係(GIS)の雑誌をペラペラ流し読みしていたことがきっかけで、尾崎氏が長く地図業界にいて、共通の知人もいることは聞いていたが、これまでは氏を知る人に会っても、そう詳しい話はしたことがなかった。

▼時折、東京駅の「祭」で買って事務所で食う駅弁報告。8月23日に食った横川の釜飯と、9月12日に食った厚岸のかきめし。

F1015847 F1016185

●ここ1ヶ月の生き物画像ダイジェスト。

F1015789 F1015892

左:アカタテハ(8月17日)、右:ヒメアカタテハ(8月27日)。タテハの触角先端は白く、ドイツ軍の車幅表示棒っぽい。

F1015918

サツマノミダマシ(8月29日)。腹の縁が黒いワキグロサツマノミダマシは2度ほど見たが、黒くないほうは初めて。

F1016150 F1016162

仕事で行った江東区大島あたりの路地で撮ったなかの2枚(9月9日)。左:夏の終わりになってよく見かけるようになったハラナガツチバチ(ヒメハラナガツチバチ?)。スマート、というよりはちょっと間延びした感じのハチで、飛行機で例えるとフェアリー・バトルとか……。右:シッポと波模様がかわいいウラナミシジミ。このあと逗子でも一回会った(撮れなかった)。

F1016178 F1016174 F1016169

こちらは自宅近くのキバナコスモスで撮ったアゲハ群(9月9日)。左からアゲハ(ナミアゲハ)、キアゲハ、ナガサキアゲハ。アゲハとキアゲハは、前翅付け根近くの模様が最も判りやすい識別点で、細かくスダレになっているのがナミアゲハ、黒ベタになっているのがキアゲハ。ナガサキアゲハは(温暖化も一因とされる)東上・北上が話題のチョウ。写真としては大したことはないけれど、初めて、ちゃんと種の同定ができる形で撮ることができたので。

F1016179

子供の頃は「気味悪い虫」の代表格のひとつだったオオスカシバ(9月9日)。しかし最近は見かけてもなかなか写真に撮れず、悔しい思いをしているうちに嫌悪感が徐々に薄らいできた。やっとホバリング中を撮ることができた。

F1016277 F1016285 F1016244

左:一見地味だけれど、よく見ると模様と色合いが複雑でなかなか面白い小型のカメムシ、チャイロナガカメムシ。中:イノコヅチの虫こぶ。茎の節ごとにボコボコ膨らんでいたりする。イノコヅチクキマルズイフシ(イノコヅチウロコタマバエによる)というらしい。名前の長ったらしさが、人間生活との縁遠さを物語っているような。右:長勝寺のヒガンバナ。

| | コメント (7) | トラックバック (0)

« 2013年8月 | トップページ | 2013年10月 »