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AVIATION USKという会社

●結局、ゴールデンウィークは、滞った仕事に向き合ってうんうん唸っているか、現実逃避でさらにストックの山の奥を漁っているかで、普段の平日よりもさらに外出しない、ほとんど引きこもり状態だった。

もっとも、特に用事もなく息抜きに出掛ける先といえば鎌倉程度だが、GW中の混みあった鎌倉はあまり近付きたい場所ではない。

結局、5日の深夜に夜食を仕入れにファミマに行った程度。さすがに5月初旬でも、2時過ぎだと星の配置は真夏の夜空で、南にはさそり座、天頂近くに「あれがデネブ、アルタイル、ベガ」状態。ちなみに話題の「スーパームーン」は見なかった。

●三歳児の集中力ってスゲーな、という例。

「すまいるぷりきゅあわ、たのしいときをつくるきぎょう、わんだいと、ごらんのすぽんさーのべんきょうで、おおくりします」

まあ、覚えなきゃいけないものは覚えられず、どうでもいいものは覚えてしまうのは何歳でも同じかも。

●飛行機のガレージキットとしては、バキュームフォームは古い形態で、その後レジンキット、そして簡易インジェクションが登場し、現在ではバキュームフォームの新作キットというのはほとんど出ていないのではないかと思う。

しかしそんなバキュームフォームのなかでも、比較的新しく表面ディテールがシャープで、別途に小物も付属し、今でも「これならちょっと手間を掛けて作ってもいいかも」と思えるものもあって、前回紹介したのもそういった例のいくつか。

F1031871そして、さらに棚をゴソゴソしていて、またまた出てきたのがこれ。

AVIATION USKの72、1940年西方戦役時にオランダ空軍で使われていた爆撃機、フォッカーT-V。これまたレジンキット並みに丈夫な段ボール箱に、余裕を持ってパーツが入っている。

F1031870 バキュームフォームキットとはいっても、バキュームフォームのパーツは、キャノピー周りを除けば、胴体・ナセル・主翼の10個しかない(あとは床面やバルクヘッドなどもあるが、これらは単にプラバンとしての利用だ)。

あとはカウリング、エンジン、脚周りを含めて簡易インジェクション。バキュームフォームの飛行機キットでは、尾翼は削りシロが多く整形作業が面倒なのだが、このキットではそれも簡易インジェクションで用意されている。

しかも計器盤やシートベルトはエッチング付き。デカールは薄く変色もなく、非常に美しい。

もともとAVIATION USKはアメリカの会社だが、製品そのものは当初からチェコに開発と生産を発注していたようで、このキットも、バキュームフォームパーツのテイストも、放射状に整形された簡易インジェクションも、透明フィルムに印刷された計器付きの計器盤エッチングも、まさにMPM系そのまんま。残念なことに透明部品が黄変してしまっているところまでMPM系の特徴を示している(もっとも黄変の度合いは以前見たクラエアのRe2001ほどではないので、なんとか我慢できなくもないかも)。

●もともとAVIATION USKは簡易インジェクションの飛行機キットの会社で、後期に大型機に限って、このようなバキュームとの混成キットを出した。他にカプローニCa133なども同様の構成で出ていて、うーん、あれは買ったかなあ。買ったような、欲しかったけれど諦めたような、ちょっと記憶が曖昧。ボケとるな。

F1031863ちなみにフォッカーT-Vの箱のデザインは非常におとなしいが、もともとAVIATION USKの箱はどうしたわけかやたら派手で、例えば左のドルニエDo22も、紫とか黄色とか、黄色からオレンジへのグラデーションとか色使いが変で、書体も変。

しかも、単に色使いだけの問題ではなく、このDo22の箱には、もっととんでもない部分がある。

F1031860 それが箱横で、「組み立て不要!」(NO ASSEMBLY REQUIRED!)と大書してある。さらにその横に細かく解説があり、それが左の写真。大雑把に訳すと、要するに

  • これは史上初の「完全自動組立式」の1:72飛行機キットで
  • 単にボタンを押して待っていれば(ちなみに左端にちょっとだけ見えているオレンジの丸がその「ボタン」)、自動的に組みたてられ、塗装され、デカールも貼られて箱から飛び出してくる。
  • ちなみに待機時間は室温や月齢、購入者のIQやナスダックの株価指数などによって、2000年から1千200万年の幅がある。

……のだそうだ。

なお、このDo22のキットの出来自体はこちら

●USKはどうやら、本職をリタイアした老夫婦が(おそらくダンナの)趣味で始めた会社だが、このDo22が出る前後、web上に「もう歳だからやめるよ~ん。あとは悠々自適だよ~ん」みたいな宣言を出し、会社を譲り渡してしまった。このDo22のファンキーな箱は、その後継の若い連中の趣味かも。

しかし、事業継続を宣言していたもののその後確か新製品は出ず、さらにレーベル名がxoticに変わって(社名が変わったのか、製品の扱いを別会社に譲り渡したのかは不明)、それもしばらくして消滅してしまった模様。

(5月8日追記)

F1031874F1031875●模型棚のなかから比較的すぐに見つかったAVIATION USKのその他の箱入り小物キットを撮ってみた(わざわざ箱入りと言ったのは、同社初期のキットはモノクロ印刷のタグが付いた袋入りだったからである)。

ロゴザルスキIK-3の箱はまだおとなしいが、真ん中の98軽爆など、ほとんどハロウィーンの色使いとロゴの書体である。

ちなみにこの98軽爆は箱だけで中身がなかった。たぶん、カロアスだったかエアモデルだったかのバキュームの作り掛けと一緒にもう少し大き目の箱に入れてしまってあるはず……でもその箱はいったいどこ?

●後期、大型機のキットはバキューム+簡易インジェクションの混成キットだったと言ったが、サヴォイア・マルケッティSM.84はかなりの大型機にも関わらず主要パーツも簡易インジェクションだった。あれは「買うたやめた音頭」の結果、確かに買わなかった。

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コメント

社名はAV-USKのままで、キットのブランド名だけがXotic 72となり、飛行機と宇宙機のレジンキットを数点発売してフェードアウトしたような。アイテム選択が上手く、今でもUSKが唯一な物(インジェクション/簡易インジェクションに限れば)もありますね。惜しいメーカーを亡くしたものです。

投稿: 司龍 | 2012年5月 8日 (火) 11時02分

あぁあびえーしょんうそつけ!

........MPM系が出すまで唯一だったミルスキとか!

いまだに見つければ欲しくなる!かも。

あのコックローチさながらの茶色い成型色!

輸入プラ扱い店の壁に貼られてすすけた穀潰し的エアヒクスまがいの
初期パッケージ!

なんかにくめんです。愛かも。愛かな。

投稿: dododonji | 2012年5月 8日 (火) 20時22分

何故だかウチにRO.37一機だけ在庫してます。いつ頃何処で買ったもよく覚えてませんが、多分買った時はCR.32辺りと勘違いして買ったような気が…。でコイツの箱サイドには“アメリカ人よ、我等の自由を守れ!"ってな事が書いてあって、私はてっきりココの製品を買ったら売上の一部が民○党の献金にでも化けるのかと(笑)。

投稿: hide | 2012年5月 8日 (火) 20時32分

>司龍さん

 なるほど、xotic 72はおそらく単にブランド名変更なのですね。

 とにかくUSKに関しては、モノは結局はMPMなので(末期には違うものがあるようですが)、形の捉え方には当たり外れがあるものの品質は安定しているという、それなりに安心できるブランドでした。

 FOKKER T-Vは、他にレジンキットもあるようなことも聞きますが、少なくとも入手しやすくはなく、出来もコレ以上かどうか怪しいので、そのうちこのT-Vはなんとかものにしたいと思います。いつのことやら……。

>donjiさん

 基本、USKは72だしマイナー機だし、donjiさんの守備範囲どまんなかですね。ありますよー、うちにも袋入りUSK。

 考えてみると、スペホビのミルスキIIも、AZURのロゴザルスキも、同じMPMの中でのリニューアルなんですよね。それにしちゃずいぶん形が違うなあ(笑)。

 まあ、それを考えると、48のクラエアのフォッカーD21も、初代と二代目じゃ、だいぶスタイルが違いますけれど。

 しかし、どこか「このアイテムが気に入って企画した」という感じがにじんでいる気がして、古いキットもなんとかしたい会社ではあります。

>hideさん

 おや。hideさんも飛行機、おやりになる?

 メリジョナリRo37は、我が家にも、どこか棚の奥にあった気がします。しかし「アメリカ人よ、我等の自由を守れ!」は記憶にないなあ(笑)。しかし、ホントに箱裏とか箱横をなんだと思ってるんだろう(笑)。まあ、昔台湾のタバコは、箱に「ナントカ主義を実践して大陸国土を回復しよう」と書いてありましたけど。

投稿: かば◎ | 2012年5月 8日 (火) 23時11分

ロゴザルスキー IK-3 が出た時は本当に嬉しかったなぁ。
2回作って、まだ2個くらい在庫があるはずだけど、ホントに IK-3? というくらい似ていない(笑)。

ミルスキのキットもどこかに2個くらいあるハズ…。

今じゃいいキットが出てくるようになったけど、マイナー機の出してくれるパイオニアでしたよね。

投稿: 赤狐 | 2012年5月13日 (日) 09時02分

>赤狐さん

USKも初期の単発機はほとんど新キットが出てしまいましたね。
ミルスキIIとかロゴザルスキIK-3とか、よもや新キットが出るとは思わなかった……それどころかロゴザルスキ新キット競作って何なんだそりゃ(大笑い)。

というわけで、ロゴザルスキは(いわばUSKのリニューアル版にあたる)AZURを買いました。ミルスキは、もともとあまり実戦に出ていない試作機には惹かれるところが少ないので、USKがあればいいかなー、というわけで新キットとの比較はしていません。どれくらい違うんだろう……。

それにしても、USKのロゴザルスキを2回も作っている方には初めてお会いしました。お見それいたしましたm(_ _)m

今は簡易メーカー/ブランドがいくらでもあって、メジャーメーカーまで含めて小国飛行機がぽろぽろ出てくる時代ですけれど、確かに、USKはそんな時代が来る前に(我々のような)小国ファンが「よぉし! よくやってくれたぞUSK!」と言いたくなるアイテムを出してくれた会社でした。私も結構、この会社には愛着があります。

……そのくせ1機も完成させてないんですが。うーん。ダメダメです。

投稿: かば◎ | 2012年5月15日 (火) 18時39分

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