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世界の傑作機「ポリカルポフI-16」

その昔、何か用事があって「航空ファン」編集部にお邪魔した折、「世傑でI-16とか取り上げることはないんでしょうかねぇ」と、それとなく(しかし物欲しそうに)訊ねたところ、「いやあ、人気ないですから」と一笑に付された記憶があるが、時代は変わったと言うべきか(単にネタが切れただけか)、満を持して(?)ついに登場。

題名は「I-16」だが、内容はI-15系もカバーし、ポリカルポフの伝記も取り上げていて、要するに「ポリカルポフ・ファイターズ」全般を扱う本となっている。そもそもI-16について(I-15も)日本語でしっかり読める資料本はこれまでほとんどなく、その点ですでに貴重だが、開発史、技術的解剖も充実していてそこそこ読み応えもある。

特にI-16の設計思想について回顧した鳥養鶴雄氏の稿が楽しい。鳥養氏は元富士重工で、YS-11の開発にも携わったベテランのエンジニアであるらしい。I-16は何といっても、そのズングリした格好が特徴だが、それを始めとするスタイルの理由の推察、メリット・デメリットなど、技術そのものには疎い私にはなかなか楽しめる内容。10型以降が装備したフラップについて、「『分割するくらいなら胴体下は省略しておけ』とポリカルポフに教えてやりたいが、遅すぎた」はニヤリとする。確かに取ってつけたようなフラップだが(実際に無理矢理後付けしているわけだが)、それが技術的にどうなのかは、やはりこういう人の視点を借りないと判らない。

ただし、他の記事も含めて、それは著者のせいというより、どうも編集・校正が行き届いていないせいではないかと思うのだが、文章がうまくつながっていなかったり、読みにくかったりする部分が結構ある。キャプションも、明らかにタイプ10以降のものをタイプ5としている箇所も。

モデラーとしては(特に、以前、ポリカルポフI-16のサブタイプについてのディテール変遷メモを作ったことがある私としては)、このへんで、細部ディテールの別についてきっちりまとめて欲しいなと思っていたのだが、サラリと流していて、残念。これについては、かつて航空ファンのモデリング・マニュアルだかで取り上げていた時のほうが詳しかったように思う。

ほか、いくつか面白かった部分、気になった部分をメモ。

  • 「タイプ6」は従来、初期量産型でも割と主要な型として取り上げられてきたが、実は公式文書にこのタイプの存在を裏付けるものはなく、仮にタイプ6が実在していたとしても少数で、これまでタイプ6と分類されてきたものは、単にタイプ5の後期生産型に過ぎないのでは、との説を掲載している。確かに外形上、タイプ5と6を分けるのは風防だけで(エンジンが小改良型になったとイン・アクションにはあるが)、差異は少なく、説得力はある。
  • 主翼に小リブが増え、また前方金属外皮部が広くなったのをタイプ10以降としている。これは以前から気になっていたことで、できれば写真による対比等載せておいてほしかった。
  • MiG設計局について、「i」は「&」の意味と説明している。私は「ミコヤン」の最初の2文字だと思ってきたのだが、確かに、wikipediaあたりで見ても、設計局旧称は「ОКБ и.м. А.И.Микояна и М.И.Гуревича(アー・イー・ミコヤンおよびエム・イー・グレヴィッチ設計局」であって、間に「i」がある。機種名に使う略号は頭2文字が基本といっても、実際、グレヴィッチのほうは1文字しか使っていないわけだし。しかしそうなると、LaGはなぜ「LiG」にならないんだろう?
  • エスベーを「SB-2」と呼ぶのは誤りで、正しくはSBだけであるそうだ。本来は、「SB-2M-100」(M-100エンジン2基付きSB)と、「2」はエンジン数を示すもので機種の続き番号ではないらしい。しかしそうなると、TB-3やDB-3のように続き番号を付けているものとの整合性は?というのが気になる。エスベーはエスベー1機種しかなかったからだ、という説明は成り立ちそうだが、とはいえ、その機種の最初のもので「-1」を付けている例もあるようだし。

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