埋蔵飛行機
●2日夜半に「大雨・洪水警報」が発令され、明け方にかけてざんざか雨が降る。
●仕事が進まないので、例によって(?)ストック漁り。
収納ボックスをかき回すと、「うわっ、これ、どうすんだ?」「こんなもん、いつどこで買った?」というキットがぞろぞろと出てきて、若干憂鬱な再発見の楽しみに耽る。
先日、バキューム時代最後期のMPM48のFw58ヴァイエを紹介したが、今回漁った収納ボックスの中からも、袋入りの小物のバキュームフォームのキットが出てきた。
おそらく、ストックを全てひっくり返せば数十のバキュームフォームキットが出てくるだろうと思うのだが、レジンキットや簡易インジェクションで新作が出てしまったものも多く、しかも古いバキュームフォームキットときたら小物は自作か流用、肝心の胴体や翼もへろへろだったりする。そうなると、余白をプラバンとしてリサイクルするくらいが関の山。
そんななかでも、そこそこ出来がよく、今でもまだ通用しそうなキットをいくつか。
●比較的良質のバキュームフォームキットを出していたエソテリック・モデルズの72、「ヴォートO2U-1コルセア」。
コルセアといえば逆ガルの戦闘機のF4Uと、戦後のジェット艦上攻撃機のA-7が有名で、A-7にはコルセアIIの愛称が付いているのだが、実際にはF4Uは3代目、A-7は4代目にあたる。
で、マイナーな初代コルセアがこのキット、複葉のO2Uで、この後にやはり複葉だがもう少し機体形状が洗練された2代目、O3Uがある。戦前、中国はO2Uの輸出型V-65C、O3Uの輸出型V-92Cを購入し、それぞれ「老可塞」、「新可塞」の名で日中戦争初期に使用している。
当然(?)、私としては中国空軍機として作りたくて買ったもの。バキュームパーツの表面はそれなりに細かく上品なモールドで、主翼のリブ表現は細い凸筋だけだが、悪くない。エンジンや車輪などの小物はホワイトメタルのパーツ入り。胴体支柱など用には、コントレールの翼型プラ棒が用意されている。今ではレジンキットもある機種だが、これならそちらに乗り換えなくてもいいんじゃないか、と思う出来ではある。結構印刷の綺麗な米海軍デカール入りだが、袋の中に密閉してあったにも関わらず、一部変色してしまった。どうせ使わないけれど……。
しかし問題は、中国空軍で使われたV-65Cと、このO2U-1の細部仕様の差がよく判らないこと。「抗日戦争時期(1937~1945)中國空軍飛機」(陳應明著、中國之翼出版社)によればV-65CはO2U-1の輸出型ということになっているが、少なくともラダーの形状は違う。本家のO2Uは、O2U-2で主翼スパン延長、O2U-3で尾翼形状変更などとなっており、V-65Cで主翼延長などの仕様変更も導入されているとかなりややこしいことになってくる。……というわけで、ある程度キットの出来はよくても、その辺が明らかになるまで手の付けようがない困ったちゃん。
●バキュームフォームキットといえば、ガラスなどに耐水ペーパーのシートを貼り付け、プラの厚み分を丁寧に削り落としてパーツを張り合わせ……というのが一般的イメージだが、これは普通の航空機キットの場合。
AFVのバキュームだと輪郭線で切り取って箱組みだったりするし、同じ航空機でも第一次大戦以前の古典機のバキュームだと翼が上面しかなかったりするという具合に、多少作法が異なってくる。翼が上面だけ、というのは、もともと翼が薄いので、プラバン1枚分の厚みで充分、という意味。もっとも実際にはそれでは若干厚み不足になる場合も多いようだ。
そんな古典機のバキュームが我が家には結構ストックされていて、そのうち結構まともな出来な一つが、このフェニックス・モデルズの72、「コードロンG.IV」。同機はコクピットを納めた胴体(と言えるのか?)は双発の両ナセルと同じくらいの長さしかなく、推進式でもないのに尾翼ユニットは骨組だけで支えているという、独特の構造。
その骨組と支柱は、上記エソテリックと同じようにコントレールのプラ棒から切り出せという指定で、数種のプラ棒がセットされている。とはいっても、コントレールのプラ棒はかなり柔らかいので、機体の大半を占める骨組をこれだけで作るのはかなり不安がある。
主翼は厚みのある前半と、まるきりぺったんこの後半という独特の翼形。前述のようにキットの翼は片面しかないので、前半は裏面をプラバンで補う必要がある。後半は裏から削り込んで薄くするか、あるいはいっそ、プラバンで作り直してしまうのも手かも。フランス、イタリアのデカール付き。
実を言うとコードロンに関しては、ほとんど同じ設計で単発のコードロンG.IIIの、複合素材の1:24、大物かつ難物のキットも作り掛けで所蔵している……あれもそのうちなんとかせにゃ。
●マニアックなラインナップの飛行機用デカールで有名なブルーライダーは、同じくマニアックなラインナップのバキュームフォーム・キットも出していた(おそらく今はもう出していない)。
そんなブルーライダーのキットを一つ。ネタは上記コードロンに近い、第一次大戦前半に使われたファルマンの推進式、有名なMF.11。もっとも私が入手してあるのは何故かそのイタリア生産型の「フィアット/サヴォイア・ポミリオF5B」。MF.11で充分な気がするのに、なんでさらにマイナー方面に転げるかね……>昔のオレ。
デカールが主の会社だけに当然コレもデカール付き。小物はホワイトメタル、翼間支柱はコントレールのプラ棒と、キット構成は上記2キットと似ているが、もっとすごいのは、胴体の骨組部分と脚柱周りなどを厚手のエッチングで用意してあること。ちなみに胴体骨組にくっついている三角板部分は垂直安定板。うはははは。
しかし(上のコードロンも同様だが)混み入った構造の機体であるにも関わらず、説明書は3面図が載っているだけで、組み立て説明は簡単な文章だけ。どうしろと!
このキットは、すでに主要パーツをざっくり切り出してあった。上下の主翼は右のような感じ。72でもそれなりにスパンがあり、もし完成させたら結構見栄えがしそう。翼表面のリブ表現は凸筋だけだが上品で良い。
水平尾翼だけは裏側も削りこんでみた。例によって翼のパーツは1枚式だが、水平尾翼はもともと厚みはないのでこのままでいいとしても、主翼は裏側にプラバンを貼って、多少厚みを増したほうがいいかもしれない。
……いやしかし、本当にいつかこれらを作る日は来るのか?
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コメント
そういえば昔は”ポケールのコードロン”が合い言葉だったような。
投稿: はほ/~ | 2012年5月 4日 (金) 19時32分
うん、絶対に、もしもツッコミが来るとすればはほちんだと思った。
投稿: かば◎ | 2012年5月 4日 (金) 21時37分
バキュームはレアプレーンのP-43とエアモデルのC445ゴエランが作りかけのまま手元にありますヨ。完成するのかなあ?
↓こんなものが売られているとは・・・。
案外欲しかったりします。
http://www.soviet-power.com/product.php?cat=44
投稿: きっかわ | 2012年5月 6日 (日) 19時26分
>きっかわさん
レアプレーンのP-43ランサーは、私が初めて作って完成させたバキュームフォームキットです。まだ探せばどこかにしまってあるんじゃないかなあ。脚くらい取れちゃってるかも。
確かエンジンはハセガワの零戦から持ってきたんじゃなかったかと思います。キャノピーは自分で絞り出しました。
全体的に1:72よりちょっと小さめ、そのまま削り出すと機首部分で幅が狭くなって変な平面形になるので、プラバンか何かを挟んで付けたような気がします。
……っていうか、バキュームとしても古すぎて今から作るキットじゃないかも。
ブジョンヌイ帽、いいですね。学生時代だったら買っちゃってたかもしれません。冬にこれをかぶって学校に行きたかった(笑)。
投稿: かば◎ | 2012年5月 6日 (日) 22時31分