バカガイ
●おそらく、これまでの人生の中で(大袈裟)、最もたくさん見た貝殻はバカガイである。
前回の書き込みのコメントにぶら下げたのだが、中学・高校の時に頻繁に千葉の木下(きおろし)というところに洪積世(更新世)の化石を採りに行っていた(JR成田線に「木下」という駅がある)。そのあたりの台地は、崖の中途に2~3mくらい、遠目に真っ白に見えるほど、びっしり貝殻が詰まって堆積しているのだが、その貝殻のほとんどがバカガイなのである。
ちなみに、「化石」とは言っても普通に砂に貝殻が埋まっているだけなので、昔は近隣の養鶏場では、この化石を掘り出して砕いてエサに混ぜていたらしい(卵を産ませるにはカルシウム補給が必要なので)。
私が通っていた頃は土地の造成だの新道路の建設だのであっちこっちに露頭(崖)があって化石も採り放題だったのだが、おそらく今ではほとんどが、山ごと崩されてしまったか、コンクリートで覆われたかしてしまっているのではないかと思う。
●図鑑で名前を調べ、レポートなど書いたので、一番ありふれていたバカガイについては学名も覚えていて、Matra sulcataria という……と思っていたのだが、改めて調べてみると Matra chinensis になっている。
間違って覚えていたのだろうかと青くなったが(といっても、バカガイの学名を披露する機会など生活上まずないので間違えていても全然構わないのだが、要するに気分の問題だ)、もうちょっと調べると、Matra sulcataria と書かれているものもある。要するに、いつの間にか名前が変わっていたらしい。
学名は、日本人の名前と同様に、「苗字(属名)+名前(種小名)」の組み合わせで出来ている(場合によっては重ねて亜種名が付いたりするが)。
Mactra chinensis の場合で言えば、「Mactra(バカガイ属=バカガイファミリーの)+chinesis(中国産のやつ)」というのが、和名で言うところのバカガイにあたる、ということになる。
Mactra chinensis とMatra sulcataria のように、同一種に複数の名前がある場合、そのそれぞれを「シノニム」という。学名は1種に1つと決まっており、そう簡単に変わらなさそうに思えるが、実は結構変わったり、並立したりする。その理由は、
- ***という種類だと思っていたのに違うことが判ったので、新たに名前を付けた。
- ***という学名で知られていたが、実は人知れず、それより前にマイナーな論文で別の名前が付けられていた(学名はどちらの通りがいいか、ではなく、とにかく先に付けたほうが有効になる)。
- ***の仲間(属)だと思っていたのに、実際には別のグループだった(この場合は属名が変わる)。
- 何某博士と何某博士とで主張している分類が違い、それに従って学名も異なる。これは場合によると、国別で有力学説に違いがあるので名前が違い、お互い譲らないなどということもある。「もやしもん」3巻に出てくる、「アメリカめ、また自分達だけ使ってる学名でかいてるよ」「ほっとけ 基本マターリだ」っていうのがコレ。
……などなどの理由による。バカガイの場合、Mactra chinensis という名前がそう新しいものには思えないから、おそらく、日本産のバカガイはMactra chinensis とは別種だと思われて独立した種小名が与えられていたのが、その後の研究で同一種説が主流となった、ということなのではないかと思う。ちなみに近似の種でエゾバカガイというのがいて、これも昔はMactra carneopicta と別種とされていたのが、現在ではMactra chinensis carneopicta と、chinensis の亜種だということになっているらしい。
って、なんでこんなことを長々と書いてるんだろう(笑)。要するに、「付け焼刃の知識はどんどん鮮度が落ちる」ということである。そんな知識を更新することも、何か意味があるのかどうかよく判らないけれど。
ちなみに寿司ネタのバカガイ(アオヤギ)は割と好き(関係ない)。
●ついでに生物種もうひとネタ。前にも一度書いたかなあ。青木氏経由で知った話なのだが、従来、同一種が日本全国に広く分布していたと思われていたキリギリスは、実は地域ごとに別種である可能性が高いのだそうだ。すでにwikipediaにも記載されているから、そこそこ、「知っている人は知っている」話なのだろう。
●前回、「ガルパン」登場のKV-2の仕様につき書いたが、それも含め、青木氏による「ガルパンのソ連戦車仕様解説」改訂版はこちら。
基本、このアニメに関しては「何だかなあ」な姿勢でいるが、とはいっても、わざわざ画面を止めて、ここのディテールがどうのこうの、なんて見ている時点でワナに落ちているような気もする。
ただ、その点でちょっと興味を覚えるのは、アニメに絵を書き起こす際に、「あまりよく知らずに描き間違えた」「参考にした模型の誤りを引き継いだ」などのありがちな事項だけでなく、「わざわざそういうふうに描いている」としか思えない部分があること。なぜそうしているかは謎。それが垣間見えるのが38(t)で、以下にいくつか、仕様をまとめてみる。
- 車体下部前面装甲は、どの形式よりもリベット数が多い(これは単に適当に描いただけ?)。牽引フック先端に螺旋状の曲がり無し?
- 公式サイトでは「B/C型」としているが、確かに戦闘室前面装甲は初期型に似た段付きではあるものの、右端が湾曲しておらず、どの形式にも当てはまらない独自仕様。視察口は左右が同形状のE/F型以降の仕様。リベット数も独特で、強いて言えば、中央の折れ曲がりから右の操縦手側がB型、左の無線手側がE型以降の折衷といった感じ。
- 通常、戦闘室左端の角に付くアンテナポストが、若干後ろ寄りの車体側面にあり、形状も独特。
- アンテナポスト後方に、無線手用にも操縦手席側面用と同様の視察口。どの型にも当てはまらない独自仕様。偉い人(生徒会長)がその位置に乗っているための特別仕様?
- 砲塔は、少なくとも前面は、機銃マウント周囲にカラーが付いた初期型形状。ただし砲耳部側面部装甲のリベット列は前側が2列の独自仕様。
- 車体フェンダーは一直線(ドラゴンのキットと同様)。
- 左フェンダー前部にノテク・ライト。E/F型までの装備位置に近いが、それよりも外側。
- B型あたりまで見られるバックミラーは無し。
- ノテク・ライトの後ろに消火器(標準位置ではない)。
- 左フェンダー上、ほぼ中央に小工具箱。標準装備ではないが、実車でもしばしば見られる感じのもの。
- 工具箱前方、戦闘室側面にツルハシ。本来は戦闘室後ろ端までの長さのものなので、だいぶ柄を切り詰めていることになる。
- 車体左側最後部に尾灯らしきもの(標準装備ではない)。
- 右フェンダー前部にジャッキ台。標準位置ではないが、戦闘室右側に大型雑具箱など置いている車輌だと、この位置に移動していることがある。
- 右フェンダー、戦闘室横にジャッキ。本来、その後方の工具箱上に乗っているチェコ製ジャッキではなく、ドイツ製中戦車用ジャッキに見える。
- 排気管はC型中途以降の高位置。
- 車体後部上面右側に車間表示灯。標準位置ではないが、フランス戦時の第7師団所属車の装着位置に近い。
- 履帯張度調節装置、エンジン始動用クランク差込口にカバー無し。
- 操縦手用照準器無し(基部ごと)。
などなど。本気でこの仕様を再現しようとするなら、戦闘室前面の改修が結構厄介そうだ。
しかしB1bisの砲塔ハッチが逆に開いているのは単なる間違いだろうなあ……。
●15日土曜日晩、近所の家で仲の良い数家族の忘年会。我が家は欠席予定だったが、麻雀の面子が足りないからと、私だけ後から参加。
最近は麻雀なんて年に1度のこの忘年会の席くらいだし(他の面子もおそらくほぼ同様)、袖を引っ掛けて山は崩す、手前の山から間違ってツモって来る、役がないのに上がる等々、なかなかすごいことになっているが、何を賭けているわけでもないので問題無し。
●模型仲間のがらんどうさんより、横浜の「人形の家」博物館で開かれている「ろうがんず」の展示会に誘われ、最終日の16日日曜日、投票を済ませてから出掛ける。2時前に到着。小ぢんまりとした部屋での展示会で、テーマとしてヘリコプターが設定されていたようだが、それは入口近くにまとめて置かれ、あとはメンバー各人、自分の好みの趣くままに、という感じ。
会場でもにゃ氏(元とも氏)とも会って、3人で中華街へ。相変わらず休日の中華街はごった返しているが、小さな飲茶の店に入り、「お試しセット」なるミニコースをつつきながら、ほんの軽く飲んで、日が暮れる頃までなんだかんだ歓談。
●帰宅後、前の晩の忘年会の帰りに貰った生さざえをガスレンジの上に網を置き、つぼ焼きにして食す。焼き始めに酒をたらし、後から醤油をたらしただけ。
さざえのつぼ焼きは、個人的には昔は「匂いだけはいいけれど食べるのはちょっと」なものだったが、歳を食って嗜好が変わってきたせいもあって、美味しく頂いた。ちょっとワタが砂でじゃりじゃりしたが許容範囲。
●吉田秋生「海街diary5 群青」を読む。ますますしみじみと面白い。
| 固定リンク
« せんだぎゃー | トップページ | 歩いたり作ったり »
「かば◎の迂闊な日々」カテゴリの記事
- 8月のヨモヤマ(2024.08.25)
- ミニスケール2題(2024.07.04)
- シロマダラ(2024.06.24)
- 梅雨入り前のあれこれまとめ(2024.06.12)
- のの字坂(2024.05.12)
コメント
あ。
ウチ、かばちゃんと麻雀したい。
うへへへ・・・・ぼっこぼこにして差し上げれられるかも知れん・・。このぐらいしかチャンスないかもだな・・・。
点20でな。ヨロチクねっ♪
投稿: つんきち | 2012年12月18日 (火) 00時13分
いつのまにか
「ブロントザウルス」が「アパトサウルス」に
なっていたのは少しショックでした
投稿: めがーぬ | 2012年12月18日 (火) 12時48分
>つん姐さん
ぶはっ。そんな恐ろしいことができるかー。
>めがーぬさん
そうそう、あれを知った時は、私も衝撃でした。
しかし改めて調べてみると、ブロントサウルスがアパトサウルスのシノニムで、アパトサウルスのほうが先に名付けられているということ自体、1903年には判っていたにもかかわらず、それを指摘した論文自体が注目されず忘れ去られていた、というのがサビシイというか何というか。
しかも昔を思い出してみると、確かに私の知っている「ブロントザウルス」は丸顔でしたが、あれが別の恐竜の顔を借りてきたやつだったなんて。
「ブロントサウルス」に似た例で言うと、「トラコドン」も現在は使われていないそうですね。
投稿: かば◎ | 2012年12月18日 (火) 17時11分
>1903年には判っていた
ほー。そんな事実が。
>別の恐竜の顔を借りてきたやつ
「化石の頭部だけ別の恐竜」が判明して、
一気に「アパト」が優勢になったんでしょうか。
そーいや「怪獣王子」に出てるのも「ブロント」でしたね。
>トラコドン
プテラノドン、イグアノドン等と合わせ
「~ドン」というのは恐竜や怪獣を連想させる名前なんですが
「歯」の意味だと知ったのもショックでした。
投稿: めがーぬ | 2012年12月19日 (水) 13時07分
>めがーぬさん
wikipediaからなんですが、アパトサウルスとブロントサウルスとは、単に命名の前後だけでなく、ブロントサウルスとされてきた標本(復元骨格)の頭部がカマラサウルスであるなどキメラ的状態だったために、ブロントサウルスの名前自体が(単なるシノニムでなく)無効な名称とされたようです。
と、めがーぬさんと「ブロント話」をしていて不意に思い出したんですが、我が家の模型ストック棚の奥に、グレンコーの「ブロントサウルス骨格」のプラモデルがあるはず!
あれも頭はカマラサウルスなんだろうなあ。とはいえ、細長い頭を自作して「アパトサウルスに改造」なんて無理そうだし(笑)。
……一回りして模型に話が戻ってきた(笑)。
投稿: かば◎ | 2012年12月20日 (木) 01時56分
今日通販でガルパンⅣ号と38が届いたのですが、38はフツーのE/F型のキットでした。コレこそ、なんだかなぁ、という感じ。
投稿: hide | 2012年12月22日 (土) 15時11分