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薄幸のJSU-152(2)

●タミヤの新キットをお手軽に組み立てるつもりが、フィンランドが鹵獲仕様した特定車輌がいろいろ細部の違う初期型で、いきなり冥府魔道。言ってみれば、定食屋のつもりで入ったらボッタクリバーだった、みたいな。

ただし、同じくフィンランド軍が鹵獲使用したT-34-85が183工場製の極初期型であったのと同様、デビュー当時のJSU-152の姿が判るという点で、考証の対象としては非常に面白い。いえ済みません負け惜しみです。

●いずれにせよ、こちらの見落とし多数を含めメモを公開してくれた青木氏に感謝。

▼足回り

・キットが再現している標準型に対して、初期型では誘導輪位置調整装置の取付角が違っているというのはまったく見落としていた。すでに接着してしまった後だったのでもぎ取って不要なモールドを削り取って再接着。ちなみにこの調整装置、いつ頃の生産型なのか不明だが、ミンスクの車輌ではやはり後ろ上がりだがパーツが細長く、後端がダンパーの上まである。どうも奥深い。

200912200107000 ・上部転輪はパロラの車輌では大穴のないタイプ。これはJS-2の初期型でもよく見られるもので、「薄幸のJSU-152」自体ははっきり判る写真がないが、おそらくこのタイプが使われていたと思われる。しかしそれにしても、防盾はなんだかんだ言っても1つだけだし、その他も大きな改造が必要な場所はないのだが、この上部転輪だけは(地味なくせに)厄介。奥まった部分の穴を綺麗に埋めるのはどうも至難の業のように思ったので、結局、裏から円盤部を削ぎとってプラバンで張り替えた。……結局これも異様に面倒な作業であることが判明したが後の祭り。これを6つもやるのかよっ!(もちろん裏側は穴を埋めるだけ)

・上部転輪基部が6つボルトであるか8つボルトであるかは現時点では不明。この写真を画像ソフトで明るくすると、どうも上側は3本組になっているような感じはするが、センターガイドが被ってしまいよく判らない。ただし、標準型にはある、ボルト間の“不要な穴”がないことは、こちらの写真を明るくしても判る(こっちもセンターガイドが被っている!)。

・パロラの車輌は最前部サスアームが丸型。初期のJSはどうだったっけ。

▼基本車体

・青木氏が言及している、パロラ現存の旧「1212」号車の車体前部上面に貼られている増加装甲は、切り欠き部がフィンランド製フェンダーステイの形状に合わせてあるようで、フィンランドでの改修と考えてよさそう。砲を撤去して軽くなった分、贅沢をしてみたか?

・機関室後部グリルの後ろに標準型では三角の小リブが3つある件は、キットではもともと省略してあるため没問題。ただし普通にJSU-152を作る際には追加したい部分。

・車体後面板の上端2ヶ所のアイボルトがない。パロラの車輌では、これよりずっと外側、キットのパーツではワイヤー掛けのモールドがある部分にアイボルトがある。初期のJS-2でも同じ配置であるため、当初からこの仕様であったものと思われる。「薄幸のJSU」でも、「流血の夏」の写真で少なくとも通常位置にアイボルトがないことだけは確認できる。なお、同写真では、標準型より内側にワイヤー掛けらしきものが見える。これも初期型JSと同様の配置か。

・ワイヤー用ターンバックル掛けは、青木氏の指摘のように、パロラの車輌では車体横にある。「薄幸のJSU」写真では判らないが、これは初期JSと同じで、当時からの仕様であったものと思われる。

・後部フォーメーションランプについても排気管後ろにあるのは初期JSと同様で、これも当時からの仕様であったものと思われる。

・円筒形電装部品(キットのパーツG40)が車体横にある点は、フィンランドの改装ではないかと思ったのだが、“SUOMALAISET PANSSARIVAUNUT”にある、鹵獲時の「1212」号車の写真で、この位置に突起らしきものが写っており、最初からここにあったらしい。しかし、ブザーのボタンではないかと言われるこの部品だが、仮にそうだとすると、増加燃料タンクを積んでいたら押せないのでは……。

・青木氏が言及している、車体後面下部に予備履帯を装着しているという点に関しては、「薄幸のJSU」の写真では判らなかった。初期JSでは、車体前部に付けていない場合はこちらにあるので、確かにそう言われればあって当然な気はするが、これはソ連軍車輌で確認できる写真が?>青木氏

▼戦闘室周り

・戦闘室後面下端にあるボルト止めの“ベロ”は、標準型では左側2ヶ所に三角の切り欠きがあるが、パロラの車輌には切り欠きはない。わざわざ作り直す必然性もなさそうで、当初からその仕様であった可能性は高い。パーツ状態なら修正は楽だったのに、もう車体上部繋いじゃったよ……。

・戦闘室側面の工具は、少なくとも右側面は標準と変わらない様子。撃破時の「薄幸のJSU」写真では右側面に工具は付いていないが、ツルハシ装着用の留め具は確認でき、さらに前方の毛布取付用?のベルトの残滓のようなものも見える。撃破時にはないが、“SUOMALAISET PANSSARIVAUNUT”p180に出ている鹵獲後の再塗装の際の写真では、右側面後部の「カマボコ箱(クリーニングロッドの頭用だったっけ?)」も、多少ひしゃげているがしっかり付いている。

・一方、左側面は、前方フェンダー上のシャックル留め具はあるが、カナテコとシャベルは付いていないように見える。少なくとも「1212」号車では、鹵獲時点でシャベルは留め具もない。

・パロラの車輌では、戦闘室上面後部、角ハッチの左にキャップ状のものが確認できる。1945年秋時点の写真ですでにあるのだが、当初からあったものかどうかは不明。

▼砲周り

・意外に、防盾基部は“湯流れリブ”がないタイプがそこそこ現存していることが判明。初期型らしい防盾を付けているものもある。

●前回の書き込みでは、「薄幸のJSU」について、「おそらくグリーンにブラウンの、境目のはっきりした2色迷彩」と書いたのだが、前記、“SUOMALAISET PANSSARIVAUNUT”の鹵獲後の再塗装の際の写真で見ると、どうやらフィンランド軍正規の3色迷彩に塗りなおされている様子。前線での写真では写り具合で2色に見えているだけらしい。これは「1944年夏に鹵獲されたソ連製車輌はソ連軍との識別のためにフィンランドの3色迷彩が施された」という“SUOMALAISET PANSSARIVAUNUT”の記述とも合う。その昔、「ひぽぽたまんデカール」を買ってくださった皆さん、いい加減な解説を付けてどうも済みません。

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コメント

・上部転輪基部の取り付けボルト
2001年にタンコマステルの別冊?として出た「Танки ИС」に,ISの初期車体の製造時の治具の配置を示す図が載っているのですが,この図では上部転輪基部の取り付けボルト穴が6個に描かれているのです.SU-152では取り付けボルトは6個でしたから,ISも最初はボルト6個だった可能性はあると思います.ただし,決定的な証拠写真は見たことがありません.パローラの実車を覗き込んで見ればすぐわかることなのですが……

投稿: 青木伸也 | 2009年12月20日 (日) 18時59分

・最前部サスアーム
ポズナンの極初期型IS-2では最前部サスアームは角形です.なお,この車輌でも誘導輪位置調整装置は後ろ上がりになっています.

・円筒形電装部品
前述のポズナンの車輌でも,機関室左側面にあります.この位置では押しにくいのですぐに車体後面に移設されたのだろうと思います.

・シャシー後面の予備履板
ISU-152でいうと,たとえばコンコード灰色KV/IS本のp.61上写真.同ページ中写真も同一個体の前からの写真なので,参考になります.

・戦闘室後面下端のボルトどめフランジ
ここは記録写真では確認できなかったのですが,確かに交換するようなものではないので,最初からこうだったんでしょうなぁ.

・戦闘室側面の工具
前述のコンコード灰色本の車輌でも,戦闘室左側面にはバールもスコップも無いようです.

・毛布取付用?ベルト
丸めた防水布をくくりつけるためのもののようです.戦闘室右前方側面にコの字金具のペアがあり,ベルトを通します.コの字金具のペアはもう一組,非常に見えにくい場所なのですが,右フェンダー上の第1ステーと第2ステーの間にも設けられています.

・戦闘室上面後部左側のキャップ状?のもの
これは,ハッチの開閉ヒンジのシャフトの軸受けではないでしょうか.パローラの現存車輌ではどういうわけかシャフトが失われていますが,これだと開閉できないですね.

 あと,タミヤのISU-152自体についていうと,フェンダーの第1ステーより前がちょっと長いような気がするのですが,どうでしょうか.また,リアパネルのヒンジの後端にある四角いブロック(リアパネルの開度制限用か)が省略されています.マズルブレーキの固定ボルトも省略されていますので,付け足してやりたいところです.

投稿: 青木伸也 | 2009年12月20日 (日) 19時02分

初期型IS-2でも第1サスアームは角型ということは、パロラの「1212」が丸型なのはフィンランドにおける交換と考えたほうがよさそうですね。

ちなみに以前のmaniacsの原稿でも私も「パローラ」と書いてますが、発音は「パロラ」(第1音節)だと、以前斉木氏に激しく指摘されましたよ(笑)。

タミヤISU固有の問題として私が気になるのは、戦闘室側面とエンジンルーム側面の角度の差から来る不整合ですね。
この部分、ドラゴンのキットだとまったく同一になっています。実車ではほんの僅かに差があるようですが、タミヤのように明確な差は生じていません。これは戦闘室装甲が寝過ぎなのかエンジンルーム側面が立ち過ぎなのか、その両方なのかよく判りませんが、まあいずれにせよ、根本的な修正が必要な割に「それがどうしたんだ」的部分であり、当然見送ります。ただ、タミヤでは上部分だけにある戦闘室装甲エッジの面取りを下部まで延長し、エンジンルームとの間の溶接痕だけは追加しました。

投稿: かば◎ | 2009年12月20日 (日) 21時10分

パローラでなくパロラですか.私のメモも修正しておきました.

戦闘室と機関室の側面の角度の違いは,確かに問題ですなぁ.直すとすれば機関室側面を,上辺はそのままに下辺を広げる方向でイジるのが,影響がリアパネルまでで済むので,工作は楽そうです.ではやるのかといわれると首をひねりますが.

私の方はタミヤのISUを使って別のネタで製作する予定です.

投稿: 青木伸也 | 2009年12月21日 (月) 00時45分

>定食屋のつもりで入ったらボッタクリバーだった

この場合、強いて言えば「安い店のつもりで入ったけど、あれこれ注文しているうちに勘定が高くなった」という表現の方が適切では・・
これではJSUが余りにも不憫です。

投稿: よしおかきゅう | 2009年12月21日 (月) 10時19分

>定食屋のつもりで入ったらボッタクリバーだった

いやいや、もちろん、タミヤのキットがボッタクリバーだったということではなく、「フィンランド軍ISU」という選択が、という意味です(笑)。

私はもともとIS系列については、まあ、シャーシが低いとか履帯が2分割混ぜ履きではなくて標準的でないとかいろいろあるものの、ドラゴンのいいキットがあるんだし……みたいな感じでいて、実はタミヤの「JS-2」も買ってなかったりします。

しかし、今回「JSU-152」を買って、ドラゴンのストックと比べてみて、まあすでにそれだけ発売時期に差ができたからということもあるでしょうが、細部表現も優れ、しかも組み立てやすくて感激もんでした。皆さんはぜひ、そのまま素直に楽しんでいただきたく(泣)。

いやいや。私の作ってるフィンランド軍ISUも、最初から判って手を付けていれば、パーツ状態では修正が難しくないところも多いんですが(泣)。

ちなみにドラゴンのISUも、オレンジ箱では2分割混ぜ履き履帯がマジックトラックで入るようになって、しかも122も122Sもコンパチで作れますから、ちょっとポイント上がりましたね。

投稿: かば◎ | 2009年12月21日 (月) 10時29分

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