「ウォーターシップ・ダウンこぼれ話」
このところ行き帰りの電車の中で読んでいたリチャード・アダムズ、“TALES FROM WATERSHIP DOWN”をようやく読了(金曜日の行きの電車の中で)。考えてみれば、戦車や飛行機の資料本ではなく、小説を英語で読み通したのは始めてかも。しかし、いかに児童文学とはいえ私の拙い英語力では半ばナナメ読み。専門用語ばかりが並んでいる戦車や飛行機の資料本は、逆にそれだけ繋げればなんとなく意味がわかってしまうので楽なんだなあと改めて思ったりする。
先日も触れたように、「ウォーターシップ・ダウンのうさぎたち」(邦訳は評論社)の日本未訳の外伝で、19編詰め合わせの短編集。第一部・第二部はほとんどエルアライラーの説話で、それはそれとして面白いのだが、やはりファンとしては、御馴染みの面々が活躍してくれる第三部がいい。
検索か何かで引っかかってここに流れてきた「ウォーターシップ・ダウン」ファンの中で、「そんなものが出ているなら読んでみようかな」と思う方もおられるかもしれないので、一応、簡単に内容を紹介しておくと、
●第一部
1.「嗅覚」 The Sence of Smell
いかにしてうさぎが嗅覚を手に入れたか。ダンディライアンが語るエルアライラーの冒険譚。
2.「三頭の牝牛の物語」 The Story of the Three Cow
エルアライラーは歳を取るのかどうか、ビグウィグとファイバーが神学論争(笑)。それにまつわる物語をダンディライアンが語る。
3.「ファー・ロシャス王の物語」 The Story of King Fur-Rocious
ある雨の日、話をせがまれたダンディライアンは「たまには他の誰かに」とブルーベルを指名。ブルーベルは、かつてエルアライラーが一度だけ戦争に赴いた話をする。
4.「水の中のきつね」 The Fox in the Water
エルアライラーの村がかつてきつねに悩まされた時、エルアライラーがそれをいかに切り抜けたか。確かウォーターシップ・ダウン本編に一節だけ出てきたような。
5.「空のあな」 The Hole in the Sky
エルアライラーが訪れた村で、一匹の老うさぎから謎の言葉を聞き、その正体を確かめようとする。
6.「うさぎの幽霊話」 The Rabbit's Ghost Story
ウォーターシップダウンの若うさぎの一匹が幽霊を見たと言っておびえる。皆は口々に幽霊などいないと言うが、そんななか、ナトリー・コプス出身のエフラファうさぎ、コルツフットが、かつて自分が遭遇した幽霊うさぎの話をする。
7.「スピードウェルの話」 Speedwell's Story
ダンディライアンの提案で、「ブルーベルくらいたくさん冗談を言うのに、これまで物語はしたことがない」スピードウェルにお鉢が回ってくる。スピードウェルは自分の突拍子もない冒険譚を語る。
●第二部
8.「おかしな野原の話」 The Story of the Comical Field
インレの黒うさぎのところから群れに戻ろうと放浪するエルアライラーとラブスカトルが遭遇した一匹のはぐれうさぎと、奇妙な野原の話。
9.「大沼地の物語」 The Story of Great Marsh
放浪を続けるエルアライラーとラブスカトルが身を寄せた村を災厄が襲う。エルアライラーは沼地越えの逃避行を決意。
10.「恐ろしい収穫の話」 The Story of the Terrible Hay-Making
エルアライラーたちが大沼地を越えて逃げた先は、あまりにも人間の農場に近かった。
11.「エルアライラーとレンドリ」 El-ahrairah and the Lendri
家路を辿るエルアライラーとラブスカトルを鬱蒼とした森が遮る。森を越えるために仕方なく、エルアライラーたちはあなぐまの手下になる。
●第三部
12.「秘密の河」 The Secret River
ファイバーの連れ合い、ビルスリルが、エフラファ時代に遭遇した不思議な「思念の流れ」について語る。
13.「新しい村」 The New Warren
キハールの助けを借りて、ヘイズルたちはエフラファとの間に作る新しい村の候補地を探し当てる。キハールのなまりってこんなんだったのか、というのが判る(笑)。“Den you go out dere”とか。
14.「フライアス」 Flyairth
厳しい寒さのため、ヘイズルたちは「ハチの巣」から冬ごもり用の巣穴に移動するが、そこにはめすの長うさぎに率いられた先客たちがいた。それにしても「Flyairth」という名前をどう読めばいいのかが私にはよく判らない。フライエアス? フライヤス? フレイヤース?
15.「フライアスの出発」 Flyairth's Departure
人のもたらす「目の見えなくなる白い煙」におびえるフライアスには、ウォーターシップ・ダウンは人の住処に近過ぎると思えてならない。
16.「ハイゼンスレイ、動く」 Hyzenthlay in Action
エフラファからウォーターシップ・ダウンへ移住を希望する一群の到着が遅れるが、ヘイズルはたまたま留守。ヘイズルの連れ合い、ハイゼンスレイが「もう一人の長」として行動に出る。オタオタするビグウィグがおかしい。
17.「サンドワート」 Sandwort
ウォーターシップ・ダウンの傍若無人な若いおす、サンドワートの顛末記。
18.「ストーンクロップ」 Stonecrop
ある日ウォーターシップ・ダウンに、人の臭いが染み付いた元飼いうさぎがやってくる。群れの皆は排除しようとするが、ヘイズルは押しとどめる。
19.「キャンピオン」 Campion
新しい村の長グランスルからヘイズルに、深刻な相談が持ち込まれる。ウーンドウォート(ウンドワート)将軍亡き後のエフラファの長、キャンピオン隊長のその後。
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コメント
読了、おめでとうございます。
それから、レビューありがとうございます。
短編集なんですね。後日談的な物とはちょっと違った、こぼれ話集という感じでしょうか。
すっかりキャラクターなどは忘れかけておりますが、ビグウィグ、キハール(結構好きだった)など、懐かしいなあ。
翻訳版は出ませんかね。
投稿: マクタロウ | 2009年8月24日 (月) 22時06分
第三章の、お馴染みの面々が主役のものは完全に本編の後日談ですし、前半のエルアライラーの説話も、それが語られるのは、エフラファ戦後のウォーターシップダウンにて、という枠物語がくっついているものがほとんどです(特にそんな枠無しでいきなり話が始まっているものもありますが)。
確かに日本語で気軽に読めればそれに越したことはないんですが、英語でつっかえつっかえでも、結構面白かったですよ!
投稿: かば◎ | 2009年8月24日 (月) 22時42分
検索で辿り着きましたw
TALES FROM WATERSHIP DOWNは10年程前に購入(表紙絵は別版、ニンジンの葉を食むウサギ一羽ttp://twitpic.com/20qriw)、昨年からぽつぽつ読み出して現在18章まで来てます。
>“Den you go out dere”
これはとても懐かしく脳内に響きましたが、なぜか「犬は勘定に入れません」(コニー・ウィリス/大森望訳/早川書房)23章中の『けーつけねせい、グルーウェンズ!このけーだんゆるんです』 のくだりとダブりました。
原文は“Lokepponthatt, Gluwens! The steppe bay loossed.”(TO SAY NOTHING OF THE DOG/CONNIE WILLIS)
投稿: going solo. | 2010年7月 9日 (金) 01時16分
ようこそいらっしゃいませ。18章だと、もう終わりは近いですね。
「ウォーターシップダウン」は中学~高校の頃に旧訳版を読んで大ハマリした本なのですが、外伝があるのを知ったのは比較的最近のことです。それ以後、たまに洋書屋を覗いてみたのですが見付からず、結局、この日記の少し前に、amazonで古本をアメリカから買いました。アメリカの片田舎の図書館のスタンプ付きです(笑)。
それにしても、それなりに人気のある(あった)本だと思っていたのですが、外伝が未訳のままというのは惜しい気がします。まあ、そんなことでもなければ、英語で本を読もうという気にはなかなかならないのも確かなのですが。
「けーつけねせい、グルーウェンズ!このけーだんゆるんです」は、添えていただいた元の文も見て、ようやく意味が判りました(笑)。「気を付けなせぇ、この階段ゆるんでます」なんですね。
投稿: かば◎ | 2010年7月 9日 (金) 01時48分
おっと!
「犬は勘定に入れません」って、「ドゥームズデイ・ブック」の姉妹編なんですね。「ドゥームズデイ・ブック」は昔読んで、面白かった覚えがあります。これもぜひ読まねば。
投稿: かば◎ | 2010年7月 9日 (金) 15時59分
>外伝が未訳のままというのは惜しい気がします。
これに気付いたのはつい最近。読書意欲の減退で、イライラせずに済んだのかも。
>アメリカの片田舎の図書館のスタンプ付きです(笑)。
それは羨ましいw
「ドゥームズデイ・ブック」アグナスやロズムンド、せつないですね。単行本発売当時に即買い以来、折々読み返してましたが、しばらくご無沙汰中。重くて、寝読みは厳しいからww
投稿: going solo. | 2010年7月10日 (土) 01時46分