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第二次大戦イタリア機の形式名

●mixiの「つぶやき」欄で、KWAT氏が「マッキのヴェルトロの形式名は『MC.205』と『C.205』のどちらが正しいのか」と言っていて、改めて大戦中のイタリア機の形式名についてつらつら考えてみる。

もちろん、このあたりばっちりくっきり解説している本も世の中にはありそうで、要するに、単に現時点での自分自身の理解を整理しているだけ。

●そもそも飛行機(に限らず戦車でもなんでも)の形式名というのは国ごとにある程度規則付けられているのが普通で、例えば制式年によるもの(日本陸海軍、ただし海軍の航空機は戦争終盤漢字名前に変わる)、種別記号+通し番号(アメリカ陸軍)などは割と規則としては判りやすい。この辺は国なり各軍なりでの統一性重視派といえる。

一方で、ドイツはメーカー略号+番号。番号自体は何となく通しだが、発展型や後継機種だと上の桁を進めたりするので結構アバウト。フランスもこれと近いがさらにアバウト。これらはメーカー重視派といったところ。

ちょっと変則的なのになると、ソ連軍(設計局+局ごとの通し番号だが種別で偶数・奇数が分かれる)、アメリカ海軍(種別記号+メーカーごと通し番号+メーカー記号)なんてのもある。が、まあ、とにかくそれぞれ、それなりの理屈なり事情なりがあって決まっているわけだが。

●その伝でいくとイタリアは「メーカー重視」系ではあるのだが、略号の付け方と数字に、どうやらメーカー横断の一貫性を設けていない。

で、先のKWAT氏の疑問の答から言うと、戦時中のフォルゴーレ、ヴェルトロに関しては、C.202、C.205とするのが恐らく最も無難。実機の尾部に書かれた機種名が、基本「C.202」、「C.205」になっているため。

ちなみにこのCは、戦前のシュナイダー・レース機から200~205シリーズに至るまでの主任設計者であるマリオ・カストルディ(Mario Castoldi)にちなむ。M.C.と書く場合のMはマリオではなくメーカー名のマッキを示すものであるらしい。

さて、「無難」とか「基本」とか歯切れが悪いのは、この記入の仕方に幾通りかあるためで、実を言うと、202の場合は「M.C.202」と書いてあるケースもあるのが悩ましい。ただし、私が見た写真で「M.C.202」と書いてあったのはserie VI(ブレダ製)、「Aeronautica Macchi C.202」と書いてあったのはserie VIIとXIII(本家マッキ製)だったので、とりあえず本家の表記に従おう、という次第。きちんとメーカー名まで書いてある場合は重複になるのでMは書かない、ということなのかもしれない。また、隅から隅まで調べつくしたわけではないので、本家製で「MC」表記のものも、もしかしたらあるかもしれない。

なお、205の場合はそもそも“Veltro”と愛称しか書いていない場合と、「C.205v」と形式名を併記している場合がある。またメーカー名は「Aer. Macchi」と省略形。しかしこれで行くと、通常「C.205V」と大文字で書かれるVも、本来は小文字で書いたほうが……なんて意見もどこかにありそうな。

さらに付け加えると、前身のサエッタの場合は「C200」と、間のピリオド無しで記入してあったりするので、要するに「まるっきりテキトー」である可能性も。

●さて、それでマッキについては一件落着してくれればいいのだが、実は戦前に遡ると、速度記録を出したタンデムエンジンの水上機M.C.72は、逆にM抜きで書かれることはなく、機体にもそう書かれている。そのあとのいくつかの機体も「M.C.」が基準らしい。

それ以前のM.39とかM.52とかでは、やはりカストルディ設計のはずだが、今度はCがない。どうもこのあたりは、第一次大戦中のM.3、M.5戦闘飛行艇あたりからの続き番号のようだ。

一方で戦後になると、エルマンノ・バッツォッキ設計のMB.シリーズでは、また「メーカー頭文字+設計者頭文字」に戻っている。ふんがー。

●では同じイタリアの他のメーカーはといえば――。

フィアットは基本、設計者の頭文字だが、複葉戦闘機のCRシリーズと「イ式重爆」で有名なBR.20のように、同じチェレスティーノ・ロザテッリ設計で、C(カッチャ=戦闘機)、B(ボンバルディエーレ=爆撃機)の種別を頭に添えているものもある。……が、同じフィアットでも、ジュゼッペ・ガブリエッリの場合は戦闘機だろうが輸送機だろうが全部G.だけ。何なんだ。種別も添えるのは同社戦前方式?

CANTはフィリッポ・ザッパタ設計のZ.501、Z.506、Z.1007のように、基本、設計者頭文字。

サヴォイア・マルケッティはメーカー名頭文字SMに続き番号。

カプローニもメーカー頭2文字(Ca)+番号でドイツと同形式。スタジオ・ジブリの名の由来であるCa.309ギブリ、その発展型Ca.310リベッチョなどが有名で、第一次大戦中のCa.1からのそのまま番号を重ねて来ているらしい。

レッジャーネはRe2000~Re2005のようにメーカー頭2文字。カプローニ系列のメーカーなので親会社に倣ったのかも。しかしなぜ番号がいきなり4桁から始まるかな。

しかし同じカプローニ系でも試作戦闘機カプローニ・ヴィツォラF.4やF.5は設計者頭文字(F.ファブリーツィ)。もうわけわからん。

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資料・考証」カテゴリの記事

コメント

詳細な考証、ありがとうございます。
イタ機の名前、ホントに一貫性がなくてわけわからないですよね。
でも、そんないい加減さが魅力のひとつなのかも?
楽しいですね…。

投稿: 赤狐 | 2011年11月21日 (月) 08時49分

 ご高察ありがとうございます。これだけいろいろ考えてもスカッと解決しないあたりがイタリア的でよろしおすなw てことで、ヴェルトロについては「C.205」でいってみやうかと。イタリア製であるイタレリのキット名より、チェコ製のデカールのタイトルのほうが無難であるというのがなんともですが。

投稿: KWAT | 2011年11月21日 (月) 09時47分

勉強になります。
フォルゴーレやベルトロの作品カードを書く時、ついついM.C.202やM.C.205と書いてしまう癖をなくさなくては。
いつもこのあたりで迷いが生じていました。

投稿: P-斎藤 | 2011年11月21日 (月) 11時13分

少なくともMacchi c.202に関して言えば、当時の空軍省のマニュアルでもAER.MACCHI C.202になってるから、これが正式な型式名称なんでしょうね。。。
日本(国土交通省航空局)式に言えば”アエロマッキ式C.202型機”かな↓
http://www.ebay.it/itm/MACCHI-MC202-FOLGORE-AVIAZIONE-AERONAUTICA-AIRCRAFT-/190555455314

投稿: ゆたか@Sapporo | 2011年11月21日 (月) 23時30分

べ、べつにくわっちんのために書いたんじゃないんだからねっ!

……すみません。単に一度そういうことを言ってみたかっただけで、深い意味はありません。

空軍省マニュアルでも「Aer. Macchi C.202」なら、やはりc.202で書くのが一番無難なんでしょうね。これも社名付きだからMナシなのかもしれませんが。

もっとも、例えばこれはAFV畑の話ですが、大戦終盤に出たドイツの駆逐戦車「ヘッツァー」は、兵器実験部とか、参謀本部とか、機甲兵総監部とか、あちこちの文書で、

leichter Panzerjäger auf 38(t)/Le.Pz.Jäg.38(t)
軽戦車駆逐車38(t)

だったり、

Jagtpanzer 38
駆逐戦車38

だったり、

Stu.Gesch.38(t)
38(t)突撃砲

だったりと、かなりのブレがあります。まあ、多数決的に言えば「軽戦車駆逐車38(t)」か「駆逐戦車38」が勝ちそうですが、それぞれ公式文書なので、こうなるとどれが制式名称やら、という感じです。

M.C.202も、何しろ実機のシッポにそう書き入れられている例があるくらいなのですから、今後また書いてしまっても堂々としていてよさそうですよ(^o^)>P-斎藤さん

それにしても、やはりイタリアはメーカーごとに(あるいは同じメーカーの中でさえも)脈絡がなさ過ぎです。

投稿: かば◎ | 2011年11月21日 (月) 23時53分

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