電気ブラン
●26日、午前中、仕事で浅草(田原町)に行く。
珍しく朝の通勤時間帯に出掛けることになってしまうが、たまたま、自宅近くのバス停から新橋駅までずっと、隣のご主人、T氏と一緒だった。
T氏はJAMSTECにこの人ありと知られた、しんかい2000時代からの深海探査艇のベテラン・オペレーターで、しばらく前に出たしんかい6500のキットの話をしたり、深海探査艇の最新事情の話を聞いたり。
現在、しんかい6500を含む有人深海探査艇のフロントランナーは、チタン合金製の耐圧球を採用している。しかし、しんかい200クラスの鋼鉄球に比べれば、飛躍的な性能向上をもたらしたチタン合金製耐圧球だが、現在のレベルを超える深度を目指すには素材的に限界が来ているのだそうだ。
中国の7000m超の記録を作った新鋭艇もチタン合金製の耐圧球だが、これは深度記録を作るためにあれこれ無理をしている由。というわけで、「それ以上」を目指すにはブレイクスルーが必要で、例えばガラス製、セラミック製の耐圧球も考えられるとのこと。
実際にそうした試みもあって、アメリカの民間企業が現在、ガラスの耐圧球を持つ10000m級の深海探査艇を作っているとのこと。
Triton 36000/3 というのがその探査艇で、36000が目指す深度を示す(36000フィート=10972m)。サイトを見ると、もともと浅い海底用にもガラス球のコクピットを持つ潜水艇を作っているメーカーのようなので、「チタンを超えるにはガラスだ」というよりは、元からガラスにこだわっているだけのような気もしないでもないけれど、実際、ガラスが強度の高い素材であることは確かだそうな。
浅い海用の潜水艇では、ガラス球に常識的なハッチを取り付けているが、36000/3では耐圧能力を向上させるため、球に余計な穴などは設けず、球を半割りにして乗り込み、ぴったり合わせる形式になっているらしい。外部機器の操作用にも、耐圧球を貫くケーブルなどは用いず、光通信でコクピット内と外を連絡するのだそうだ。聞けば、「なるほど、アイデアだなあ」とは思うが、「それで大丈夫なのか」という気もしないでもないような。
他にも深度10000メートルを目指す試みとして、ヴァージン・グループのリチャード・ブランソンも深海探査艇を作っている。これもサイトがあって形状を見ることができるが、まるで巡航ミサイルのよう。ちなみにこちらもどうやらガラスの耐圧球を使用している。飛行機のようなキャノピーがあるが、これは耐圧球ではなく、そのの外側に被せた透明のフェアリング。
チタン合金製よりもさらにガラス製は軽量で、耐圧球そのものが浮力を持つことができるため、シンタクティック・フォーム(浮力材)は少なくて済み、そのぶん、全体のコンパクト化が可能だそうだ。もちろん、これまでのように小さな覗き窓ではなく、ほぼ360度の視界を得られるのは大きなメリット。
もっとも上記2種の10000m級は、大深度に到達するのがメインテーマで、単に潜るだけでなく探査活動にあたる機器としては、やはりガラス球は不安を覚える、とのこと。十分使えるとなれば(本来の意味での)探査艇に採用される日も来るかもしれないが、そんな場合、耐圧球そのものを頻繁に交換する――支援船に予備のガラス球が並んでいる、などという運用法になる可能性も?
なお、日本が世界に先駆けて6500を作った理由は、地震国として、プレートの運動を探るために海溝の深部に潜る必要性を感じていたからだが、日本海溝の最深部は8000mを超える。というわけで、しんかい6500を超える性能の探査艇へのニーズはあるらしい。一応、そのための研究費は出ているのだそうだ。
●田原町近くの小学校門内の井戸。凝った形状のポンプが面白い。
●午前中のその仕事は早めに終わったので、仲見世方面に歩く。雷門は修復中だった。
昼前のまだ混まない時間に昼食。前日にサイトを見て、ちょっと気になった「コルマ」というカレー屋で、看板メニューの「コルマカレー」。日本人が始めた本格派インドカレーの店のハシリとして、「デリー」という有名な店が都内に何店舗かあるが、この「コルマ」は、そのデリー出身のご主人が独立して始めたらしい。メニューもデリーとだいぶ重なっている(ただし私はデリーにはまだ行ったことがない)。
コルマカレーももともとデリーの名物メニューで、タマネギをしっかり炒めて煮込んだとろとろの濃褐色のルーに鶏肉。食べて一口目はそれほど辛いと思わないのに、後からじわじわ辛くなる。
客がまだ私一人しかいなかったからか、食べ終わった後にご主人が
「カレー、お好きなんですか?」と話しかけてくる。
「マニアというほどじゃないんですが、まあ、毎食カレーでも大丈夫というくらいは好きです」
「カレー部があったら入っちゃうくらいですか?」
なんだかお互い判ったような判らないような会話。
●ついでに、「今まで飲んだことがなかったなあ」と思い、「電気ブラン・オールド(40度)」のハーフサイズのボトルを買う。
「電気ブラン」は、浅草の有名な老舗「神谷バー」で、創業者が明治に開発したブランデーベースのカクテル。アニメも放送中の、森見登美彦の「有頂天家族」にも、「偽電気ブラン」なる飲み物が登場する。
自宅で週末に少し飲む。思ったほどベタ甘ではないが、まあ、なんというか微妙な味ではある。不味くはないけれど。ちょっと飲み過ぎるとすぐに悪酔いしそうな感じ。しかし、神谷バーでのお勧めの飲み方は、ストレートの場合はビールをチェイサーにするのだそうだ。……いや、それはちょっと。
●29日日曜日。鬱屈してきたのでちょっと散歩に出る。脱走と言ってもよし。
鎌倉と逗子の間の山にある住宅地、ハイランドの中の西友に寄ったら、「スピットファイア」なる名前のエールを売っていた。
メインのラベルは特に飛行機っぽくはないが、首のラベルにはスピットファイアのシルエットが入り、「The BOTTLE of BRITAIN」と書いてある。ダジャレかよ~。王冠はRAFのラウンデル。
●ほとんどhideさんへの私信。
散歩の途中、例のイノコヅチの虫こぶがたくさん見られる草むらで、やたら立派なシロモノを見つけたので写真に収めてきたのだが、帰ってよく見ると、小さな穴が2つ3つ。
前回書き込みで、イノコヅチクキマルズイフシ(イノコヅチウロコタマバエ)は「年2~3化」であると教わって、トラップを仕掛けるよう勧められたのだが、もう実際、羽化が始まっていたらしい。とはいっても適当な網はないし、そう頻繁に見にも行けないし……。
適当な水槽か何かあれば、刈り取ってきて水に挿して、水槽の中に入れて観察するというのができそうだが、以前あった水槽も処分してしまった。残念。冬に枯れたら刈ってビニール袋にでも入れて、春先の羽化を待ってみようか。
| 固定リンク
「かば◎の迂闊な日々」カテゴリの記事
- 8月のヨモヤマ(2024.08.25)
- ミニスケール2題(2024.07.04)
- シロマダラ(2024.06.24)
- 梅雨入り前のあれこれまとめ(2024.06.12)
- のの字坂(2024.05.12)
「いきもの」カテゴリの記事
- 8月のヨモヤマ(2024.08.25)
- シロマダラ(2024.06.24)
- 梅雨入り前のあれこれまとめ(2024.06.12)
- えろえろタイヤ(2024.05.07)
- 砂糖・油・揚げ(2024.05.01)
コメント
浅草には行ったことないんですが,「コルマ」には行ってみたいな…… 11月9日と,たぶん10月19日にも上京するので,その時にでも.
投稿: 青木伸也 | 2013年9月30日 (月) 21時42分
「そこのパピコご購入中のお客さん。パピコお好きなんですか?」
(いや、まぁ、もごもご・・・)
「パピコ部があったら、入っちゃうぐらいですか?」
むしろ、結党したいぐらいですとご返答していただきたい。
投稿: つんきち | 2013年9月30日 (月) 22時33分
>青木君
コルマカレーのほか、もうひとつ代表メニューとしてカシミールカレーという激辛のがあるそうで、それも試してみたいと思っています。都合が合えばご一緒したいところですな。
ところでキミはデリーには行ってるんじゃなかったっけ。
>つん姐さん
どこかのお姐さんにその手の組織に引き入れられていたような……。
投稿: かば◎ | 2013年10月 1日 (火) 10時14分
あららそれは残念、となると狙い目はやはり越冬後の春、四月前半ごろですかね。鉢植えにしないならなるべくギリギリで刈ってきた方が良いと思います。現場で一つ開いてみて、蛹化してそうなら別のを持って帰ってくる、とか。
>JAMSTEC
昔出張で一回だけ訪れたことがあります。随分辺鄙な場所でした。ついでに見に行った三笠と例によってどっちが目的だったかよくわかりませんがw
>カレー部
じゃ、合言葉は「乙カレー!」で
投稿: hide | 2013年10月 1日 (火) 19時13分
>hideさん
んー。年が明けたら、冬枯れした茎の虫こぶ部分を収穫して、ビニール袋にでも入れときましょうかね。
横須賀の三笠は私も数度行っていますが、初めて見たときにはあの小ささに驚きました。当時は戦艦でも、「本日天気晴朗ナレドモ波高シ」の中ではひどく揺られたんだろうなあ、などと思います。
投稿: かば◎ | 2013年10月 3日 (木) 13時06分