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とりかへばや

●ロシアで発行されている(主に)装甲戦闘車両に関する資料誌で、「フロントバヤ・イリュストラツィヤ」(フロントライン・イラストレーション)というのがある。和訳するとしたら、「前線図誌」って感じ?

以前にもちょっと触れたように、この誌名に接するたびに、平安時代の古典「とりかへばや物語」を想起するのだが(バヤしか合ってないけど)、考えてみれば、その「とりかへばや」自体はこれまで読んだことがなく、しばらく前にかみさんに、何か適当な現代語訳本が図書館にあったら借りておいてくれるよう頼んでおいたのが先日届いた。いい加減な脈絡だなあ。

●「宮本武蔵」も読まねばならないのだけれど、一方で図書館の本は返却期限があるので、「とりかへばや」もなんとなくじわじわと読む。

届いた本は「新釈とりかへばや」(風間書房)というかなりの厚みのハードカバーで、1節ごとに原文、現代語訳文、注釈、解説という4段構えになっており、どちらかといえばがっつり古文を読み学びたい人向けの本という感じ。もちろん私は基本、訳文の部分しか読まない。本の性格上、訳文も堅め。

●まだ序盤しか読んでいないのだが、主人公はオトコの娘とボクっ娘の兄妹で(本当はボクっ娘というのは正しくないが、オトコの娘の対義語って何だろう?……調べてみたが、微妙にずれるか、だいぶ無理矢理な言葉しかないようだ)、しかも本当は女の子である「若君」が形ばかり結婚した相手が寝取られちゃったり、オトコの娘の「姫君」が出仕した先の女東宮とデキちゃったり。

まるでアニメか、というよりどこのエロゲ?な筋書きで、海外のアニメおたくあたりが読めば、

「なるほど、日本というところは1000年近く前からこうだったんだな」

と思うこと請け合いで、なかなか笑える。ちなみに「とりかへばや」は、主人公兄妹の父親が、成長途中の我が子らを見てため息をつきつつつぶやいた、「(2人の性格を)とりかえたいなあ」という意の冒頭4節目の台詞から。

●前回書いたように、SIMさんからの質問で、掲示板にサイバー(ドラゴン)の「T-34-76 STZ m.1942」について書いていたら、自分も久しぶりにT-34をいじりたくなってしまった。

もちろん、STZ1942は必ず作りたいネタではあるのだけれど、コンペか何かでもないのにあっちとこっちで同じものを並行して作るのも何なので(そもそも並行して作ってもこっちは途中で休んだりしてなかなか出来なさそうだ)、同じキットに入っているSTZ用初期型砲塔を利用して、「タイヤ跡迷彩」の車輌等でも有名な、

「砲塔は後部が台形一枚板のSTZ仕様なんだけれど、車体はハリコフっぽい1941年型」

でも作ってみようかと思い立つ。ちなみにこの仕様に関しては、緩衝ゴム内蔵転輪+550mmワイド・ワッフル履帯に切り替わる前のスターリングラード・トラクター工場製のものと考えていたのだが、青木氏はSTZに砲塔を供給していた工場(バリカディ?)が他工場(つまりハリコフ)にも流していたのでは、という推論を述べている。

●ICMから、お面グリルのフォード・トラックが発売されることについても前回書いたが、ドイツ以外のヨーロッパ各国での状況を軽く調べてみた。

ハンガリー:お面型、鳥かご型、両方の形式のトラックを使っていて、ドイツから供与されて使っているだけでなく、お面型に関しては国内MÁVAG社でも生産しているらしい。名称は39M フォード・マーモン2.5tトラック。マーモンと付くのは、マーモン・ハリントンによる4輪駆動装置を備えていたためで、また、オープンキャブなので、資料不足を差し引いても、これを作るのは大変そう。

ルーマニア:ブカレストのフォード工場(Atelierele Ford Bucuresti)で生産。お面型グリルのフォード・トラックを2000両以上、他燃料補給車、フォード・マーモン4輪駆動車を小数。フォード・マーモンは、お面グリルではあるのだが、キャブオーバー型のほとんど別車輌。

オランダ:DAFでシボレーとともにフォードも生産され、後輪2軸のものも作っている。4輪のものは38年のtype 81Y/DAF以降、91Y、01Yと続いて、01Yが鳥かごグリルかな? もっとも生産したのが4輪駆動型であるうえ、そもそも通常のトラック型を使っているのかどうか、出てくる写真は主に横列の座席と弾薬ラックを備えた牽引車型が主。さらに4輪駆動もちょっと特殊で、いわば「純正」であるマーモンではなく、DAF独自のものを開発・導入していたらしい。普通、そんな機構に関してはお手上げだが、ほとんど僥倖で、こんなサイトを見つけた。……模型製作に繋がるかどうかは別だけれど。

ベルギー:英フォード傘下でフォード・モーター・カンパニー・ベルギウム、というのがあったらしい(在アントウェルペン?)。ここも軍用にマーモンの4駆を生産。91Y(お面)と、開戦間際に01Cを作っているらしい。もっとも91Yは乗用車型やら装甲車型やらは出てきたが、普通のトラックはどうなんだか。なお、敗戦後にドイツ軍用にせっせと917Tほかを作っているような記述が、モーターブーフのボイテ本にある(ドイツ語なので読めない)。

……結局、ヨーロッパ小国軍にするには、素直にドイツフォード仕様で作ってハンガリー軍のナンバープレートを付けるのが精一杯?

●寒いよう、寒いよう(2日日曜日夕)。

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コメント

寒いですな。

投稿: はほ/~ | 2012年12月 2日 (日) 20時25分

>917Tと997T
多分その二つの違いではなくて、年式によってお面の真ん中の骨のディテールが2パターンあるんだったような。mixiでお知り合いになった方に教えていただいた話なんですが、資料がどこにいったかな?
実は国産お面38年型のカタログのデータももらっていて(というかウチのKCとトレード)、それも年内には何とか記事にしたい所存。

投稿: hide | 2012年12月 2日 (日) 21時33分

>はほちん

雨まで降り始めて、これがそのまま初雪になったりしなきゃいいんですが。

>hideさん

確かに、
http://www.kfzderwehrmacht.de/Homepage_english/Motor_Vehicles/Germany/Ford/Ford_3t_model_1939/ford_3t_model_1939.html
ココを見ても、グリルが縦棒から単純に左右に分かれているのと(1、3、4番目)、縦棒が独立しているように見えるのと(2番目)とがありますね。

小国軍ネタだと、ルーマニアで素敵な対空トラックがあります。
http://www.worldwar2.ro/forum/index.php?showtopic=1404&st=0
しかしこれじゃあ、載せている対空機銃が何なのかさえ判りませんね。

同じスレの後の方のページに、キャブオーバーのタイプと、やはりルーマニア軍所属のごくごく普通の917Tに見えるフォードの写真があります。後者についてはルーマニア製だと投稿者は書いていますが(というより、元資料にそう書いてあったらしい)、ノーテク・ライトも付いているし、ドイツからの供与モンじゃないのかなあ……。

投稿: かば◎ | 2012年12月 2日 (日) 21時58分

こっち、土曜日は霙混じりの雨が降ったそうです。大激作展に行ってたので知りませんでしたが。

北千住に行くべく日暮里から常磐線に乗ったら、特別快速で次の停車駅が松戸だったという迂闊さ。

投稿: はほ/~ | 2012年12月 3日 (月) 21時22分

>はほちん

私ゃ明日は(ってもう日付は「今日」ですが)日が暮れてから流山です。うー寒そう。

投稿: かば◎ | 2012年12月 4日 (火) 00時47分

「とりかへばや」ってなになになに?と思って拝読にうかがったのですが、最後のかば◎さんのコメントに驚いてまった。
私その流山で育ちましたぁ。
流山のどこに行ったのかなぁ。
来春には戻る予定なのですよ。

投稿: あー | 2012年12月 6日 (木) 18時25分

>あーさん

済みません。ちょっと説明不足な書き方でしたが、「とりかへばや物語」は平安時代後期に書かれた古典文学です。どうも古典というと(私もそうですが)いかにも「学校でのお勉強」と身構えてしまいそうになるのですが、これは内容が……まあ、上記の通りで。

これで味をしめたら次は「虫めづる姫君」かなあ。

ところで、上のコメントには「流山」と書いたんですが、実際には流山市を通り過ぎて柏市に入ってました。筑波エクスプレスの「柏の葉キャンパス」駅前にちと用事があったのです。

つくばに時折用事があったりするので、流山はよく通り抜けるのですが、流山そのものに用事というと……確か一昨年、市役所に行ったかな?

と思って当「かばぶ」を遡ってみたら、流山のマンホールのフタの写真が上がっていました(なんだかなあ)。
http://kabanos.cocolog-nifty.com/blog/2010/04/post-9262.html

投稿: かば◎ | 2012年12月 6日 (木) 20時48分

いやいや、十分興味をそそる書き方でした。
「とりかへばや物語」、リンクのウィキも見ました。
古典文学の世界では有名なんですね。読んでみようかしら(もちろん訳文ネ)。
虫オタクの物語で思い出しましたが、ゴキブリにはホイホイ系よりホウ酸団子系がお勧め(ただしお嬢さんが十分理解できるようになってからね)。
柏の葉ね、どんぴしゃ。そこから3、4㎞ですわ実家。
最寄り駅は東武野田線だけど。
あのあたり、子どもの頃は米軍の無線送信所。
近くの森でターザンごっこしたっけ。今は跡形なし。
血税をマンホールに使う自治体の住民になるのは悲しいヨ~。

投稿: あー | 2012年12月 7日 (金) 12時13分

追伸
マンホールはいいんだったわ。マンホールの蓋の意匠に凝るよりほかに使い途があろうに。

投稿: あー | 2012年12月 7日 (金) 13時32分

>あーさん

おおお。東武野田線沿線住民でしたか。実はうちのかみさんが野田出身なので、野田線は、つくばエクスプレスよりもずっと馴染みがあります。

しかし野田線沿線ご出身となると伺いたいことがあるんですが、どうもうちのかみさんは(義妹も)、私から見ると謎な言語文化を持っているのです。例えば頬にごはんつぶなどが付いていた時に歌う

「お弁当つけて、どこいくの~」

に続きがあって、

「大宮公園、ぶた公園」

これって野田線沿線の地域文化なんですかね。それともかみさんの家の独自仕様なんでしょうか。それとも野田市にはあって流山市にはないとか。

調べてみると、確かに、埼玉の大宮には「大宮公園」という立派な県営公園があるのですが、とすると、これは「野田にだって清水公園があるんだぞ、大宮公園なんて、けっ」みたいな野田市民の想いが噴出したものとか(調べてみると、野田線には「大宮公園」駅も「清水公園」駅もあるんですな)。

なお、バスや電車に乗り遅れることを「乗りはぐる」というのも、おそらくかみさん由来の言葉なんですが、これはいつの間にか私にも定着してしまいました。

投稿: かば◎ | 2012年12月 7日 (金) 13時50分

あー、「お弁当つけて、どこいくの~」
に続きがあるのは知らなかったです。
でも気持ちとしては「行くなら清水公園でしょ絶対。大宮公園なんて行かないよ」。
小学校の遠足には必ず行くし、中学生のデートとかもね(古っ。いまどきの子はないな)
「野田市民の想いが噴出した」って、ありかもです。

「乗りはぐる」「乗りはぐれた」はいまなお標準語と思っておりますが、何か?(笑)

投稿: あー | 2012年12月 7日 (金) 15時20分

本文と全然関係無いですが、お誕生日おめでとうございます。

投稿: hide | 2012年12月 9日 (日) 15時15分

>hideさん

や、こりゃどうも有難うございます。

投稿: かば◎ | 2012年12月 9日 (日) 23時18分

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