薄幸のJSU-152(4)
●戦闘室周りの若干の追加考証。
●前回のハッチヒンジに関する書き込みに対し、青木氏より「ハッチのヒンジの絶対的な位置は同じで,むしろハッチ自体の位置が違う?」との推察コメントあり。
昨日、さっそくコメントへのresを書こうとしたら、長すぎたのかURLを混ぜたのがいけないのか、当ブログの持ち主であるにも関わらずスパム疑惑が掛けられてハネられてしまった。ココログめ!
いやいやいや。それにしても、この和歌山方面からの悪魔の囁きはどうしてくれよう。くわっ。
……などと一瞬浮き足立ったが、これに関しては、「やはりハッチは標準位置でよさそう」というのが私の現時点の評価。
まず、「ハッチのヒンジ位置が違う」というのに気付いたのは(明らかにハッチ本体上で位置が違うにも関わらず、そちらは見落としていた)、当初ハッチヒンジ位置に合わせて目分量で作った件のエンジンルームのフランジが、仮合わせしてみたらエンジンルーム上面板本体に比べ短めだったからで、やはりヒンジ位置そのものが初期型は標準型より若干外側にあるのはまず間違いなさそう、というのが1つ。
さらに上面側ハッチは、“SUOMALAISET PANSSARIVAUNUT”ほかを見ても(上面そのものをしっかり写した写真は見当たらないので正確なところはわからないが)、左辺が戦闘室上面パネル前端ボルト列の左から2番目の僅かに内側あたりに位置し、また同上面パネルの後端ボルト列は、この写真を見ても、標準型と変わらない位置・間隔であるように見えるというのが2つめ。
また、パロラの車輌では後面側ハッチは上面側に比べ、右辺が若干はみ出しているのだが、左辺はそうズレているように見えないので、これは単に実物のハッチの工作自体がいい加減である結果ではと思う。
●なお、第2回で言及した、戦闘室上面のキャップ状のもの(?)に対し、青木氏より「ハッチ開閉ヒンジのシャフト軸受けでは」とのコメントを貰っているが、これはたぶん別のものを見ている。
先の写真やこの写真にかろうじて写っているが、ハッチのすぐ横に出っ張っているのが軸受け、その左側、軸受けとアイボルトの間に写っているのが問題の謎キャップ。エンジンルームの点検ハッチ中央、およびエンジンルーム上面板後方左右、戦闘室左前隅にあるものと同じ、「丸に小さな角穴」のものと同じではないかと思う。
ただ、周囲の盛り上がりはその他の場所に比べ小さく、その点が、オリジナルではなくフィンランドが回収車に改造した際に付け加えたのではないかという疑いを抱かせる。
●その他戦闘室周りあれこれメモ。
・角ハッチのヒンジの軸は、標準型では軸受けから外側にだいぶ出っ張っているが、少なくともパロラの車輌では軸受けまでの長さしかない。これは1945年(終戦後)の写真ですでにそうなっており、最初からの仕様か?
・角ハッチの開閉補助スプリングは、1945年時点の写真でないように見える。最初からなかったのか、単に失われたのか不明。
・展示車輌では失われているが、1945年時点の写真では天井の標準位置にロッド(標桿?、キットパーツG21)の、留め具だけはちゃんと存在している。その両端に位置する、これに関係しているのかしていないのかよく判らない留め具(キットでは天井にモールド)は、少なくとも左側にはある。右側はなく、最初からなかったのか失われたのかは不明。
・ベンチレーターカバーはキットのパーツの標準仕様に対し、パロラの車輌では若干大きめのように見える。足部分に比べ開口部も小さい。これが初期型の特徴なのか、個体差なのかはよく判らない。
・2ヶ所の円形ハッチ周囲の盛り上がりが、パロラの車輌ではキットのようなしっかりした立ち上がりでなく、もっと斜めに削ぎ落ちている。
●一昨日は急ぎの仕事があったので、3個目の上部転輪を結局仕上げ切れず、昨日は忘年会だったので作業進まず。これでは安息日がなくなりそうだが別に私は戒律に縛られていないので良し。
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コメント
戦闘室後部の角ハッチ自体は標準と概ね同じということで良さそうですね.自分で書いておいてアレですが,助かります.
戦闘室後面のハッチは,2枚の装甲板を貼り合わせた構造になっているので(グラパ2001/12p.100),外側の板の寸法が多少いい加減でも大丈夫だったのでしょう.
エクスプリントが出しかけていたソ連装甲車両の百科辞典(全5巻というアナウンスでしたが,第2巻まででペンディングの模様)の第2巻に,ISU-152のプロトタイプの写真がいくつか載っていて(そのうち1枚はコンコード灰色本p.59右下と同じ),それを見ると,
・戦闘室後面ハッチとヒンジの関係は標準通り.
・件のヒンジ棒は,パロラの車輌と同様に,短い.戦闘室上面後部のハッチのヒンジ棒も同様に短い.ヒンジ棒が短いのは極初期の正規仕様だったのではないか.
・戦闘室上面後部の角ハッチの左には,キャップ状のものは無い.そもそも,戦闘室天面の左前にあるキャップはその真下にある燃料タンク関連のものだが,戦闘室内部の左後ろにはタンクのようなものはないはずなのだが…….
・ベンチレータカバーは,標準的なものに見える.パロラの車輌のベンチレータカバーは特別に開口部が小さいのではないか.
あと,思い付くままに,
・戦闘室上面の後半部のリフトアイは,パロラの車輌は4個ともタミヤと位置が違う.それから,熔接してあるリフトアイは,アイボルトとは言わないのでは.
・標準的なIS/ISUではシャシー側面板の最後端部の左右にワイヤーロープをひっかける針金フックがあるが,パロラの車輌では(痕跡も)無い.これは最初から無いようだ.初期のIS/ISUは牽引ロープの装着時の取り回しが異なり,リアパネル左上のターンバックルから出たロープは,リアパネル右上の針金フックを経由して,右側リアフェンダーの上を大回りして,シャシー後面の右側の牽引フックに行くのが,初期の正規の取り回しらしい.IS-2の極初期タイプでも確認できる.だから,シャシー側面板最後端部の針金フックはそもそも無いようだ.
投稿: 青木伸也 | 2009年12月24日 (木) 01時38分
それと,戦闘室側面の合わせ目の下のほう,フェンダー上に斜めにたてかけてあるように見える横長の板についてどう処理するか,態度を早期に決めておいた方が良さそうです.
この部分はフェンダーの底面(水平面)の板材を折り曲げて戦闘室へのノリシロとしている部分なのです.ノリシロの大きさや長さはいろいろあるようですが,いずれにしてもタミヤのように別体の板を後からとりつけたような表現は不適切だと思います.
投稿: 青木伸也 | 2009年12月24日 (木) 01時48分
Wydawnistwo MILITARIA #171「ソ連自走砲1941-1945」p.55上写真のISU-152(1944年7月撮影)は,ベンチレータカバーの開口部がパロラの車輌同様に小さいタイプだなぁ…… ということは,このタイプのベンチレータカバーも初期には普通にあったと考えた方がいいのか.
投稿: 青木伸也 | 2009年12月24日 (木) 19時43分