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パック

●といっても、天王星第15衛星のことではない(誰もそんなもんは知らんよ……)。

ここは普通に(?)、Panzerabwehrkanone(対戦車砲)の略号=PaKのほうである。

F1031750●先日来のミニスケールのマイブームで、今度はフジミ1:76のPaK40を少しいじってみた。もともとI号戦車系列のオマケで我が家には大量に余っており、ジャンクパーツとして利用したりもするのだが、今回もそのつもりで出してきたにも関わらず、防盾を二重にしたり、揺架のレールに溝を掘ったり。まだ10門分くらいパーツが残っている。それにしても、なんでI号戦車/I号対戦車自走砲のオマケがPaK40なんだか……>フジミ。

ちなみにこのキット、車輪が穴なしと穴あきの2種付いており、当時のフジミのこだわりを感じる。今ならミニスケールのPaK40はもっと細かいものがRODEN(72)ほかで出ているはずだが、パーツ数は抑えてあっても、これもなかなかのものだと思う。

砲を作ると牽引車輌も欲しくなるが、76のコムソモレツなんてレジンキットでも現行品があるかどうか……(Sd.Kfz.11とかRSOとかでもいいのだが、わざわざコムソモレツを持ち出すのがフィンランド・ファン)。

●さて、というわけで。

PaK40のドイツ以外のユーザーとしてはハンガリー軍でもルーマニア軍でもいいのだが、ディオラマ派ではない私の場合、それではドイツ軍装備と何の変わりもない。塗装でそれとわかり、しかも1944年夏の防衛戦で活躍したイメージの強いフィンランド軍PaK40について考えてみる。

継続戦争終盤のフィンランド陸軍は、ドイツから種々の対戦車兵器を供与され、一番の高級品はもちろん“シュトゥルミ”だが、対戦車砲も7.5cmPaK40を始め、7.5cmPaK97/38、5cmPaK38などが記録写真に多く登場する。

ここで改めてフィンランド軍の使ったPaK40(戦時中の写真及びフィンランドに現存している展示品写真)を見ると、妙にホイールにバリエーションがある。しかし一方で、(タミヤのキットと同じ)プレス(?)の穴の無いホイールは、その中には確認できず、少なくともフィンランド軍のPaK40に、穴無しホイールは使われていない可能性がある。

現時点で、フィンランド軍PaK40のホイール形式として把握しているものは――

(1).穴無し型と似たような、凹凸が交互になったリブ(スポーク)を持つもの。ただし、穴無し型では凹凸それぞれ5条なのに対し、こちらは4条ずつ。

(2).やはり8条のスポークを持つが、全て表側から見て凸。凸の肩部が角張っている。スポークの間には水かき状に平面部があり、1つ置き、4カ所に小穴。

(3).全凸・8条スポークの別形式。スポークの間の“水かき”は交互に大小となっており、大きい方に小穴。スポークの肩部は上のものより若干丸い。

(4).6条のスポークを持つもの。

  • クーテルセルカ戦、「流血の夏」p141、上写真。

なおマズルブレーキ形式として付記してあるのは、「前・後」順で、横は横方向にエラが張っていて上下は削られているもの。

●PaK40のホイールのインジェクション・パーツとしての模型化状況だが、

・AFVクラブは上記(2)、(3)の間くらいの形状。“水かき”部の形はあまりよくない。

(4月26日訂正。AFVクラブのパーツは、上記(2)、(3)の間くらいの形状に見えるが、実際にこういう形状のものもあるようだ。このページの写真1枚目、ギガント前のものを参照)

ドラゴンはやたらに選択肢があって、

・最初の「#6249 7.5cm PaK 40 w/Heer Gun Crew」で3種類、穴無しと穴あり2種、穴あり2種は8条のスポーク/“水かき”無し(つまり上記のどの形式にも該当せず)と、8条のスポーク/“水かき”ありだが窪み付きゴムタイヤを一体化してしまったような形のもの(上の(2)を表現しているのかもしれないが、形はだいぶ異なる)。

・次の「#6250 7.5cm PaK 40 Late w/Fallschirmjäger Anzio 1944」ではやはり3種だが、共通なのは穴無しだけで、穴あきはおそらく、上記(1)のタイプと(2)のタイプを表している。ただし(1)のタイプと思われるほうは、表から見て凹のスポークの表現がだいぶ違う。

・さらにややこしいことに「#6440 7.5cm PaK 40 w/Heer Gun Crew Premium Edition」というのもあって、これは「#6250」と同じ3種。

ちなみにドラゴンのPaK40は最初の#6249では脚が長かったり揺架が短かったり、多少怪しげだったのが、#6250以降は修正が入ったらしい。その辺のことは、PMMSのレビューを参照のこと。

なお、

・タミヤは穴無し型のみ、

・(すでに絶版かもしれないが)イタレリは6条スポーク。おそらく(4)のタイプだが、実物の写真は不鮮明でディテールがよく判らず、イタレリのキットのほうも現物は手元にない。

・ちなみにフジミ76は穴無しと6条スポーク。

●かさぱのす氏によれば、PaK97/38もフィンランドでは穴あきタイプばかりだそうだ。ただし、PaK38に関しては穴無しもフィンランドで使われている。例えばミッケリの展示砲

なお、PaK97/38のキットはドラゴンのものは穴無しホイルだが、イタレリは穴あきタイプ。上記PaK40の(1)同様の凹凸交互8条のもので、フィンランド軍装備品として写真で確認できるものと同じ。

もっともどの砲も、わざわざホイールの形式を指定して輸入するはずもなく、単に生産時期との係わりでたまたまそうなったものと思われる。穴無しホイールのほうが初期型だと思われるので、PaK40やPaK97/38で「実は穴無しもありました」となっても不思議はない。もしフィンランド軍の戦時中の写真などでPaK40もしくはPaK97/38で穴無しホイル装着のものを見かけた際には、ご一報下されば幸い。

●とあるSNSのゲームアプリ内に出てきたメッセージ文。

でこぼこの道は<用户名>純情の気持ちに妨げとなってはいけい!さらに途でラッキーもあるよ!

……わからん!

このへんのアプリとかは中国製、あるいはMMORPGでは昔から韓国製が強いが、ヘルプの文章とかゲーム内のメッセージはそれぞれ「同じ漢字を使う国」「語順・文法が基本同じ国」という油断もあってか、怪しい文章がよく見られる。……が、ここまで散々なものもちょっと珍しい。

以前書いた「神保町シディークの本日のメニューの看板」のように、「がんばって伝えようとしてたどたどしい」のが微笑ましいのだが、上記アプリの会社はそもそも正しい日本語に近付けようとする努力を放棄している気配があってよろしくない。

●タミヤからエレファントが出るそうだ。「ドラゴンからほとんど決定版的キットがあるのに今さら?」とか「それよりも**を出すべきでは」といった声も散見。

しかし、一昔前なら「タミヤが手を出さない/出していないスキマを衝いていこう」というのがドラゴンなど他のAFVキットメーカーだったのが、今ではタミヤからキットがあっても他からよりディテールを追求した同一アイテムが次々に登場し、タミヤがスキマ埋めを期待される時代になったのかと思うと、別にタミヤ主義者でなくても寂しいものがある。

一方、ファインモールドからは四式中戦車が出るそうな。アイテム自体には、そもそも試作車とか計画車のキット化には(よほど面白い特徴でもない限り)惹かれないので特に言うこともないのだが、「まあ、頑張ってますな」という感想。

●ちょっと前に、セータ☆氏がTheBodyという、Botondを継承したらしい会社の「CV35のハンガリー仕様改修セット」を買った件で「そんなものが出たのか」的に大騒ぎしたが、今頃になって、「河馬之巣」BBSのほうで、今年の1月にめがーぬさんからまったく同じ製品のニュースを得ていて、ほとんど同じリアクションを返していることに今頃気付く。迂闊というか、なんとも失礼な話。

人の話はちゃんと心に留めておけ!!

F1031756●模型棚の奥からの掘出し物シリーズ(いつシリーズ化に?)。

Kibriの鉄道物スケール建築物、HOスケールのハーフティンバーの建物。説明書には「FACHWERK - RATHAUS "URACH"」と書かれている。直訳すれば、「トラス構造の市庁舎、ウーラッハ」?

ちゃんとモデルがあって、南独の温泉保養地、バート・ウーラッハの市庁舎だそうな。

5年とか10年とかのスパンで、時折、発作的にこういう建物系が欲しくなってしまうことがあり、以前にも同じくドイツVOLLMER社のゴチック様式の教会(HOスケール)を買って組んだことがある。黄鶴楼については当「かばぶ」でも紹介済。

この手の「ドイツ製の妙に凝っている建築物模型」は値段のほうもバカにならないのだが、このKibriのキットは、かつての静岡ホビーショーのフリマかどこかで、放出品を安く譲って頂いたものだった気がする。

F1031754 中身はこんな感じ。おそらくバンダイ以前に、このあたりのメーカーは多色成型を駆使していたのではと思う。このキットも壁面は焦げ茶と白のプラの2段階成型、しかも非常に美しい。こうなると、がっちり塗装するよりもプラの地の色に若干の墨入れやウェザリングを施すだけで、あとはつや消しコートを行う程度のほうがいいのではないかとも思う。

しかし、ほぼ平面のパーツが箱にギッシリ収まっているため、作り始めてしまうと箱に収納できなくなる。しかもどうやらこのキットは現在絶版のようで、手を付けていいものかどうか悩む。

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コメント

「PAK」って単語で検索してみると、こんなに色んな意味があるのか!・・・ってことはさておき:

(以下、ウチのBBSとカブりますが)
 今年は久しぶりに静岡へ作品を持って行けそうなのでそれどころではないんですが(おい!!)、主に現地調達の資料をつらつらと見てみたところ、やはりフィンランド軍のpak40は「穴あき」ばっかりです(今のところ我が家で確認できる範囲内では)。 ホイル形状が確認できない、正面または後ろからしか写っていない砲の写真も散見できますが・・・そんなヤツらが実は「穴なし」だったりして(あぁイヤラシ)。

 ところでイタレリpak40単品は絶版ですが、RSO/03のオマケに付いてますよ。 pak97/38は無理して手に入れる必要があるかビミョーなキットですが(いや・・・味のあるプラモデルです(~~))、値段が神的に安いので損した気分にはなりません(←そんなフォローあるか!)

投稿: かさぱのす/かさぴー | 2012年4月21日 (土) 05時36分

ウチにある素組・未塗装のPak40はタミヤにイタレリのホイールを履かせてますが、実砲のパーツに比べてスポークが細身な感じですね。それよりもソリッドゴムタイヤのトレッドにモールドが何も無い(要するに一体成形)方が今時は辛い所です。や、最近のロットは改良されてるのかもしれませんが。
このホイール、バリエーションが多いのは時期的な問題だけなんでしょうかね。工場差分も含んでるのじゃないかと昔から気になってる所です。

投稿: hide | 2012年4月21日 (土) 11時53分

>タミヤのエレファント

昔、AFVクラブが虎Ⅰを出したとき、「どうしてタミヤやドラゴンに優れたキットがあるのに、AFVクラブでも出すのか?」という質問に対する社長の答え。「虎Ⅰは、飲料メーカーにおけるウーロン茶みたいな存在。ウーロン茶は、他のメーカーが出しているからといって、出さないメーカーはないでしょう。」う~ん、わかるような、わからんような…(笑)。記憶違いだったら、ゴメンなさい。

投稿: TFマンリーコ | 2012年4月21日 (土) 14時04分

>かさぴー

ありゃま。RSOのオマケのPaK40って、昔のまんま?
RSO搭載型を出す特に、ちょっと何か変わってるのかなーとか思ったりもしたのだけれど。

>>ホイル形状が確認できない、正面または後ろからしか写っていない砲の写真も

いやいや、だからこそ、最終的に面倒臭くなった時に、「あの真正面/真後ろからのヤツはこのタイプなんだよ!」と言い張って逃げられるわけじゃないですか。はっはっは。

>hideさん

>>ウチにある素組・未塗装のPak40はタミヤにイタレリのホイールを履かせてますが

また渋い作り方を(笑)。トレッドですが、ジグを作ってノコを入れるとか、あるいはプラペーパー細切りを一巻きするとかは如何ですか。いや、実はフジミ76を、そのどちらかで筋を入れてやろうと思っているもので。

ホイールのバリエーションの問題ですが、基本、穴無しは初期型としてよさそうですが、ここに上げた(1)~(4)は、導入時期に差はあるとしても、おそらく43年ごろに(生産工場の違いで)並行して作られていたものではないかと思います。

http://www.jaegerplatoon.net/AT_GUNS2.htm#75PstK40

ここによれば、フィンランドは43年5月末と6月半ばの2回に分けて50門を受領しています。基本的に新品を受け取ったとすれば、それほど大きな生産時期差は生じないはずです。

数少ない例なので断言は出来ませんが、(1)のホイール形式の場合、マズルブレーキは初期の形質のようです。これも、(1)は(2)(3)よりちょっと初期型かも、と推定することも可能ですが、(1)のホイールを納入されていた工場では、古いマズルブレーキのストックがあった(あるいは古い形質のマズルブレーキを作り続けていた工場が納入していた)可能性もあります。

こういうのは模型にどれだけ反映するかは別として、あれこれ推察するのは楽しいですね。

>TFマンリーコさん

判らなくはないですが、エレファントがウーロン茶級にあたるのかなあ(笑)。

それを言うなら、タミヤにとってドイツ戦車のI~VI号のなかでの唯一の穴、Ⅰ号戦車とか……A型はもうお腹一杯な感じですが、ドラゴンのB型は意外にイマイチが感じのキットだったので。売れないだろうなあ(笑)。

まあ、エレファントは私自身は手を出すかどうか微妙ですが、少なくともアイテムは何であれキット化し出す力があることは喜ばしいことだと思います。モノ自体は大物だし。

投稿: かば◎ | 2012年4月22日 (日) 00時44分

>タイガーI型

日本メーカーにとっての零戦か大和に相当するものなんですねぇ。それにしても、タミヤがエレファントとシュツルモビク出すって、時代が進んだことの証なんでしょうか?

投稿: はほ/~ | 2012年4月22日 (日) 17時04分

>あれこれ推察
ロシアモノやシャーマンで一躍話題の中心になった工場差分ネタ(誇張アリ)ですが、地味で目立たないせいかドイツモノではマダマダ研究の余地がありそうです。
自走砲に積む分も含めれば標準型の砲架だけでも結構な数作ってるハズで、砲そのもの以外の脚やら防楯やらはいくつもの下請けがあっておかしくない筈ですからね。
ウチのPak40は参考までに自ブログに写真上げてみました。トレッドは今なら正にそうすると思います、というか段々いじり直そうという気分になってきましたよ。

投稿: hide | 2012年4月22日 (日) 21時24分

>はほちん

私のイメージでは、「日本メーカーにとっての零戦か大和に相当する」というよりも、「日本メーカーにとって、ティーガーIは零戦や大和に相当する」であって、AFVクラブあたりは日本メーカーに引きずられている感じではないかと。

ヨーロッパのメーカーは、例えば陸物シリーズを結構頑張って展開したマッチボックス76もエッシー72もティーガーIは出していなかったはずだし、イタレリもティーガーは比較的最近ですよね。

それに比べて、日本のメーカーはニチモもオータキもニットーもハセガワもバンダイも、陸物に手を付けたメーカーは必ず出してる感じがします。

それにしてもシュトルモビクが来るとは。もっと昔、アキュリットのない頃にタミヤが出せば、「流石!」と言われたと思うんですが。エデュアルドでも出ていない、I-16の初期型を出してくれないかなー(←妄想)。

ところで、I-16といえば、ARK Modelsというところから48で出るようです(箱絵はweb上にも出回っていますが、中身写真はないので、未発売?)。

この会社のラインナップを見ると、アランホビーとイースタン、マケットあたりの製品をかき集めいてる感じですが、48のI-16はこれまでそのどこからも出ていなかったはずなので、新製品らしい。残念なことに初期型はないようですが、気になります。

投稿: かば◎ | 2012年4月23日 (月) 00時09分

>hideさん

 最近、ドラゴンのIV突がらみで、「クルップ・グルゾン工場製特有の補強板2枚タイプの誘導輪基部」というのが話題になっていましたし(四谷仙波堂HP参照)、上部転輪の4個→3個も工場による差異があるそうで、ドイツ物でも工場の差異は結構研究が進んできているようです。

 要するに、規格も技術者の気質もしっかりし過ぎているドイツでは、ソ連物などに比べてパッと見の差異が出づらいということもあるんでしょうが、例えばフィンランド軍III突などは輸入時期が限られ、台数も限られ、しかも下手に1輌ずつ追えてしまうものだから、工場別差異は押さえる必要がありますし、また、空物まで広げると、メッサー109の工場別細部形状差異も、最近はずいぶんヤカマシイことになっているようです。

投稿: かば◎ | 2012年4月23日 (月) 00時17分

>パッと見の差異が出づらい
それだけに頑張って調べて再現しても、ほとんど誰にも判ってもらえない、
という自虐的楽しみ方にはうってつけですね(^-^;。
Ⅲ突のMIAGとアルケットってのは大分浸透して来たっぽい
(といっても一部の好事家の間だけでしょうが)ですが。

>メッサー109の工場別細部形状差異
うはぁ、そっちもそんな事になってますか~。
ちょっと面白そうだ。

投稿: hide | 2012年4月24日 (火) 17時13分

ああ、そうか。日本の戦車ってアレだもんなぁ。その代わりなんだろうなぁ、と納得。

投稿: はほ/~ | 2012年4月24日 (火) 20時38分

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