BT-42の重箱の隅(1)
●タミヤのBT-42をいじり始めたので、細かい考証など順不同に。
もっとも、これがEECのキット相手だと「ここだけはぜひ手を入れたい」だの、「ここはもちっとこうであって欲しかった」だのテンコ盛りで書けるのだが、タミヤのコレは基本、非常によくできたキットで、実際、表題の通り重箱の隅な話である。
●BT-7/1935年型がタミヤから出たことだけでも結構な驚きで、1935年型を出したからにはいずれ1937型は既定路線だと思ったが、1937年型をすっ飛ばしてBT-42とは、フィンランドAFVファンの私あたりが流したガセネタならともかく、くらいの意外性だった。
そもそも「1937年型は当然出ると思った」と言っても、それぞれ標準的な1935年型と1937年型とでは砲塔だけでなく、車体の細部にだいぶ差異がある。
私も以前は、砲塔リングが広がったことによる第2転輪用サススプリングの頭近辺のあれこれの変更、くらいしか認識していなかったのだが、その他にも、砲塔の進化と前後して結構変化がある。これについてはセータ☆氏がブログですっきりまとめているので、そちらを読むのが早い(写真は本文と特に関係ありません)。
実のところ、タミヤは当初、1935年型と1937年型とでそう細かく違っているとは思わずにうっかり1935年型から出してしまい、後で気付いてあーら大変状態だったのではと先日会った際に青木氏が言っていたが(某模型店主氏もそう仰っていたとか)、私もそう思う。
これがひと昔前のタミヤなら堂々と「そんな細かいところはイイヤ」で出してしまったかもしれないが、流石に今の世ではそうも行かないというところか、実に丹念に手を入れて来ていて、共通部品枝は約半分しかない。頑張ってるなあ。
●まずはオリジナルのBTとしてのあれやこれや。
・単に差異をフォローしているだけでなく、1935年型では忘れられていた誘導輪基部の車体側モールドも追加された部品が入ってるなど細かい。
・1937年型では第2転輪用サススプリングの頭が車体上面に突出しなくなった代わり、車体横に台形のパッチが付く(パーツF13、F14)。おそらくサス調整用のアクセスパネルなのだが、新砲塔が乗るのと同時ではなく、37年型でも初期の車体にはない。また同じく大型の砲塔が頭位置にかぶるBT-7Aにもない。この場合、サススプリングを頂部で調整すること自体を諦めているのか、車内側からどうにかするようになっているのか、謎。
・上記パッチは単に側面装甲に重ねてあるのではなく、実際には側面装甲に切り欠きがあって、そこにはめ込んで止めるようになっている。右図の左がキットの状態で、右が実車。キットに同梱のBT-42ディテール写真リーフレット裏面右肩の写真を参照のこと。
・上記パッチのパーツ(F13、F14)はキットの通りだと装備品で隠れるので取り付け穴があったりボルト/リベットの省略があったりする。パッチが表に出るような仕様で作る場合は注意が必要。キットではBT-42の砲塔パーツの枝に入っているので、BT-7/1937年型発売の際は、また別にボルト/リベットが揃ったパーツを起すのだろう。
・車体側面のボルト列のモールドは、僅かに不足がある。図は車体側面のフェンダーより上で、1935年型の場合で第2、第3転輪上、1937年型の場合は上記パッチが付くので第3転輪上のみ。下がキットのモールドの状態、上が実車で、台形に並んだボルトの上に、一段丸く窪んだ中に下より小さめのボルトが付く。ただし、BT-42の場合は第3転輪上も工具箱や追加の張り出しで隠れてしまうのでまったく問題にならない。……しかし、ここが見える1935年型はもう車体の箱組みを終えてしまった。困った。
・車体天井板、戦闘室前側に、キットのパーツでは横一直線に筋彫りがあるが、ここは実際は溶接線であるらしい。砲塔後ろにも筋彫りラインがあるが、こちらは実車では見えない位置なのでよく判らない(が、エンジンルーム上は取り外せそうな気がする)。
・起動輪基部のギアハウジングの張り出し(パーツB10、B11)は、丸まった面上にリベット列がある。たとえばこのあたり参照。
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コメント
鎌倉駅前ですね。ありますよね。
37年型では、第2転輪用サスペンションの調整部が車内に引っ込んだんですが、車体上面に調整部が突出していた箇所は全く穴が無くなった訳ではなく、何やら穴を塞いだような跡がありますね。
マニュアルでは(側面の台形パッチ部分とは別に)「調整時用のハッチ」となってるんですが、ちょっとハッチには見えないですね。
現存車でもなかなかここが写っている写真が無く、いまいち謎です。
タミヤBT-42に付属のリーフレットではこの部分が結構写ってるみたいですが。
投稿: セータ☆ | 2011年7月29日 (金) 22時17分
>>何やら穴を塞いだような跡が
あります、あります。
私の知っている写真だと、tankmasterのこれ(↓)。
http://www.thetankmaster.com/images/afv/BT-7-1938/BT-7_036.jpg
ただ、この車輌は側面の台形パネルのない1938年型でもおそらく初期のもので、穴を塞いだ跡のようなものも、過渡期のものなのかな?などと思ってました。1935年型用天井板在庫流用品とか。
台形パネルのあるタイプでも確認できるものはありますか?
投稿: かば◎ | 2011年7月30日 (土) 02時23分
>>台形パネルのあるタイプでも確認できるものはありますか?
手持ち写真をばばーっと見てみたんですが、「台形パネル付き」の車両で「穴の痕跡様のもの」は確認出来なかったですねー。
そもそも写りにくい箇所だし、写真の解像度が低いともう汚れに紛れちゃいますね。
それよりもやや生産時期の早い、「台形パネル無し」の傾斜砲塔搭載型では、戦時中写真でも「穴の痕跡様のもの」は確認出来ました。
傾斜砲塔搭載のBT-7って意外と現存車両が少ないようで、BT-7M等も見たこと無いですね。そういう意味でもパロラのBT-42は貴重な個体だと言えると思います。
投稿: セータ☆ | 2011年7月31日 (日) 22時10分