ヴィッカース・クロスレイM25装甲車(2)
●フェンダー
近年の中国製キットの特徴としてスライド金型(*)の多用があるが、リアフェンダーも3カ所のステイのモールドを綺麗に出すために多分割になっている。表面3分割なので、結構奢ったな、という感じ。
*ところで、単純な2分割金型でない成型のものをすぐに「スライド金型」と言ってしまうのだけれど、実際には多分割の金型の形式にはもっといろいろあるはず。
しかし、せっかくリアフェンダーを多分割にしているのに、より目立つフロントフェンダーは通常部品で、一番前の(おそらく一番目立つ)フェンダーステイが成型方向に合わせて菱形断面になっているのは残念。
またこれは金型分割とは関係ないが、フェンダーステイの「柄」の部分が厚いのと、フェンダー上面のフチが分厚いのが、ちょっと繊細さを損じている。フェンダーステイに関しては、後々エッチングパーツでも出そうな気はする。フェンダー上面のフチについては、外側と前側のみ、元の0.7~0.8mm程度の厚み(右写真上)を、0.3mm程度まで削ってみた(下)。……なんか中途半端だ。
なお、フロントフェンダーの「柄」の部分がフェンダーの曲面に垂直ではなく、地面に垂直方向になっているのは、それで正しいようだ。
●車内
どこまで正しいかよく判らないが、とにかく、操縦席と助手席、車長用の台座のような席はある。ハンドル、フットペダル等はあるが、計器盤は無し。また、当然あるはずの弾薬ラック等の装備もない(車長用台座は弾薬箱兼用かもしれないが)。
もっとも車体左右の乗降用ハッチはボディと一体で開閉できず、砲塔上部の貝殻(クラム・シェル)形ハッチも左右一体で開閉できない。車体後面のハッチは別部品なので開状態にすることはできるが、ハッチ裏も車内もツンツルテン。基本、車内パーツはオマケ的な感じ。
ちなみに、資料によれば装甲ボディの内側には断熱のためアスベスト布が張られているとのことなのだが、本来の「インド用」だけでなく、日本への輸出車輌もそんな仕様になっていたかどうかは不明。
●装甲車体
先述の通り一体成型で、全体形がかっちり仕上がっているのはいいが、左右ドアも一体なのは、ディオラマ・ビルダー系の人には不便かも(私はどうせ別部品でも閉めてしまうと思うので問題なし)。
観音開きの後部ドアと、前端のラジエータ・ドアは別部品だが、どちらも基本的に開状態にすることは考えていない作り(せっかく内側にラジエータはあるのに)。実物寸法に比べれば厚いだろうが、模型パーツとしては両方とも薄手に作ってあってよい。
戦闘室外周各所にある覗き孔は下写真とじっくり比べると、もうちょっとあーでこーで……。まあ、そんなところを気にする人も少なそうだし、当然私もいじらない。
最も気になるのは戦闘室前面のフラップ(E-12)で、ここは、実際には上下に分かれて開くだけでなく左右にも分かれている。キットのパーツは上下一体の閉状態になっているのはいいとしても、左右分割が表現されておらず、またパーツの厚みがもろに目立つ構成になっているのは、ちょっと何とかしたい感じ。
また、左右のスリットは、キットのパーツでは対称位置にあるが(また実際、タイプによってはそうなのだが)、日本軍の装備した型だと、バックの写真(英軍のME9358号車)のように非対称である可能性が高そう。
●砲塔
とにかくこの車輌のチャームポイントは鏡餅のようなお茶目な砲塔の存在に尽きるが、スライド型で綺麗に抜いている。ただ、車体もそうだが表面のボルト/リベットは画一的で、実際には上写真でも判るように、大きさ、形状にはもうちょっとメリハリがある。
機銃ポートは4つあるが、実車では通常2丁しか装備しておらず、キットも機銃のパーツ自体は2丁しか入っていない。ボールマウントのパーツ(G-8)は、なぜかランナーゲートと反対側に、メーカー側でゲートを切り離したような跡があり、それがたまたま私の買ったキットがそうだったのか、全キットがそうなのかは判らないが、部品側まで少々削り取ってしまっている。機銃の取り付け角度にもよるが、組立後見えてしまう位置なので少々困る(私は瞬着を盛って削り直した)。
キューポラ状のクラム・シェル形ハッチは閉状態で1パーツ。また実車では回転するようにできているのだと思うが、砲塔にそのまま接着する指定。スリットはパーツの厚みがちょっと目立つ感じの開き方だったので、裏から少々さらった。
●その他装備だの何だの
砲塔ハッチ上には大き目のサーチライトが付くようになっているのだが、海軍陸戦隊の車輌で、これを装備した状態の写真は(少なくとも私は)見たことがない。キットではライトを付けない場合に、取り付け穴に栓をするパーツ(I-1)も付いているが、実物でどうなっているかはいまいちよく判らない。
また、車体前部にはフェンダーに付く通常の前照灯のほか、カンテラふうのライトも付くようになっているのだが(G-10とH-2)、これも左右揃って装備しているケースは少ないようだ。ただし、この「カンテラ」を付けてなくても、U字(それともЧ字というべき?)フォークのステイは標準装備として付いている。ただし、キットのパーツ(I-7、I-8)はライトを付ける事を前提とした形状となっているので、若干の加工の必要がある。
| 固定リンク
「資料・考証」カテゴリの記事
- 沈頭鋲(2023.08.16)
- KV maniacsメモ(緩衝ゴム内蔵転輪)その2 附:標準型全鋼製転輪(2022.12.15)
- えのすい(2022.12.11)
- KV maniacsメモ(緩衝ゴム内蔵転輪)その1(2022.12.13)
- “イン・アクションもどき”の素敵な世界(2022.04.11)
「製作記・レビュー」カテゴリの記事
- ずしのむし(2023.11.02)
- ポーランド・メタボ士官(2023.08.26)
- つれづれSU-100(5)(2023.06.24)
- つれづれSU-100(4)(2023.04.01)
コメント
ううむ、読む限り「手の入れ甲斐がある素材」という感じでしょうか。ただ実車のクローズアップ資料などが無いのがネックでしょうか。ボービントンには現存しとるみたいですが。個人的には6輪の方がより強面感が増して好きですけど、でもこれはやはり年内に買っときたいなぁ。ハッチの類は私も基本閉める派ですけど、それでも別パーツの方が「開きそうに見える」分だけ好みです。
ところで陸戦隊つながりで例のガルパン八九式入手しましたが、どうやら売れてるっぽいですよ。ガルパン表紙のMG今月号も完売に近い模様。近日中に記事にしようと思いますが、予想に反して(?)ガルパン商法は当たりかもしれません。
投稿: hide | 2012年11月28日 (水) 22時27分
>hideさん
コメント有難うございます。
いや、ホントにこれって、手軽な資料ってのがないんですよね。
現存車輌は何輌かあるんですが、ネットを徘徊してもwalkaround的な写真は(ないわけではないのですが)少ないし、そもそも現存車輌は全て、キットとは型が違っているので、クローズアップがあったとしても「参考」にしかならないんですよね。
結局、海軍陸戦隊のそのものズバリの写真がないと仕方ないわけですが、その写真は細部は心眼で見なければいけないようなものばかりだし。
ところで今日、秋葉原のVOLKSで商品棚のタミヤ・Char B1bisの前に「今回発見された云々!」と張り紙がしてあって、
「おおお! 何? どこかにまだ知られていないB1bisが現存してたの? 保存状態はどうなの?」
と色めきたっちゃったんですけれど、よくよく見たらガルパンの最新話のことでした。あー。そういや出てたっけ。ふんがー。
個人的には「あー戦車動いてるナー」くらいの感想で、この手の「女の子ミリタリー」では個人的には「スカイガールズ」がよかったかなー、いやー、ミリタリーじゃないけど系統的に似てるのだと「ロケットガール」がよかったなーとか、まあ、その程度なんですが、これで一時的にでもAFV模型関係が潤って、その儲けで何か出たりしたらめっけもんかなあ、と思ったりしています。
投稿: かば◎ | 2012年11月28日 (水) 23時50分